杜若咲く八橋のさと 宗砌
墨にほふふところ紙や秋の風 香
くさの名に似る女童の名も 風
うす紅の細長に濃き袿(うちき)着て 梯
帆上げ出づればかすむ島影 歳
のどらかに途切れとぎれの水主の唄 花
引きゆく鶴の餞とせむ 月
花あかり奥へ奥へとしたふ道 舎
筑波はるかに仰ぎ見る春 衣
<進行表はこちら>
<4折裏1付け> 墨にほふふところ紙や秋の風秋 秋風は吹物(秋風、秋の風各1の2句物) 「水雲重しふところの吟」(芭蕉)とならぶ名調子 しまひたる櫛笥にやをら虫の声秋 虫は秋、1句物。2句前にいなおほせ鳥がいるので虫はまずいです。鳥・虫は3句を隔てる。変更があれば急ぎ、どうぞ。 いつの間になつかし草の遠ざけり雑 なつかし草とはどんな草? なよよかな袖のわかれにあかね雲(鰯雲?)雑 袖の別れはきぬぎぬと同じようなものなので、恋の句 衣類 あかねさすは朝の光、時分(朝) 雲は聳物 きぬぎぬは後朝と書いても、夜分ですが、袖の別れについては、資料がないので不明。3句前に月(夜分)があるので、詮索しないでおきましょう。 by 連歌楽歳 (2016-08-13 21:16)
国引きの丘と美濃先ほど如月さまから「美濃の国(国郡)の二句おいた前に国引の丘がありまして、これもたしか国郡に分類されていたと思います。国郡は二句去りでよろしかったでしょうか?」とお問い合わせをいただきました。面白いトピックなので、ブログで説明いたします。国郡という句材の分類は、一条兼良『連珠合壁集』にあり、「都・国・ひな・もろこし・あづま・つくし」などが該当します。つくし(筑紫)は昔の国名で、あづまは固有の国名を超えた国々の広がり、ひなと都は中心と周縁です。美濃は具体的な国名で、国引きの丘は(古代出雲を意味しますが)具体的な国名ではありません。『連歌新式』は「国名と国名は3句隔つべし」「国名と名所は打越を嫌う」、さらに「あづまに越路は打越を嫌う」としています。「美濃と出雲」であれば、国名同士になります。「国引きの丘」は、単なる山類ではなく、出雲の国造りの神話の地なので、国郡に分類しました。『連歌新式』の考え方にしたがえば、国郡と国郡、国名と国郡は打越を嫌う、あたりが妥当ではないかと考えます。 by 連歌楽歳 (2016-08-13 23:47)
楽歳さま虫の句、すみません! 鳴き声の代わりに何か音をと思ったのですが(笑)、しまひたる櫛笥に風の(落ち葉?)こそめきて何がかさこそするのか、わからなくなってきました(笑)。無理でしたらとりさげます。なつかし草は「撫子」で、道端に咲いている筈の撫子に気付かず通り過ぎてしまった図から、傷心の癒えた様子を考えたのですが、これも無理があるかもしれませんね。お手数おかけします… by 遊香 (2016-08-14 00:06)
宗匠さま詳しいご教示ありがとうございました。一口に国郡といいましても、この分類のなかに下位分類がいくつもあって、その組み合わせによって去り嫌いが異なっているという、なかなか難しい内容でした。大雑把な言い方をおゆるしいただけますなら、国名と国名は三句去り、その他の組み合わせは二句去り、ということになりますでしょうか。今回の国名と准地名(?)の組み合わせも、二句去りで問題なしということですね。ありがとうございます。皆さま夜になると涼風がたって、過ごしやすいのが嬉しいです。とはいえ、日中の暑さはまだまだ続くことでしょう。どうかご自愛専一にお過ごしくださいませ。 by 如月 (2016-08-14 00:52)
遊香さま(1) いつの間になつかし草の遠ざけり私の書斎の日本語辞典には「なつかし草」は収録されていませんでした。ローカル名でしょうか? 馴染みの薄いなつかし草に代えて「わすれ草」などいかがでしょう? いつのまに遠ざかりけりわすれ草雑 草類 わすれ草は萱草のことで、身につけていると苦しい恋を忘れることができるそうです。恋わすれ草。「わすれ草の花」は夏。花なくば雑(『無言抄』)ということらしいです。(2) しまひたる櫛笥に風のこそめきて 雑 風は吹物 by 連歌楽歳 (2016-08-14 00:59)
楽歳さまお手直し、ありがとうございました。わすれ草! なるほど、ぴったりですね。よろしくお願いいたします by 遊香 (2016-08-14 06:09)
墨にほふふところ紙や秋の風 遊香 付 のりのひかりの消ゆる間を詠む 梢風 くさの名に似る女童の名も 〃 さかしらを言ふつまのつぶら目 〃○暑さとオリンピックと宿題と。三重苦(?)を楽しんでおります。楽歳様たしかめをさせて下さい。進行表のところで092「忘れ扇を美濃の国まで」の整理に「本説・斑女」としてあり、付句は班女の内容ですが、連歌の中で謡曲は本歌になりうるのか、この辺りどうでしょうか。謡曲は源氏物語とは違ってどうしても俳言という感じがしてしまうのですが。 梢風 by 梢風 (2016-08-17 09:57)
墨にほふふところ紙や秋の風 遊香 付 のりのひかりの消ゆる間を詠む 梢風 くさの名に似る女童の名も 〃 さかしらを言ふつまのつぶら目 〃楽歳様、ひとつ確かめをさせて下さい。進行表092「忘れ扇を美濃の国まで」とあるのに「本説・班女」とあるのは謡曲「班女」の内容を受け止めてのことですが、謡曲も本説になるのかどうか、このあたり心許ない感じありますのでお考え聞かせて下さい。「源氏物語」の本説はすんなり分かりますが、謡曲はどう見ても俳言で、連歌の典拠になるのか、どうでしょうか。蕉風 by 梢風 (2016-08-17 10:08)
のりのひかりの消ゆる間を詠む 梢風雑 「のりのひかり」は仏法がもたらす光明のことで、釈教。「消ゆる間を詠む」というのは凡人には理解が及びがたい世界。 くさの名に似る女童の名も 雑 「くさ」は草で草類 女は(千句に)一句物ですが女童(めわらわ)は別、人倫 さかしらを言ふつまのつぶら目雑 「つま」は妻・夫で人倫 「つぶら目」の目は人体 *謡曲はどう見ても俳言で、連歌の典拠になるのか? というお問い合わせを、梢風さまから頂きました。以前読書会でとりあげた二条良基『連理秘抄』に「本説 大略本歌におなじ。三句に及ぶべからず。詩の心・物語、又俗にいひつけたる事も寄合にはなる也」とありました。岩波の古典文学大系では、本説について頭注で「句をつくる時によりどころとした和歌以外の詩・物語・故事・諺などの本文をいう」と説明がありました。本歌については「新古今以来の作者、本歌に堪えず」と限定がありましたが、本説については時代の限定がされていませんでした。中国の古典・班女を謡曲に仕立てた世阿弥(14-15世紀)は心敬・宗祇より数十年早く生まれた人ですが、大雑把にいえば彼らほぼ同時代人です。室町中期の連歌師はもっぱら和歌を参照し、物語などから歌をつくることはまれだったようです。さらに彼らにとって世阿弥の能楽は同時代の娯楽でしたから、能楽を本説にした室町期の連歌はまだ見たことがありません。能楽が古典になった時代の芭蕉たちは時々、謡曲を句の材料に使いました。21世紀の人間にとっては、蕉門の歌仙さえ古典になっています。そういうわけで、21世紀に連歌の真似事をするにあたっては、本歌・本説の範囲を緩やかにしても、ばちは当たらないと思いますが、いかがでしょうか。 by 連歌楽歳 (2016-08-17 21:21)
