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電脳網千句第8 賦何垣百韻 1折裏 2018.1.7~

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  かげろふを見つめ盃さしいだし        路花
   訪ふものはただ秋の風           朝姫
  もののふの夢のあとなる関の扉に       月
   うみは鏡のごとくかがやく         草
  いさぎよく船出のときと告げたきを      香
   妃と誇り奪ひかへさむ           歳 
  いたはしや千と一つの夜を泣きて       舎
   枕にこめし思ひさまざま            梯
  襲(かさね)たる花のくれなゐ綻ぶも      衣
   筆持つ庭にあは雪ぞふる           風
  深山へと蝶の誘ふ道ゆかば           姫
   ふと懐かしき鄙歌の節             花
  潮干珠潮満珠の月涼し             草
   泥絵ゆらして宵宮の灯の            月
    


 

 

 

 

    <<進行表はこちら>>










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コメント 52

連歌楽歳

1折表コメント欄から関連部分引っ越し

宗匠さま  皆さま
暦の上では春、とはいえ寒い毎日です。風邪をひき、蟄居の日々を過ごしております。残念ながら恵方巻も福豆もない節分でした。コンビニ店員さんの「ナムナムコイ」面白いですね。新しい百韻、お仲間に入れていただきありがとうございます。どうぞよろしくご指導くださいますようお願いいたします。

羽衣さまの
あた〵め酒を振る舞ひにけり
をいただきます。早く風邪が治して、あ〵ため酒を・・・いただきたいとの願いを込めて。

付句です。相も変わらず拙きものばかり、お許しくださいませ。
どうぞご指導お願いいたします。

まれびとに持たせやりたし菊膾
かりがねの声つややかに思ほへて
紅葉踏むかそけき音のかなたより




by 路花 (2018-02-05 17:47)

連歌楽歳
 まれびとに持たせやりたし菊膾
秋 菊膾は俳諧秋の季語 飲食 人倫第7句の「大臣」と人倫の打越になります。連歌は人倫の打越を気にします。「まれびと」の部分、言い換えをご工夫願えますか。

かりがねの声つややかに思ほへて
秋 かりがね(雁)は2句物(秋1、春1)鳥類

紅葉踏むかそけき音のかなたより
秋 紅葉は3句物(只1、梅桜など1、草の紅葉1)木類

by 連歌楽歳 (2018-02-05 20:16)

路花
宗匠さま

ありがとうございます。 まれびとに持たせやりたし菊膾
の句を直します。

糸遊を目で追ひ手には盃もちて

どうぞよろしくお願いいたします。
by 路花 (2018-02-06 13:03)

連歌楽歳

 糸遊を目で追ひ手には盃もちて
「糸遊」は通常、陽炎のことで春の季語ですが、これを空中に漂う蜘蛛の糸ととれは秋の季語になるとする歳時記・季寄せもあります(例えば『十七季』)。

平凡社『世界大百科事典』には次のように書かれています。

「子グモが分散し独立生活に入る方法もいろいろだが、風や上昇気流を利用して遠隔の地にいく方式をとるものが多い。クモが空中を飛ぶことをバルーニング ballooning という。この現象が発生するには、二通りの原因が考えられる。(1)天候が快晴で風をほとんど感じない気象状況になると,上昇気流が発生しやすくなる。このようなときに孵化(ふか)した子グモが〈まどい〉という時期を経て,それぞれ独立生活に入るとき、イネの切株や畑の作物の先端に登り、しりを空に向け、糸をこの上昇気流に乗せると糸はぐんぐん空高くのびていく。そのうちに糸に浮力がついて、物にしがみつきがんばっている子グモを、ぴゅっぴゅっと大空に引っ張っていく。気流の状況いかんでは、かなり遠隔の地まで空中飛行ができる。日本では初春の暖かい日和にクモの空中飛行が行われると、これを雪送り、晩秋の小春日和に見られると雪迎えなどと呼んでいる。この場合は上昇気流がなければ、クモは空中を飛ぶことはできない。(2)風の吹いているときに行われるバルーニングは、クモが風に糸を流し、その糸に引っ張られるようなかっこうで空中飛行をする。アシダカグモHeteropoda venatoria では、〈まどい〉を終えて独立生活に入るとき、家の軒先などからこの方法で風に飛ばされて分散していく。この情景は夏によく見られる。また春一番の風が吹くころ、飛行機に捕虫網をとりつけて、知多半島の2500m上空を飛んだことがあるが、この風に乗って飛行中のヤミイロカニグモの幼生を採集したことがある。この場合は風がなければ、クモは空中を飛行することはできない。とにかく(1)、(2)の方法でクモは、はねがなくても空を飛び、陸地から何百kmも離れた絶海の孤島にもいくことができるのである。なお,クモの糸だけが空中を飛んでいるものを遊糸gosamer と呼んでいる」(gossamerが正しい)。