楽歳様、“本説としての謡曲”について丁寧にお応え頂き有難うございます。芭蕉たち、といっても阿蘭陀俳諧の人たちが盛んに謡曲ネタを活用しているのは謡曲詞章の俳言性に感応しているからと思いますが、けれども現代では謡曲も安定した古典に入っているので本歌本説の典拠として連歌に用いても構わないとのご判断、安心しました。梢風 by 梢風 (2016-08-18 08:01)
本日、夢梯さまから、次の治定と付けをいただきました。 *●4折裏2治定 くさの名に似る女童の名も 梢風●4折裏3付け 縁先に猫の鈴追ふうなゐ髪 夢梯 なヽ彩の糸もてかゞる毬抱きて 鈴の音のたどたどしくも雅びなる うす紅の細長に濃き袿着て by 連歌楽歳 (2016-08-21 21:51)
縁先に猫の鈴追ふうなゐ髪 夢梯雑 縁先は居所体ですが、「えん」は字音で、通常連歌がきらう音です。と言って、絶対に許容できないというほどの音でもないような気がします。「ふち」とよめばおそらくOKでしょうが、そうすると「ふちさきのネコ」? 猫は獣類 うない髪は「うない」(髫髪)と同じで人体、あるいはこのヘアスタイルのこどものことで人倫。 なヽ彩の糸もてかゞる毬抱きて雑 なないろは七彩で、七は数字、臨終の人と仏を結ぶ五色の糸よりさらに2色多い 毬は「まり/たま」 鈴の音のたどたどしくも雅びなる雑 うす紅の細長に濃き袿(うちぎ)着て雑 袿(うちぎ・うちかけ)は衣類 2句前の4裏1に「ふところ紙」があるが、ふところ紙はその前句の「美濃」を受けた美濃紙の懐紙であることに疑問の余地はなく、袿と衣類の打越にはなりません。 by 連歌楽歳 (2016-08-21 22:17)
<4折裏3治定> (くさの名に似る女童の名も 梢風) うす紅の細長に濃き袿(うちぎ)着て 夢梯* 袿は上層女性の衣裳。室町時代には武家の女性も着用した。下って花魁が着用、現代では結婚式の衣裳・打掛。詳しくは百科事典や服飾史事典をお開き下さい。ちなみに『連歌新式』は、衣裳と衣裳は5句を隔てよと指示していますが、ただ、衣裳の定義が込み入っていて難渋します。下紐・ひれ(領巾? 平礼烏帽子?)は衣裳で、帯・冠・沓・衣衣は衣裳に非ず、と説明しています。ただし、これらの非衣裳も衣裳とは打越を嫌うとのことです。<4折裏4付け>打越句の女児が打掛を着るまでに成長しましたので、ここらで視線を春先の遠景へ移して、しばしの気分転換をはかりたいと思います。帆は春風をうけてふくらむ 楽歳代掻き馬の遠霞む朝峠の民が畑焼くころ *帆は春風をうけてふくらむ春 春風は2句物(春の風1、春風1) 帆は船(水辺体用外)の一部ですが、同じように水辺になるかどうかは不明。代掻き馬の遠霞む朝 楽歳春 霞(聳物) 代掻き馬は雪形であれは残雪(降物)、実際の風景であれば獣類の馬 朝は時分峠の民が畑焼くころ春 畑焼く 畑は地儀 峠は山類 *春の句を出しました。①挙句まで春の句を5句続けて適当なところで花の句を詠む②第6句まで春3句を続けて花の句を出し、第7・8句を雑でまとめる、この2つのコースがおすすめです。ご参考までに。 by 連歌楽歳 (2016-08-22 13:02)
先ほど夢梯さまから 縁先に猫の鈴追ふうなゐ髪 夢梯を 縁先に雀の子追ふうなゐ髪 夢梯に変更しますと連絡をいただきました。雀の子は俳諧では春ですが、連歌での季は不明。源氏物語に似たようなシーンがある。たしか3月ごろのこと。 by 連歌楽歳 (2016-08-22 18:55)
楽歳様 真夏日が続いていますが、それでも、夕方になると秋の気配も感じられ、ほっと一息ついております。付句が遅くなって申し訳ございません。 帆は春風をうけてふくらむをいただきます。4折裏5付ですいつもながらの拙い句ですが、どうぞいご指導をよろしくお願いいたします。 岸辺よりつがい離れし蝶のきて のどらかに途切れとぎれの水主(水夫でしょうか)の唄 枝越しに海女の焚くらし烟見え 野遊びか鄙の戯れ唄聞こえきてまたまた台風が関東上陸とか。皆さまには被害の及びませぬよう、心から願っております。 by 路花 (2016-08-26 17:55)
岸辺よりつがい離れし蝶のきて春 蝶は虫類 岸辺は水辺体 のどらかに途切れとぎれの水主(水夫でしょうか)の唄春 のどか・のどらか・のどやかは長閑 かこ(水手・水主・楫子)は多分水辺用・人倫 枝越しに海女の焚くらし烟見え春 海女俳諧季語で春(ホトトギス俳句季題便覧は夏に指定) 人倫 枝越しは木類 この程度の煙はむずかしいところですが、聳物にいれておきます。海女についてはそういうわけなので、「枝越しに」の部分を、ありきたりの季の詞と入れ替えて、春の季を確定しましょう。たとえば、 陽はうらら海女の焚くらし烟見え 陽は光物 水ぬるみ海女の焚くらし…… 水辺用永き日に海女の焚く…… 路花さんのお好きな季語をどうぞ。 野遊びか鄙の戯れ唄聞こえきて春 野遊び 野は地儀 野遊びは和歌・俳諧で春、連歌では春に非ず(連歌新式・産衣)鄙は国郡 参考までに残しておきます。治定される方のお好みに合えば、俳諧季語の準用ということでOK。 by 連歌楽歳 (2016-08-26 21:57)
●追加修正4折裏の改訂中に気づきました。打越句が うす紅の細長に濃き袿着て と「て」で止まっていますので、 岸辺よりつがい離れし蝶のきて(蝶のくる) 野遊びか鄙の戯れ唄聞こえきて(聞こえくる)としておきます。良い案があればどうぞ。 by 連歌楽歳 (2016-08-26 22:21)
楽歳様ご指摘ありがとうございました。 1番目目の「岸辺より」 下の句は「蝶のくる」に 3番目の「枝越しに」は 「水ぬるみ」に 4番目の「野遊びか」の下の句は「聞こえくる」に直させていただきます。 岸辺よりつがい離れし蝶のくる のどらかに途切れとぎれの水主(水夫でしょうか)の唄 水ぬるみ海女の焚くらし烟見え 野遊びか鄙の戯れ唄聞こえくるとなります。どうぞよろしくお願いいたします。 by 路花 (2016-08-27 15:15)