「糸遊(遊子)」を秋季とした例は、手持ちの『図説 俳句大歳時記』(角川書店)、戦前の虚子編『新歳時記』、改造社『俳諧歳時記』、『合本 俳句歳時記』(角川書店)に見当たりませんでした。

そういうわけで、「糸遊」を「かげろふ(蜉蝣)」に変えましょう。

また「盃」を「はい」と読ませると字音になりますので、

 かげろふを見つつ盃さしだして

 かげろふを見つつ盃さしだして     路花
秋 虫類 人体 飲食

ついでに、

 唐物の白の器に菊膾
秋 飲食 

いかがでしょうか?
     

by 連歌楽歳 (2018-02-06 18:30)
by 連歌楽歳 (2018-02-06 22:55) 

路花

宗匠さま
お返事が遅れて失礼いたしました。糸遊についてのご説明ありがとうございます。学生時代(ずいぶん昔のことです)津軽出身の同人雑誌の仲間が、小説の中に、蜘蛛が糸を引いて空を飛ぶ、その美しさ、はかなさを書いていて、以来ずっと一度は見たいものと願い続けていました。それを見ると、明日は雪になると思ったと聞いていました。

かげろふを見つつ盃さしだして
  にお直しいただき、ありがとうございます。
  菊膾の色の美しさが好きで、お酒に最もふさわしいものと勝手 に思い込んでおりますので、
  それを唐物の白い器に盛っていただき、嬉しく思います。

どうぞよろしくお願いいたします。
by 路花 (2018-02-07 13:22) 

連歌楽歳

変更のお知らせ

 唐物の白の器に菊膾     路花

 唐物の白き器に菊膾

と変更いたしました。
by 連歌楽歳 (2018-02-07 14:44) 

朝姫

楽歳様、皆様

この度もご一緒させていただきますこと大変嬉しく思っています。
どうぞ宜しくお願い申し上げます。

さて糸遊のお話、興味深く拝読しました。
子供の頃に観た映画「シャーロットの贈り物」を思い出しました。
それに関連して、という訳ではありませんが…

路花様の
 かげろふを見つつ盃さしだして
をいただきました。


 ゆめまぼろしは儚きものと   朝姫
 まなうらよぎる君の面影
 平らかなる世を祈る友垣
 訪ふものは風ばかりなり

ご指導どうぞ宜しくお願い致します。

by 朝姫 (2018-02-10 08:23) 

連歌楽歳

 ゆめまぼろしは儚きものと   朝姫
雑 ゆめまぼろし(夢幻)の夢は非夜分

 まなうらよぎる君の面影
雑 恋 人倫 面影は2句物(只1、花月などに1)。 電子辞書の『精選版 日本国語辞典』には「まなうら」の項目が無く、「眼裏(がんり)に塵あって三界窄し」と例文がありました。広辞苑にも「まなうら」が載っていません。おもしろいですね。