路花さま直し、承りました。それにしても今年の夏は天候不順が続きますね。 by 連歌楽歳 (2016-08-27 17:01)
いまごろになって申し訳ないのですが、夏バテのせいということでお許しください。3句前の4裏2に「女童」があり、4裏5で「海女」は辛いとところです。単独の「女」は一座一句物ですが、「女童」「海女」は女のついた熟語ですから、扱いは異なると想像しますが(女が出たら「女形」も使えなくなるのは不便なので)、詳しいことは『連歌新式』に出ていません。同字5句去りの決まりがありますので、少なくとも5句を隔てるか、「○女」「女○」といった熟語は1句物「女」の親戚すじの言葉なので、面あるいは折を避けた方が安全な気がします。「海女」を「海人」あるいは「蜑」と変えましょう。字体が面白いので「蜑」の方にしましょう。 by 連歌楽歳 (2016-08-27 19:16)
ついでに、拙句「春風」が第1「秋の風」と同字5句去りのおきてにさわりますので、「はるかぜ」とかな書きにいたします。 by 連歌楽歳 (2016-08-27 20:31)
再々訂正 先に「はるかぜ」とかな書きに替えた「春風」は、漢字・かなに関わらずそもそもが吹物(風類)ですから5句去り。4折裏1の「秋の風」と近すぎてXでした。そこで、 帆は春風をうけてふくらむをボツにし、新たに、 帆上げ出づればかすむ島影 楽歳(かすみは春、聳物 島は水辺体・山類体) と変えます。お騒がせしました。 by 連歌楽歳 (2016-08-28 11:31)
お知らせ楽歳は今週いっぱい不在です。おまたせして申し訳ありません。 by 連歌楽歳 (2016-08-29 11:07)
宗匠さま、皆さま二週続きの台風来襲。しかも関東以北を狙って来るとは、日本列島が南方化しているようで、不気味に思えます。被害がありませんよう、お祈りいたします。付句をお待たせいたしましたために、宗匠さまはみやこを留守にされたご様子。ご出発に間に合いませんでしたこと、お詫び申し上げます。路花さまののどらかに途切れとぎれの水主の唄を頂戴させていただきます。拙次は相変わらずの無調法で恐れ入るばかりでございます。 引きゆく鶴の餞とせむ 雁の供養のけぶり立つらし ※1 および指しつつ青き踏む比丘 ※2 真玉(またま)の耳環初虹に映ゆ ※3 遊び詞に異邦(とつくに)の香の ※4※1 供養は使えませんでしょうか?雁悼む湯の……とかの言い替えはできますか? ※2 比丘は使えませんでしょうか?また、女童、水主につづいて、さらに人倫というのは障りますか?※3 外つ国人の水主とみて。※4 あるいは、囃子詞に……?わからないことばかりで、恐縮に存じます。お直し、作り直し指示など、ご指導よろしくお願い申し上げます。 by 如月 (2016-08-30 13:19)
宗匠さま、皆さま先程お送りしました付句のうち、季語のないものがありました。失礼いたしました。 遊び詞に異邦の香のに代えまして 遊び詞に戯(さ)れる初蝶とさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。 by 如月 (2016-08-30 13:32)
引きゆく鶴の餞とせむ 如月雁の供養のけぶり立つらしおよび指しつつ青き踏む比丘真玉(またま)の耳環初虹に映ゆ遊び詞に戯(さ)れる初蝶 *引きゆく鶴の餞とせむ 如月春 鶴は2句物(つる1、たづ1)鳥類 「雁帰る」は連歌の時代から春の季語になっていました(『産衣』)ので、「引きゆく鶴」もこれにならって春と主張することができます。俳諧の時代に入ったのちはれっきとした春の季語になりました。雁の供養のけぶり立つらし春 雁供養は俳諧の春の季語 雁は2句物(春1、秋1 秋の雁は2表1に既出。これで春秋使い切り) けぶりは聳物 供養はサンスクリット起源の仏語。連歌ではふつう漢音と同じように敬遠したが、同じサンスクリット起源の仏語・僧が連歌での使用を許容されてきたので、それをもとに供養も許容できると主張することはできます。「雁供養」については『季語研会報』の「季語の周辺41 鳥のファンタジー」でふれました。18世紀になってから使われ始めた言葉だそうです。機会があればご覧ください。および指しつつ青き踏む比丘春 「踏青」は『連歌新式』の和漢篇に春の季語として載っています。その和風化。比丘はサンスクリット起源の仏語。これも「僧」を引合いに出して連歌でも許容できると主張することが可能。「および」は人体。「秋の野に咲きたる花をおよび折りかき数ふれば七草の花」(万葉集)。人倫と人倫は打越を嫌うが付け句の場合ははばからず、と『連歌新式』真玉(またま)の耳環初虹に映ゆ春 初虹は俳諧・春の季語 「虹」は一句物・聳物にあらず」と『産衣』 百科事典によると、耳飾りは古墳時代には用いられたが、奈良時代以降幕末の日本開国まで廃れていました。耳環は19世紀の造語。遊び詞に戯(さ)れる初蝶春 蝶は春の季語、蝶・胡蝶は漢音だが、連歌ではこれを許容していました。虫類遊び詞に戯(さ)れる初蝶囃子ことば(詞)に戯れる初蝶囃子詞の方が歌舞音曲をより強く連想させて春の楽しい感じがしませんか? ついでに「ことば」とかなで柔らかく。 by 連歌楽歳 (2016-09-04 14:56)
ワンテンポ遅れて気づきました。 雁の供養のけぶり立つらし打越の「かすむ島影」と聳物のバッティングになりますが、雁の供養が治定されたら、かすむ島影を春の島影などと変更する予定です。 by 連歌楽歳 (2016-09-04 15:45)
宗匠さまお帰りなさいませ。東北被災地への訪問 お疲れ様でした。(私も知人がいるため、個人的に南三陸町を応援しています。震災後の5月に物資を届けに行った際に見た、 見渡す限り堆く積まれた瓦礫の山々の光景が、今も脳裡に浮かびます。今年は時間をみつけて、今の姿を目に焼き付けに行きたいと思っています。)ご教示ありがとうございました。サンスクリット語起原の仏語、僧・供養・比丘などは漢音であっても連歌で使用できるということは、嬉しいことです。言い換えが利かないから、という理由だったからなのでしょうか。また、「遊び詞」より「囃子ことば」のほうが楽しげというご意見、承りました。そのように直させていただきます。ところで仏語といいますと、フランス語という意味でも使われます。その場合には勿論「フツゴ」と言いますが、昔、初めて教室に来た大学一年生が「ここはブツゴのクラスでしょうか」と言ったのには、ビックリポン!(ビックリポンも賞味期限切れの感がありますね)。つい噴き出してしまったこと、思い出します。蘭舎さま、お直し、お捌き、よろしくお願い申し上げます。 by 如月 (2016-09-05 19:39)