 平らかなる世を祈る友垣
雑 世は5句物(只1、浮世、世の中の間に1、恋の世1、前世1、後世1) 人倫
 平らけき世を祈る友垣
とすれば7・7になります。

 訪ふものは風ばかりなり
雑 風は吹物 「人すまぬふはの関屋のいたびさしあれにし後はただ秋の風」(摂政太政大臣、新古今集)から「ただ秋の風」を借用して、
  訪ふものはただ秋の風
秋 吹物 秋の風は2句物(秋の風1、秋風1)
これを添えておきましょう。

     

by 連歌楽歳 (2018-02-10 13:49) 

如月

宗匠さま (皆さま)

早くも二順目が回って参りました。

訪ふものはただ秋の風 朝姫さま

を頂戴させていただきます。
拙次

・俤のあまり若きに涙せば

・ひとり寝の涙にうかぶ俤は(/俤に)

・つま弾きの琵琶を抱きてひと待てば

・もののふの夢のあとなる関の扉に

・さんざめく大宮人の声かとも


打越のお句が「て」留めのこともありますゆえか、下五が難しうございました。
体言留めにしたかったのですが、うまく決まりません。
宗匠さま、ご指導よろしくお願い申し上げます。ご一直いただけましたら、嬉しく存じます。
by 如月 (2018-02-11 13:41) 

連歌楽歳

 俤のあまり若きに涙せば
雑 おもかげは2句物(只1、花月など1)述懐(懐旧・哀傷)

 ひとり寝の涙にうかぶ俤は(/俤に)
雑 恋 述懐 人倫 夜分 1表7に「月よみ」の夜分がありますので夜分と夜分5句に抵触します。「ひとり寝の」を「たそがれの」とする安直な方法もありますが、ふくめて別案をご検討下さい。

 つま弾きの琵琶を抱きてひと待てば
雑 恋(雰囲気) 人倫 

 もののふの夢のあとなる関の扉に
雑 人倫 夢と夢は7句隔てる この夢は非夜分 関は4句物(只1、名所1、恋1、春秋をとむると云いて) 関戸は居所ではないが、居所との打越を嫌う

 さんざめく大宮人の声かとも
雑 人倫
     

by 連歌楽歳 (2018-02-11 19:28) 

如月

宗匠さま

早速にご指導をありがとうございました。

夜分を変えまして、たそかれの涙…あるいはかはたれの涙…にさせていただきます。
また、うた詠みの涙…というのは如何でしょうか。

たそかれ(/かはたれ)の涙にうかぶ俤は(/に)
うた詠みの涙にうかぶ俤は(/に)

本歌取りというのか、面影付けというべきか・・・今回は、ご紹介くださいました九条良経の歌の世界(ふはの関… ひとりかもねむ… )を巡ってばかりいたような気がします。
「ただ秋の風」の言葉の力に引き込まれました。
では、よろしくお願い申し上げます。
by 如月 (2018-02-11 23:19) 

連歌楽歳

 たそかれ(/かはたれ)の涙にうかぶ俤は(/に)
 うた詠みの涙にうかぶ俤は(/に)

の2案をいただきました。「うた詠み」の方は4句前に「月よみ」があり(歌詠と月読では字が異なるので問題はないのですが)何となく音が重なるのが気にかかります。たそかれ/かはたれの方を変更案にしましょう。たそかれ/かはたれ、は/に、の選択は付け句をなさる方にお任せということで。
     

by 連歌楽歳 (2018-02-12 00:58) 

如月

宗匠さま

代案につきまして、ご指導ありがとうございました。
月よみ、うた詠み・・・上五に並ぶのは、たしかに避けるべきでした。

では、千草さま、よろしくお願い申し上げます。
by 如月 (2018-02-12 23:39) 