9月10日、場合によっては11日まで留守になります。またお待たせすることになり申し訳ないです。特に蘭舎さま、羽衣さま。 by 連歌楽歳 (2016-09-06 21:05)
お待たせいたしました。旅から帰ってまいりました。 by 連歌楽歳 (2016-09-11 21:44)
楽歳さま、お帰りなさいませ。台風のあと、急に秋らしくなってまいりました。いよいよ名残の折、花までまいりましたね。まさか詠ませていただくことになろうとは恐れ入りますが、あまりお待たせしては興のないこと・・・連歌らしく詠むのはとても難しいのですが、付けさせて頂きます。引きゆく鶴の餞とせむしみじみと如月さまのこの御句をかみしめながら花あかり奥へ奥へとしたふ道 蘭舎盃の小貝は花の幻か 花の奥なほせんだつのあらまほし花降ればいづれふたみとなる小貝さびしくもおぼろの花を袖にみてくるしい句となってしまいましたが、楽歳宗匠、羽衣さまなにとぞよしなにご一直、お救いくださいませ。 by 蘭舎 (2016-09-12 05:47)
花あかり奥へ奥へとしたふ道 蘭舎春 花 木類 「花の散り、月のかたぶくをしたふ習ひ」(徒然草)同様、この「したふ」は人以外のものを愛惜することで、恋の句ではありません。 盃の小貝は花の幻か春 花 木類 貝類 飲食 うつほ物語に「色々の小貝ども敷けるごとあり」 「小貝」は水辺で打越の水主と障るような感じがしますが、『連歌新式』は貝を「虫類」に入れており、貝と水辺を結びつけるような記述がありません。 花の奥なほせんだつのあらまほし春 花 木類 人倫 「明ぼのの花のおくより鐘なりて」(兼載) 花降ればいづれふたみとなる小貝春 花 木類 貝類 数字(ふた=2) 「花散る」に比べて「花降る」は馴染みの薄いコロケーションですが、「空にさへ花降るけふの法の声」という例が連歌データベースにありました。 さびしくもおぼろの花を袖にみて春 花 衣類 「おぼろ」と組み合わせるのは連歌の場合もっぱら「月」で、「おぼろ」と花の組み合わせは俳諧の時代の発見のようです。第4句の「かすむ」とおぼろ(朧)は打越を嫌いますが、それ以上の規定は在りませんので、セーフです。 by 連歌楽歳 (2016-09-12 13:03)
宗匠さま 皆さま少々パソコンに遠いところに居り 失礼致しました。遅くなりましたが いよいよ千句第六の挙句至りませんが何卒よろしくお願い申し上げます。花明り奥へ奥へとしたふ道 蘭舎さま(花の奥なほせんだつのあらまほし と迷いましたが水主とどうかと?) 付け 筑波嶺はるか仰ぎ見る春(仰ぐ永日 仰ぐ永き日) 翁おうなの青き踏む野辺(毛吹草連歌の詞にありましたが中国?) 連歌盗人春のほろ酔ひ 君が此の代の弥生まばゆし(やすけく) 虎屋最中の弥栄の春 筑波いざなふ春のせんだつなにとぞ宜しくお導き頂きますようお願い申し上げます。 by 羽衣 (2016-09-16 13:07)
筑波嶺はるか仰ぎ見る春(仰ぐ永日 仰ぐ永き日)春 筑波嶺は名所・山類 「仰ぎ見る」の「見る」が捨てがたく、ここは「春」で。あいにくと、4句前に島(水辺体・山類体)があります。山類は5句去り。 翁おうなの青き踏む野辺(毛吹草連歌の詞にありましたが中国?) 春 踏青は『連歌新式』の漢和編に春とあり。人倫 地儀 連歌盗人春のほろ酔ひ春 盗人は人倫 「つらねうたぬすと」で字余り。 君が此の代の弥生まばゆし(やすけく)春 弥生 君は人倫 「やすけく」とするといま話題の生前退位を連想させ、やすらかな挙句にはなりにくいかも。 虎屋最中の弥栄の春春 思わずうなる出来栄えですが、ちょっとコマーシャルの匂いが。むかしニューデリーでお世話になった人に、銀座の虎屋から羊羹を送ったことがありました。大丈夫だろうか、と尋ねたところ、インドだろうがアフリカだろうが、輸送中に悪くなることは絶対にありません。虎屋の羊羹は60パーセントが砂糖で、砂糖には防腐効果があり、開封しなければ1年は大丈夫、ということでした――いやさか。最中の場合も同じでしょうね。 筑波いざなふ春のせんだつ春 筑波は名所・地名 人倫 *「挙句の句柄は穏やかにして正しく上品なるものを用ゐるを例とせり」(山田孝雄『連歌概説』)にしたがって、挙句には、 筑波嶺はるか仰ぎ見る春から「嶺」をとって、 筑波はるかに仰ぎ見る春 (筑波は大化改新前は国だったので、国郡に分類。「新治菟玖波を過ぎて幾夜か寝つる――かゝなべて夜には九夜日には十日よ」の、菟玖波の道こと連歌発祥伝説の地。挙句まで、1年有余、はるかな道のりでした)を頂いて、電脳千句第6賦御何百韻一巻の終わりといたしたいと思いますが、羽衣さま、いかがでしょうか? by 連歌楽歳 (2016-09-16 19:28)
宗匠さま大変結構に存じます。筑波を 菟玖波 と致しますと如何でしょうか? 菟玖波はるかに仰ぎみる春 つくば遥かに仰ぎ見る春 (地名は矢張り筑波でしょうか? とどのつまり およろしい様にお願い致します。)はるか(遥か) も語幹形でなくなり 結構に存じます。島 が 水辺体 山類体 とのこと 身を以て勉強させて頂きました。挙句ぶりのご教示も大変勿体なく有り難く存じました。因みに 虎屋の最中は 羊羹よりずっと賞味期限短く 二週間程だそうです。お早めにご賞味ください! とございます。畏れながら 当方初めての百韻全参加 宗匠さま、皆さまのお蔭にて めげず挫けず何とかパソコンもこの程度ですが使えるようになりました。一年余 とのお言葉 楽しくてつい今年の夏からのように思っておりましたが 宗匠さまには 大変貴重なお時間とご労力を賜りましたこと心より御礼申し上げます。誠にまことにお導き有り難うございました。あと四巻で十百韻とか! 頑張りましょう!宗匠さま 皆さま 今後ともよろしくお願い申し上げます。 by 羽衣 (2016-09-16 23:18)
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<4折裏1付け>
墨にほふふところ紙や秋の風
秋 秋風は吹物(秋風、秋の風各1の2句物) 「水雲重しふところの吟」(芭蕉)とならぶ名調子
しまひたる櫛笥にやをら虫の声
秋 虫は秋、1句物。2句前にいなおほせ鳥がいるので虫はまずいです。鳥・虫は3句を隔てる。変更があれば急ぎ、どうぞ。
いつの間になつかし草の遠ざけり
雑 なつかし草とはどんな草?