朝姫

楽歳様

連休中、断スマホ・PC修行をしていたためお返事遅くなり失礼致しました。

「平らかなる世」は「平らかな世」と打ったつもりでしたが「平らけき世」の方が格調高く響きが美しいですね。

「まなうら」が広辞苑にもないとは知りませんでした。
連歌にはあまり相応しくない言葉でしたでしょうか。
「まなうら」という言葉を使うと、偏頭痛の時いくら目をつぶっても視界の半分をキラキラとした車輪のようなものが回っていたことを思い出します。

「風ばかりなり」を「ただ秋の風」とのお手直し、こちらもありがとうございました。
如月様に早速取っていただきまして嬉しいことです。

ご指導ありがとうございました。

by 朝姫 (2018-02-13 23:23) 

千草

しばらくPCがかなり機嫌をそこねており
もう脱PCかと見守っていたところ、大丈夫そうなので
送信します。

進行表では7句目と9句目が打越で て留 になっているのを
不審に思っております。

でもいつ送信できるかわからないし
自分の勘違いかもしれないので、ここは

とてもすてきな
  もののふの夢のあとなる関の扉に  如月様

こちらに付けをお送りしてしまいます。

付け
    名所となる歌をまゐらす
    うみは鏡のごとくかがやく
    天つ鳥船漕ぎ出でてゆく



by 千草 (2018-02-15 21:18) 

連歌楽歳

 名所となる歌をまゐらす
雑 能因法師の白河の関ですか。しゃれてますね。
    
 うみは鏡のごとくかがやく
雑 海は2句物(只1、名所1、わたつみなどは別)水辺体 こちらは下関ですね。

 天つ鳥船漕ぎ出でてゆく
雑 「天つ鳥船」は手持ちの辞書に見当らず、「天の鳥船」(広辞苑)、「天の磐船」「天の磐樟船」(精選版日本国語大辞典)がありました。神様の乗りものなのか(空想)、神話時代の朝鮮出兵に使われていたような速力のある船(水辺)なのか、どの船が句の意図にふさわしいのか、付句にお任せしましょう。

    ◇
「かげろふを見つめ盃さし出して」の「て」の打越のご指摘ありがとうございました。

「かげろふを見つめ盃さしいだし」と「て」抜きを致します。路花さま、ご了承ください。
by 連歌楽歳 (2018-02-15 23:42) 

遊香

遅くなりました。

千草様の
うみは鏡のごとくかがやく

いただきまして 付

飛魚(とびを)らの誘はれしや波に跳ね
渦巻きてやがて消へゆく潮の路(みち)
勾玉の翡翠をさがす砂の浜
いさぎよく船出のときと告げたきを

いつものごとく、お手直しをよろしくお願いいたします。

by 遊香 (2018-02-19 22:49) 

連歌楽歳

 飛魚(とびを)らの誘はれしや波に跳ね
夏 飛魚は俳諧夏の季語、魚類、水辺用、波同

 渦巻きてやがて消へゆく潮の路(みち)
雑 潮は水辺体 塩の道とは干満によって現れたり消えたりする海岸の道の事でしょうか。大潮の時のモンサンミシェル、あるいは、バリ島のタナロット寺院のような。あるいは渦巻きて、とあるので、「潮目」のようなもの?

 勾玉の翡翠をさがす砂の浜
雑 浜は水辺体 翡翠探しは糸魚川の海岸で。

 いさぎよく船出のときと告げたきを
雑 船は水辺体用外 緊迫感が漂いますね。

次は楽歳です。少々お待ち下さい。

by 連歌楽歳 (2018-02-19 23:51) 

連歌楽歳

あれこれ迷いましたが、1折裏5に

 いさぎよく船出のときと告げたきを  遊香

をいただいて、

●1折裏6付け
 妃と誇り奪ひかへさむ
 添いて四十年(よそとせ)けふぞ別れん
 悔も恨みも風に舞ひ散れ
 ひとり眺めるこれからの空

遊香さまがお作りになる句の周辺には川柳・俳諧の磁場が張りめぐらされているのでしょうか。付句をつくろうとすると、思わず知らずみな俳諧句になってしまいます。しずしずと進んできた何垣百韻ですが、1折裏も中盤にさしかかりましたので、ここらあたりで俳諧句や恋の句が一つ二つ出ても不自然ではないでしょう。