なよよかな袖のわかれにあかね雲(鰯雲?)
雑 袖の別れはきぬぎぬと同じようなものなので、恋の句 衣類 あかねさすは朝の光、時分(朝) 雲は聳物 きぬぎぬは後朝と書いても、夜分ですが、袖の別れについては、資料がないので不明。3句前に月(夜分)があるので、詮索しないでおきましょう。
by 連歌楽歳 (2016-08-13 21:16)
国引きの丘と美濃
先ほど如月さまから「美濃の国(国郡)の二句おいた前に国引の丘がありまして、これもたしか国郡に分類されていたと思います。国郡は二句去りでよろしかったでしょうか?」とお問い合わせをいただきました。面白いトピックなので、ブログで説明いたします。
国郡という句材の分類は、一条兼良『連珠合壁集』にあり、「都・国・ひな・もろこし・あづま・つくし」などが該当します。つくし(筑紫)は昔の国名で、あづまは固有の国名を超えた国々の広がり、ひなと都は中心と周縁です。美濃は具体的な国名で、国引きの丘は(古代出雲を意味しますが)具体的な国名ではありません。
『連歌新式』は「国名と国名は3句隔つべし」「国名と名所は打越を嫌う」、さらに「あづまに越路は打越を嫌う」としています。「美濃と出雲」であれば、国名同士になります。「国引きの丘」は、単なる山類ではなく、出雲の国造りの神話の地なので、国郡に分類しました。『連歌新式』の考え方にしたがえば、国郡と国郡、国名と国郡は打越を嫌う、あたりが妥当ではないかと考えます。
by 連歌楽歳 (2016-08-13 23:47)
楽歳さま
虫の句、すみません!
鳴き声の代わりに何か音をと思ったのですが(笑)、
しまひたる櫛笥に風の(落ち葉?)こそめきて
何がかさこそするのか、わからなくなってきました(笑)。
無理でしたらとりさげます。
なつかし草は「撫子」で、道端に咲いている筈の撫子に気付かず通り過ぎてしまった図から、傷心の癒えた様子を考えたのですが、これも無理があるかもしれませんね。
お手数おかけします…
by 遊香 (2016-08-14 00:06)
宗匠さま
詳しいご教示ありがとうございました。
一口に国郡といいましても、この分類のなかに下位分類がいくつもあって、その組み合わせによって去り嫌いが異なっているという、なかなか難しい内容でした。
大雑把な言い方をおゆるしいただけますなら、国名と国名は三句去り、その他の組み合わせは二句去り、ということになりますでしょうか。
今回の国名と准地名(?)の組み合わせも、二句去りで問題なしということですね。ありがとうございます。
皆さま
夜になると涼風がたって、過ごしやすいのが嬉しいです。
とはいえ、日中の暑さはまだまだ続くことでしょう。どうかご自愛専一にお過ごしくださいませ。
by 如月 (2016-08-14 00:52)
遊香さま
(1) いつの間になつかし草の遠ざけり
私の書斎の日本語辞典には「なつかし草」は収録されていませんでした。ローカル名でしょうか? 馴染みの薄いなつかし草に代えて「わすれ草」などいかがでしょう?
いつのまに遠ざかりけりわすれ草
雑 草類 わすれ草は萱草のことで、身につけていると苦しい恋を忘れることができるそうです。恋わすれ草。「わすれ草の花」は夏。花なくば雑(『無言抄』)ということらしいです。
(2) しまひたる櫛笥に風のこそめきて
雑 風は吹物
by 連歌楽歳 (2016-08-14 00:59)
楽歳さま
お手直し、ありがとうございました。
わすれ草! なるほど、ぴったりですね。
よろしくお願いいたします
by 遊香 (2016-08-14 06:09)
墨にほふふところ紙や秋の風 遊香
付
のりのひかりの消ゆる間を詠む 梢風
くさの名に似る女童の名も 〃
さかしらを言ふつまのつぶら目 〃
○暑さとオリンピックと宿題と。三重苦(?)を楽しんでおります。
楽歳様たしかめをさせて下さい。進行表のところで092「忘れ扇を美濃の国まで」の整理に「本説・斑女」としてあり、付句は班女の内容ですが、連歌の中で謡曲は本歌になりうるのか、この辺りどうでしょうか。謡曲は源氏物語とは違ってどうしても俳言という感じがしてしまうのですが。 梢風
by 梢風 (2016-08-17 09:57)
墨にほふふところ紙や秋の風 遊香
付
のりのひかりの消ゆる間を詠む 梢風
くさの名に似る女童の名も 〃
さかしらを言ふつまのつぶら目 〃
楽歳様、ひとつ確かめをさせて下さい。進行表092「忘れ扇を美濃の国まで」とあるのに「本説・班女」とあるのは謡曲「班女」の内容を受け止めてのこ
とですが、謡曲も本説になるのかどうか、このあたり心許ない感じあります
のでお考え聞かせて下さい。「源氏物語」の本説はすんなり分かりますが、謡曲はどう見ても俳言で、連歌の典拠になるのか、どうでしょうか。蕉風
by 梢風 (2016-08-17 10:08)
のりのひかりの消ゆる間を詠む 梢風
雑 「のりのひかり」は仏法がもたらす光明のことで、釈教。「消ゆる間を詠む」というのは凡人には理解が及びがたい世界。
くさの名に似る女童の名も
雑 「くさ」は草で草類 女は(千句に)一句物ですが女童(めわらわ)は別、人倫
さかしらを言ふつまのつぶら目
雑 「つま」は妻・夫で人倫 「つぶら目」の目は人体
*
謡曲はどう見ても俳言で、連歌の典拠になるのか? というお問い合わせを、梢風さまから頂きました。
以前読書会でとりあげた二条良基『連理秘抄』に「本説 大略本歌におなじ。三句に及ぶべからず。詩の心・物語、又俗にいひつけたる事も寄合にはなる也」とありました。岩波の古典文学大系では、本説について頭注で「句をつくる時によりどころとした和歌以外の詩・物語・故事・諺などの本文をいう」と説明がありました。本歌については「新古今以来の作者、本歌に堪えず」と限定がありましたが、本説については時代の限定がされていませんでした。
中国の古典・班女を謡曲に仕立てた世阿弥(14-15世紀)は心敬・宗祇より数十年早く生まれた人ですが、大雑把にいえば彼らほぼ同時代人です。室町中期の連歌師はもっぱら和歌を参照し、物語などから歌をつくることはまれだったようです。さらに彼らにとって世阿弥の能楽は同時代の娯楽でしたから、能楽を本説にした室町期の連歌はまだ見たことがありません。能楽が古典になった時代の芭蕉たちは時々、謡曲を句の材料に使いました。21世紀の人間にとっては、蕉門の歌仙さえ古典になっています。そういうわけで、21世紀に連歌の真似事をするにあたっては、本歌・本説の範囲を緩やかにしても、ばちは当たらないと思いますが、いかがでしょうか。
by 連歌楽歳 (2016-08-17 21:21)
楽歳様、“本説としての謡曲”について丁寧にお応え頂き有難うございます。
芭蕉たち、といっても阿蘭陀俳諧の人たちが盛んに謡曲ネタを活用しているのは謡曲詞章の俳言性に感応しているからと思いますが、けれども現代では謡曲も安定した古典に入っているので本歌本説の典拠として連歌に用いても構わないとのご判断、安心しました。梢風
by 梢風 (2016-08-18 08:01)
本日、夢梯さまから、次の治定と付けをいただきました。
*
●4折裏2治定
くさの名に似る女童の名も 梢風
●4折裏3付け
縁先に猫の鈴追ふうなゐ髪 夢梯
なヽ彩の糸もてかゞる毬抱きて
鈴の音のたどたどしくも雅びなる
うす紅の細長に濃き袿着て
by 連歌楽歳 (2016-08-21 21:51)
縁先に猫の鈴追ふうなゐ髪 夢梯
雑 縁先は居所体ですが、「えん」は字音で、通常連歌がきらう音です。と言って、絶対に許容できないというほどの音でもないような気がします。「ふち」とよめばおそらくOKでしょうが、そうすると「ふちさきのネコ」? 猫は獣類 うない髪は「うない」(髫髪)と同じで人体、あるいはこのヘアスタイルのこどものことで人倫。
なヽ彩の糸もてかゞる毬抱きて
雑 なないろは七彩で、七は数字、臨終の人と仏を結ぶ五色の糸よりさらに2色多い 毬は「まり/たま」
鈴の音のたどたどしくも雅びなる
雑
うす紅の細長に濃き袿(うちぎ)着て
雑 袿(うちぎ・うちかけ)は衣類 2句前の4裏1に「ふところ紙」があるが、ふところ紙はその前句の「美濃」を受けた美濃紙の懐紙であることに疑問の余地はなく、袿と衣類の打越にはなりません。
by 連歌楽歳 (2016-08-21 22:17)
<4折裏3治定>
(くさの名に似る女童の名も 梢風)
うす紅の細長に濃き袿(うちぎ)着て 夢梯
* 袿は上層女性の衣裳。室町時代には武家の女性も着用した。下って花魁が着用、現代では結婚式の衣裳・打掛。詳しくは百科事典や服飾史事典をお開き下さい。ちなみに『連歌新式』は、衣裳と衣裳は5句を隔てよと指示していますが、ただ、衣裳の定義が込み入っていて難渋します。下紐・ひれ(領巾? 平礼烏帽子?)は衣裳で、帯・冠・沓・衣衣は衣裳に非ず、と説明しています。ただし、これらの非衣裳も衣裳とは打越を嫌うとのことです。
<4折裏4付け>
打越句の女児が打掛を着るまでに成長しましたので、ここらで視線を春先の遠景へ移して、しばしの気分転換をはかりたいと思います。
帆は春風をうけてふくらむ 楽歳
代掻き馬の遠霞む朝
峠の民が畑焼くころ
*
帆は春風をうけてふくらむ
春 春風は2句物(春の風1、春風1) 帆は船(水辺体用外)の一部ですが、同じように水辺になるかどうかは不明。
代掻き馬の遠霞む朝 楽歳
春 霞(聳物) 代掻き馬は雪形であれは残雪(降物)、実際の風景であれば獣類の馬 朝は時分
峠の民が畑焼くころ
春 畑焼く 畑は地儀 峠は山類
*
春の句を出しました。①挙句まで春の句を5句続けて適当なところで花の句を詠む②第6句まで春3句を続けて花の句を出し、第7・8句を雑でまとめる、この2つのコースがおすすめです。ご参考までに。
by 連歌楽歳 (2016-08-22 13:02)
先ほど夢梯さまから
縁先に猫の鈴追ふうなゐ髪 夢梯
を
縁先に雀の子追ふうなゐ髪 夢梯
に変更しますと連絡をいただきました。
雀の子は俳諧では春ですが、連歌での季は不明。源氏物語に似たようなシーンがある。たしか3月ごろのこと。
by 連歌楽歳 (2016-08-22 18:55)
楽歳様
真夏日が続いていますが、それでも、夕方になると秋の気配も感じられ、ほっと一息ついております。付句が遅くなって申し訳ございません。
帆は春風をうけてふくらむ
をいただきます。
4折裏5付ですいつもながらの拙い句ですが、どうぞいご指導をよろしくお願いいたします。
岸辺よりつがい離れし蝶のきて
のどらかに途切れとぎれの水主(水夫でしょうか)の唄
枝越しに海女の焚くらし烟見え
野遊びか鄙の戯れ唄聞こえきて
またまた台風が関東上陸とか。皆さまには被害の及びませぬよう、心から願っております。
by 路花 (2016-08-26 17:55)
岸辺よりつがい離れし蝶のきて
春 蝶は虫類 岸辺は水辺体
のどらかに途切れとぎれの水主(水夫でしょうか)の唄
春 のどか・のどらか・のどやかは長閑 かこ(水手・水主・楫子)は多分水辺用・人倫
枝越しに海女の焚くらし烟見え
春 海女俳諧季語で春(ホトトギス俳句季題便覧は夏に指定) 人倫 枝越しは木類 この程度の煙はむずかしいところですが、聳物にいれておきます。海女についてはそういうわけなので、「枝越しに」の部分を、ありきたりの季の詞と入れ替えて、春の季を確定しましょう。たとえば、
陽はうらら海女の焚くらし烟見え
陽は光物
水ぬるみ海女の焚くらし……
水辺用
永き日に海女の焚く……
路花さんのお好きな季語をどうぞ。
野遊びか鄙の戯れ唄聞こえきて
春 野遊び 野は地儀 野遊びは和歌・俳諧で春、連歌では春に非ず(連歌新式・産衣)鄙は国郡 参考までに残しておきます。治定される方のお好みに合えば、俳諧季語の準用ということでOK。
by 連歌楽歳 (2016-08-26 21:57)
●追加修正
4折裏の改訂中に気づきました。打越句が
うす紅の細長に濃き袿着て
と「て」で止まっていますので、
岸辺よりつがい離れし蝶のきて(蝶のくる)
野遊びか鄙の戯れ唄聞こえきて(聞こえくる)
としておきます。良い案があればどうぞ。
by 連歌楽歳 (2016-08-26 22:21)
楽歳様
ご指摘ありがとうございました。
1番目目の「岸辺より」 下の句は「蝶のくる」に
3番目の「枝越しに」は 「水ぬるみ」に
4番目の「野遊びか」の下の句は「聞こえくる」に直させていただきます。
岸辺よりつがい離れし蝶のくる
のどらかに途切れとぎれの水主(水夫でしょうか)の唄
水ぬるみ海女の焚くらし烟見え
野遊びか鄙の戯れ唄聞こえくる
となります。どうぞよろしくお願いいたします。
by 路花 (2016-08-27 15:15)