    ◇
 妃と誇り奪ひかへさむ
雑 人倫 

 添いて四十年(よそとせ)けふぞ別れん
雑 数字 けふ(今日は2句物、懐紙をかえる)

 悔も恨みも風に舞ひ散れ
雑 「うらみ・うらむ」は二句物。うらみは恋の常套用語だが、さて、この句の場合は? 風は吹物。

 ひとり眺めるこれからの空
雑 空は天象

by 連歌楽歳 (2018-02-20 17:27) 

連歌楽歳

訂正
ひとり眺めるこれからの空
   ↓
ひとり眺むるこれからの空

古文の連体形は「ながむる」でした。
by 連歌楽歳 (2018-02-20 19:27) 

遊香

楽歳さま

「句の周辺に川柳・俳諧の磁場が…」とは恐れ入ります。実は昨日も川柳仲間と「川柳連句」、半歌仙を同時に三巻、巻いたのですが、〝しずしず〟とは縁遠いものでした(笑)。

楽歳様の付句、何とドラマチックでドキドキ!…、次の展開が楽しみです。


by 遊香 (2018-02-21 06:40) 

連歌楽歳

訂正
 悔も恨みも風に舞ひ散れ

この句の「風」は4句前の「秋の風」とさわりますので(風と風は5句)ので、

 悔も恨みも舞ひて散りゆけ

と直します。


by 連歌楽歳 (2018-02-21 20:58) 

蘭舎

楽歳さま

俳諧ですね。

妃と誇り奪ひかへさむ

をいただいて、案じてみました。

むざんやな(いたはしや)千と一つの夜を泣きて 蘭舎
太刀振りて荒ぶる神を鎮めたる
雲見ても千々に乱るる我がこころ
雨降らぬ外つ国に袖絞りつつ
わが涙あかがね色に空染めて

乱れ撃ちとは相なりました。どうぞよろしくご一直ください。



by 蘭舎 (2018-02-23 20:30) 

連歌楽歳

 むざんやな(いたはしや)千と一つの夜を泣きて 蘭舎
雑 数字 夜分 恋の句ですね。むざんやな/いたはしや、の選択は付句作者に。

 太刀振りて荒ぶる神を鎮めたる
雑 神祇 

 雲見ても千々に乱るる我がこころ
雑 聳物 我で人倫 こころが千々に乱れれば、恋。

 雨降らぬ外つ国に袖絞りつつ
雑 降物 国郡 衣類 袖を絞って恋。

 わが涙あかがね色に空染めて
雑 天象 涙で恋

      ◇

いさぎよく船出のときと告げたきを
 妃と誇り奪ひかへさむ

と、冗談半分にトロイ戦争やラーマーヤナの世界に足を突っ込んだところ、蘭舎さまがさらにアラビアンナイト、古事記の世界に突入されました。魔王ラーヴァナと闘うラーマ王子、さらわれてなくシーター姫。地下連歌風の展開はここまで。夢梯さま、どうぞ堂上連歌風にお戻しください。


by 連歌楽歳 (2018-02-23 22:30) 

連歌楽歳

夢梯さまから以下の連絡をいただきました。
     ◇
●1折裏7治定
 いたはしや千と一つの夜を泣きて   蘭舎
●1折裏8付け
 ほがらほがらにこまやかな文     夢梯
 強き筆なる廷(には)の耀き
 枕にこめし思ひさまざま
 言はで思ふと誘ひの文
 嘆き食はせて朗らなる文
 嘆きと笑みに変へし枕ぞ