路花さま
直し、承りました。
それにしても今年の夏は天候不順が続きますね。
by 連歌楽歳 (2016-08-27 17:01)
いまごろになって申し訳ないのですが、夏バテのせいということでお許しください。
3句前の4裏2に「女童」があり、4裏5で「海女」は辛いとところです。単独の「女」は一座一句物ですが、「女童」「海女」は女のついた熟語ですから、扱いは異なると想像しますが(女が出たら「女形」も使えなくなるのは不便なので)、詳しいことは『連歌新式』に出ていません。同字5句去りの決まりがありますので、少なくとも5句を隔てるか、「○女」「女○」といった熟語は1句物「女」の親戚すじの言葉なので、面あるいは折を避けた方が安全な気がします。
「海女」を「海人」あるいは「蜑」と変えましょう。字体が面白いので「蜑」の方にしましょう。
by 連歌楽歳 (2016-08-27 19:16)
ついでに、拙句「春風」が第1「秋の風」と同字5句去りのおきてにさわりますので、「はるかぜ」とかな書きにいたします。
by 連歌楽歳 (2016-08-27 20:31)
再々訂正
先に「はるかぜ」とかな書きに替えた「春風」は、漢字・かなに関わらずそもそもが吹物(風類)ですから5句去り。4折裏1の「秋の風」と近すぎてXでした。
そこで、
帆は春風をうけてふくらむ
をボツにし、新たに、
帆上げ出づればかすむ島影 楽歳
(かすみは春、聳物 島は水辺体・山類体)
と変えます。お騒がせしました。
by 連歌楽歳 (2016-08-28 11:31)
お知らせ
楽歳は今週いっぱい不在です。
おまたせして申し訳ありません。
by 連歌楽歳 (2016-08-29 11:07)
宗匠さま、皆さま
二週続きの台風来襲。しかも関東以北を狙って来るとは、日本列島が南方化しているようで、不気味に思えます。
被害がありませんよう、お祈りいたします。
付句をお待たせいたしましたために、宗匠さまはみやこを留守にされたご様子。ご出発に間に合いませんでしたこと、お詫び申し上げます。
路花さまの
のどらかに途切れとぎれの水主の唄
を頂戴させていただきます。
拙次は相変わらずの無調法で恐れ入るばかりでございます。
引きゆく鶴の餞とせむ
雁の供養のけぶり立つらし ※1
および指しつつ青き踏む比丘 ※2
真玉(またま)の耳環初虹に映ゆ ※3
遊び詞に異邦(とつくに)の香の ※4
※1 供養は使えませんでしょうか?雁悼む湯の……とかの言い替えはできますか?
※2 比丘は使えませんでしょうか?また、女童、水主につづいて、さらに人倫というのは障りますか?
※3 外つ国人の水主とみて。
※4 あるいは、囃子詞に……?
わからないことばかりで、恐縮に存じます。お直し、作り直し指示など、ご指導よろしくお願い申し上げます。
by 如月 (2016-08-30 13:19)
宗匠さま、皆さま
先程お送りしました付句のうち、季語のないものがありました。失礼いたしました。
遊び詞に異邦の香の
に代えまして
遊び詞に戯(さ)れる初蝶
とさせていただきます。
よろしくお願い申し上げます。
by 如月 (2016-08-30 13:32)
引きゆく鶴の餞とせむ 如月
雁の供養のけぶり立つらし
および指しつつ青き踏む比丘
真玉(またま)の耳環初虹に映ゆ
遊び詞に戯(さ)れる初蝶
*
引きゆく鶴の餞とせむ 如月
春 鶴は2句物(つる1、たづ1)鳥類 「雁帰る」は連歌の時代から春の季語になっていました(『産衣』)ので、「引きゆく鶴」もこれにならって春と主張することができます。俳諧の時代に入ったのちはれっきとした春の季語になりました。
雁の供養のけぶり立つらし
春 雁供養は俳諧の春の季語 雁は2句物(春1、秋1 秋の雁は2表1に既出。これで春秋使い切り) けぶりは聳物 供養はサンスクリット起源の仏語。連歌ではふつう漢音と同じように敬遠したが、同じサンスクリット起源の仏語・僧が連歌での使用を許容されてきたので、それをもとに供養も許容できると主張することはできます。「雁供養」については『季語研会報』の「季語の周辺41 鳥のファンタジー」でふれました。18世紀になってから使われ始めた言葉だそうです。機会があればご覧ください。
および指しつつ青き踏む比丘
春 「踏青」は『連歌新式』の和漢篇に春の季語として載っています。その和風化。比丘はサンスクリット起源の仏語。これも「僧」を引合いに出して連歌でも許容できると主張することが可能。「および」は人体。「秋の野に咲きたる花をおよび折りかき数ふれば七草の花」(万葉集)。人倫と人倫は打越を嫌うが付け句の場合ははばからず、と『連歌新式』
真玉(またま)の耳環初虹に映ゆ
春 初虹は俳諧・春の季語 「虹」は一句物・聳物にあらず」と『産衣』 百科事典によると、耳飾りは古墳時代には用いられたが、奈良時代以降幕末の日本開国まで廃れていました。耳環は19世紀の造語。
遊び詞に戯(さ)れる初蝶
春 蝶は春の季語、蝶・胡蝶は漢音だが、連歌ではこれを許容していました。虫類
遊び詞に戯(さ)れる初蝶
囃子ことば(詞)に戯れる初蝶
囃子詞の方が歌舞音曲をより強く連想させて春の楽しい感じがしませんか? ついでに「ことば」とかなで柔らかく。
by 連歌楽歳 (2016-09-04 14:56)
ワンテンポ遅れて気づきました。
雁の供養のけぶり立つらし
打越の「かすむ島影」と聳物のバッティングになりますが、雁の供養が治定されたら、かすむ島影を春の島影などと変更する予定です。
by 連歌楽歳 (2016-09-04 15:45)
宗匠さま
お帰りなさいませ。
東北被災地への訪問 お疲れ様でした。
(私も知人がいるため、個人的に南三陸町を応援しています。震災後の5月に物資を届けに行った際に見た、 見渡す限り堆く積まれた瓦礫の山々の光景が、今も脳裡に浮かびます。今年は時間をみつけて、今の姿を目に焼き付けに行きたいと思っています。)
ご教示ありがとうございました。
サンスクリット語起原の仏語、僧・供養・比丘などは漢音であっても連歌で使用できるということは、嬉しいことです。
言い換えが利かないから、という理由だったからなのでしょうか。
また、「遊び詞」より「囃子ことば」のほうが楽しげというご意見、承りました。そのように直させていただきます。
ところで仏語といいますと、フランス語という意味でも使われます。その場合には勿論「フツゴ」と言いますが、昔、初めて教室に来た大学一年生が「ここはブツゴのクラスでしょうか」と言ったのには、ビックリポン!(ビックリポンも賞味期限切れの感がありますね)。つい噴き出してしまったこと、思い出します。
蘭舎さま、
お直し、お捌き、よろしくお願い申し上げます。
by 如月 (2016-09-05 19:39)
9月10日、場合によっては11日まで留守になります。
またお待たせすることになり申し訳ないです。
特に蘭舎さま、羽衣さま。
by 連歌楽歳 (2016-09-06 21:05)
お待たせいたしました。
旅から帰ってまいりました。
by 連歌楽歳 (2016-09-11 21:44)
楽歳さま、お帰りなさいませ。
台風のあと、急に秋らしくなってまいりました。
いよいよ名残の折、花までまいりましたね。
まさか詠ませていただくことになろうとは恐れ入りますが、
あまりお待たせしては興のないこと・・・連歌らしく
詠むのはとても難しいのですが、付けさせて頂きます。
引きゆく鶴の餞とせむ
しみじみと如月さまのこの御句をかみしめながら
花あかり奥へ奥へとしたふ道 蘭舎
盃の小貝は花の幻か
花の奥なほせんだつのあらまほし
花降ればいづれふたみとなる小貝
さびしくもおぼろの花を袖にみて
くるしい句となってしまいましたが、楽歳宗匠、羽衣さま
なにとぞよしなにご一直、お救いくださいませ。
by 蘭舎 (2016-09-12 05:47)
花あかり奥へ奥へとしたふ道 蘭舎
春 花 木類 「花の散り、月のかたぶくをしたふ習ひ」(徒然草)同様、この「したふ」は人以外のものを愛惜することで、恋の句ではありません。
盃の小貝は花の幻か
春 花 木類 貝類 飲食 うつほ物語に「色々の小貝ども敷けるごとあり」 「小貝」は水辺で打越の水主と障るような感じがしますが、『連歌新式』は貝を「虫類」に入れており、貝と水辺を結びつけるような記述がありません。
花の奥なほせんだつのあらまほし
春 花 木類 人倫 「明ぼのの花のおくより鐘なりて」(兼載)
花降ればいづれふたみとなる小貝
春 花 木類 貝類 数字(ふた=2) 「花散る」に比べて「花降る」は馴染みの薄いコロケーションですが、「空にさへ花降るけふの法の声」という例が連歌データベースにありました。
さびしくもおぼろの花を袖にみて
春 花 衣類 「おぼろ」と組み合わせるのは連歌の場合もっぱら「月」で、「おぼろ」と花の組み合わせは俳諧の時代の発見のようです。第4句の「かすむ」とおぼろ(朧)は打越を嫌いますが、それ以上の規定は在りませんので、セーフです。
by 連歌楽歳 (2016-09-12 13:03)
宗匠さま 皆さま
少々パソコンに遠いところに居り 失礼致しました。
遅くなりましたが いよいよ千句第六の挙句
至りませんが何卒よろしくお願い申し上げます。
花明り奥へ奥へとしたふ道 蘭舎さま
(花の奥なほせんだつのあらまほし と迷いましたが水主とどうかと?)
付け
筑波嶺はるか仰ぎ見る春(仰ぐ永日 仰ぐ永き日)
翁おうなの青き踏む野辺(毛吹草連歌の詞にありましたが中国?)
連歌盗人春のほろ酔ひ
君が此の代の弥生まばゆし(やすけく)
虎屋最中の弥栄の春
筑波いざなふ春のせんだつ
なにとぞ宜しくお導き頂きますようお願い申し上げます。
by 羽衣 (2016-09-16 13:07)
筑波嶺はるか仰ぎ見る春(仰ぐ永日 仰ぐ永き日)
春 筑波嶺は名所・山類 「仰ぎ見る」の「見る」が捨てがたく、ここは「春」で。あいにくと、4句前に島(水辺体・山類体)があります。山類は5句去り。
翁おうなの青き踏む野辺(毛吹草連歌の詞にありましたが中国?)
春 踏青は『連歌新式』の漢和編に春とあり。人倫 地儀
連歌盗人春のほろ酔ひ
春 盗人は人倫 「つらねうたぬすと」で字余り。
君が此の代の弥生まばゆし(やすけく)
春 弥生 君は人倫 「やすけく」とするといま話題の生前退位を連想させ、やすらかな挙句にはなりにくいかも。
虎屋最中の弥栄の春
春 思わずうなる出来栄えですが、ちょっとコマーシャルの匂いが。むかしニューデリーでお世話になった人に、銀座の虎屋から羊羹を送ったことがありました。大丈夫だろうか、と尋ねたところ、インドだろうがアフリカだろうが、輸送中に悪くなることは絶対にありません。虎屋の羊羹は60パーセントが砂糖で、砂糖には防腐効果があり、開封しなければ1年は大丈夫、ということでした――いやさか。最中の場合も同じでしょうね。
筑波いざなふ春のせんだつ
春 筑波は名所・地名 人倫
*
「挙句の句柄は穏やかにして正しく上品なるものを用ゐるを例とせり」(山田孝雄『連歌概説』)にしたがって、挙句には、
筑波嶺はるか仰ぎ見る春
から「嶺」をとって、
筑波はるかに仰ぎ見る春
(筑波は大化改新前は国だったので、国郡に分類。「新治菟玖波を過ぎて幾夜か寝つる――かゝなべて夜には九夜日には十日よ」の、菟玖波の道こと連歌発祥伝説の地。挙句まで、1年有余、はるかな道のりでした)
を頂いて、電脳千句第6賦御何百韻一巻の終わりといたしたいと思いますが、羽衣さま、いかがでしょうか?
by 連歌楽歳 (2016-09-16 19:28)
宗匠さま
大変結構に存じます。筑波を 菟玖波 と致しますと如何でしょうか?
菟玖波はるかに仰ぎみる春
つくば遥かに仰ぎ見る春 (地名は矢張り筑波でしょうか?
とどのつまり およろしい様にお願い致します。)
はるか(遥か) も語幹形でなくなり 結構に存じます。
島 が 水辺体 山類体 とのこと 身を以て勉強させて頂きました。
挙句ぶりのご教示も大変勿体なく有り難く存じました。
因みに 虎屋の最中は 羊羹よりずっと賞味期限短く 二週間程だ
そうです。お早めにご賞味ください! とございます。
畏れながら 当方初めての百韻全参加 宗匠さま、皆さまのお蔭にて めげず挫けず何とかパソコンもこの程度ですが使えるようになりました。
一年余 とのお言葉 楽しくてつい今年の夏からのように思っておりましたが 宗匠さまには 大変貴重なお時間とご労力を賜りましたこと
心より御礼申し上げます。
誠にまことにお導き有り難うございました。
あと四巻で十百韻とか! 頑張りましょう!
宗匠さま 皆さま 今後ともよろしくお願い申し上げます。
by 羽衣 (2016-09-16 23:18)