     ◇
 ほがらほがらにこまやかな文     夢梯
雑 文は3句物(恋1、旅1、文学1) 前句の恋を受けてここの文を恋の文ととればおさまりがよさそうです。

 強き筆なる廷(には)の耀き
雑 廷は庭(居所用)ではなくて、役所/朝廷。勅旨でも出たのでしょう。

 枕にこめし思ひさまざま
雑 恋 夜分(枕) 「春の夜の夢ばかりなる手枕にかひなく立たむ名こそ惜しけれ」(百人一首)あたりのかんじでしょうか。

 言はで思ふと誘ひの文
雑 恋 文は3句物(恋1、旅1、文学1)

 嘆き食はせて朗らなる文
雑 文は3句物(恋1、旅1、文学1) 楽歳には読み解けませんので、おまかせ。

 嘆きを笑みに変へし枕ぞ
雑 恋 枕は夜分 「露ぬらす夢の枕に人を見て 良基」(文和千句第1)


by 連歌楽歳 (2018-03-01 22:00) 

羽衣

宗匠さま 皆さま
いよいよ 三月に入りました。
 如月 弥生 春の盛り・・・その先 思い出せません。
 眼も一段と悪くなり 探す気力もなく 何方か(佐藤春夫?)
教えてくださいませ。
扨 夢梯さま御句
    
       枕にこめし思ひさまざま    頂きます。

              付け
        散りぎはの扨(さて)もあて(貴)なる花の色
        襲(かさね)たる花のくれなゐ綻ぶも
        咲き初むる花のいろか(色香)のうつろふも
        限りあるいのち尽して花散らふ

すみません。すっかり 花のモードに陥り 夜も更けました。
又出直しますので 取り急ぎ 失礼申し上げます。
        
        
by 羽衣 (2018-03-02 03:25) 

連歌楽歳

  散りぎはの扨(さて)もあて(貴)なる花の色
春 花 木類 「限りさへ似たる花なき桜哉 宗祇」のむかしから繰り返し言われてきた春の風景です。

  襲(かさね)たる花のくれなゐ綻ぶも
春 花 襲は衣類 「世中の人の心は花ぞめのうつろひやすき色にぞありける」

  咲き初むる花のいろか(色香)のうつろふも
春 花 木類 「うつろふ」は「移ふ」でなく(咲き初めてすぐ移ろうでは時間的にちょっと無理があり)、「映ふ」の方でしょうか。「花盛りまだも過ぎぬに吉野河かげにうつろふ岸の山吹」
        
  限りあるいのち尽して花散らふ
春 花 木類 いのち(命)は2句物(只1、虫の命など1) 「…散らふ」とは古い言葉をよくご存じで。「吉野の国の花散らふ秋津の野辺に宮柱太敷きませば百磯城の…」(万葉集・柿本人麻呂)。

まもなくお花見シーズンですね。 

by 連歌楽歳 (2018-03-02 12:40) 

お名前(必須)

襲(かさね)たる花のくれなゐ綻ぶも 羽衣

   付

  筆持つ庭にあは雪ぞふる      梢風
  この世のことはかぎろひの中     〃
  やよひの空に公事のおもたき     〃

やっと春が動き出す感じですね。3/9~3/11は鹿児島に帰って、「鹿児島フェスタ」の連句展示を手伝ってきます。

では楽歳様、よろしくお捌き下さい。
by お名前(必須) (2018-03-02 16:08) 

連歌楽歳

  筆持つ庭にあは雪ぞふる      梢風
春 降物 庭は2句物(只1、庭訓など1)居所用。 淡雪はやっかいな言葉で、和歌では「春きては花とも見よとかた岡の松のうは葉にあは雪そふる」(新古今・藤原仲実)など春に使われ、連歌では「冬」(連歌では降る雪は冬、残る雪が春)、芭蕉以降の俳諧で春になりました。とはいうものの、前句の「桜襲」と紅とあは雪の白のみごとは対比がもったいないと、例外を探したところ15世紀前半の『看聞日記紙背』何人百韻に、

 佐保姫の衣や寒き薄霞
 降るよりやがて消ゆるあは雪
 まつころの花にこころの松散りて
 訪ねてみばや遅き桜木
 隠れ家はおほろなれとの月の夜に

春として使われていました。

  この世のことはかぎろひの中
春 「かぎろひ」は「かげろふ」のことで、連歌では「かげろふ」だけでは雑、「かげろふもゆる」で春になるとしていました(無言抄)。連歌データベースにあたると「仮の世はたたかけろふの儚きに」のような句は雑でした。世は5句物(只1、恋の世1、浮世・世間1、前世1、後世1)。この句あずかります。代案をどうぞ。

  やよひの空に公事のおもたき
春 天象 公事は朝廷の儀式・公務、荘園の雑役、訴訟・裁判で、いずれにせよ肩に重い荷。

by 連歌楽歳 (2018-03-02 21:08) 

梢風

ありがとうございます。「かぎろひ」は引っ込めたいと思います。

 里の暮らしにはるさめもよき

でどうでしょう。「淡雪」季別の万葉集以来の二転三転は面白いですね。

よろしくお願い致します。
by 梢風 (2018-03-02 22:09) 

連歌楽歳

  里の暮らしにはるさめもよき
春 雨は1句物。それとは別に1句物としての春雨がある。降物 里は居所体。

by 連歌楽歳 (2018-03-02 22:26) 

羽衣

宗匠さま 梢風さま 皆さま
出直す 予定が 四日の桃(の花)? と相なり申し訳ございません。
俗世の失せもの(ケータイ)を探し捲くって憔悴致して居りましたが
無事手元に戻り安堵安堵でございます。

宗匠さまには 早速のお導き有り難うございました。
咲き初めし と致したかったのですが 三句続けて し とするのも
憚られたもので(助動詞ばかりではございませんが) 窮余の策
でございました。恐縮に存じます。
夢梯さまの 枕にこめし思ひさまざま は誠に さまざまなこと思ひ出
すさくら でありまして 勿論 恋真っ只中 でもございましょうし 
枕草子の枕も多分にお含みの上と有り難く頂戴致しました。

梢風さま には早速のご治定 恐れ入りました。
あは雪(看聞日記紙背) かぎろひ等 の宗匠さまのご教示も
誠に有り難く拝読させて頂きました。
いつもながらの御礼旁 夜分に失礼申し上げます。



  
by 羽衣 (2018-03-04 01:51) 

朝姫

楽歳様、皆様

今日は春の嵐の予報のようですね。
昨日も南風が強い一日でした。

さて、梢風様の
 筆持つ庭にあは雪ぞふる
をいただきます。

桜襲の紅と淡雪の白の美しい対比、脳内一杯に広がりました。


 深山へと蝶の誘ふ道ゆかば
 深山より流れきにけり春の水
 深山路のまだ浅き春思ひつつ
 はるばると深山の春の便りきて   朝姫

ご指導どうぞ宜しくお願い申し上げます。

by 朝姫 (2018-03-05 09:30) 

連歌楽歳

 深山へと蝶の誘ふ道ゆかば    朝姫
春 虫類 山類体

 深山より流れきにけり春の水
春 山類体 水辺用 

 深山路のまだ浅き春思ひつつ
春 山類体

 はるばると深山の春の便りきて
春 山類体

 ◇

襲(かさね)たる花のくれなゐ綻ぶも
筆持つ庭にあは雪ぞふる
……深山……

桜の花がほころぶ頃に雪が降ることは時々あります。「かさねたる花のくれなゐ」を紅白の梅の花ととれば、これはよくある眺めです。「桜ちる木の下風はさむからで空にしられぬ雪ぞふりける」(紀貫之・拾遺集)をふまえて「あは雪」=「落花」ととれば、桜の開花→落花と順当な季節の進行です。「深山」の句で晩春から早春にもどる感じがしますが、これは季節が戻るのではなく、同じ時期でも町中と山里では気温の違いで風景が異なるためです。以上、辻褄あわせの説明でした。


by 連歌楽歳 (2018-03-05 12:10) 

朝姫

楽歳様

深山に囚われてしまった拙句について、合理的なご解説をありがとうございます。
ちょっと季戻りな感じになってしまうかな、とは思ったのですが、ここ数日暖かい空気に包まれていた関東にいて「そろそろ本格的な春!」と思っていたところ、東北にいる妹から「こちらは吹雪です」と聞いたせいか、都の庭から深山に心が飛んで行ってしまいました。。。
直した方が良ければ全面改訂致しますので、引き続きご指導宜しくお願い致します。

by 朝姫 (2018-03-05 23:14) 

連歌楽歳

朝姫さま

修正の必要はまったくございません。次の例をご覧ください。

 けふより後の花はたのまず     良基
 霞めども梢に風は猶吹きて     親長
 陰にはのこる山のしらゆき     暁阿
        (文和千句第1百韻)

花は暮春がさかり。霞は初春から暮春まで通して。のこる雪は初春。俳諧では問題になるケースですが、連歌ではさほど気にしなかったようです。連歌の季語で初・中・暮と3分類があるのは、発句で当季として使う際の例示です。平句では上記の例のように気楽なもんでした。

by 連歌楽歳 (2018-03-06 00:33) 

朝姫

楽歳様

例を挙げてくださってのご解説ありがとうございます。
連句では絶対アウト!ですよね。
でも、南北に長い日本では連歌のゆるさが有難いです。

路花様、お待たせ致しました。
宜しくお願い申し上げます。

by 朝姫 (2018-03-06 23:41) 

路花

宗匠さま  皆さま
今宵は春の嵐になるという予報が出ております。さっき見た紅梅が散ってしまうのは惜しいのですが・・・。
短編小説㈡りそうな素敵な句が続いておりますね。そんな流れを、私の拙句で堰き止めてしまったらどうしましょうと不安ですが、どうぞよろしく願いいたします。

朝姫さまの
  深山へと蝶の誘ふ道ゆかば
をいただきます。

拙次です。よろしくご指導を。
  ふと懐かしき鄙歌の節
  雛流しらし人の集ひて
  酔ひ痴れし日が思ひだされて
by 路花 (2018-03-08 15:31) 

連歌楽歳

  ふと懐かしき鄙歌の節
雑 述懐(懐旧) 鄙は国郡

  雛流しらし人の集ひて
春 雛祭り・雛流しが春の行事・季語として定着したのは江戸時代から。それ以前にもけがれ払いと子どもの人形あそびが合体して、ひな人形の原型のようなものは作られていた、と百科事典に。古典連歌の時代にはなかった言葉だが俳諧の季語である言葉は、俳諧の季を使うのがこの練習帖の決まりですので、春としました。人倫。 雛流しは水辺にはなりませんが、水の匂いはします。

  酔ひ痴れし日が思ひだされて
雑 述懐(懐旧)


この面、月がまだです。次の長句が場所として絶好と見えますが……。



by 連歌楽歳 (2018-03-08 20:23) 

千草

ごめんください。
絶好の場とのことでございましたが、あれこれ考え込んで遅くなりました。

それは
①路花さまの雛流しの句をいただいて、春4句として、これに春月を付け、春季5句にする。
②雛流しの句をいただいて、他季(秋?夏?冬?)の月を付け季移りする。
③路花さまの雑の付け(鄙歌の節または酔いしれし)どちらかをいただいて、他季の月を付ける。
④一方、先行する春句の中で、いづれか月がくっついても(雅とも遠い言葉づかいをお許しください)よかった御句がありはしなかったかと、出すぎたことを考え
⑤また、ここまでのご解説中で理解の至らない、または御質問申し上げたき2,3の事柄等を行きつ戻りかんがえがまとまりませんでした。

結果、堂々巡りはもう止めて、
分岐点いっぱいの道路標識から、
この道を選ぶと決め、
捌きに「間違いです」と言われたら、出直しということが
近道であろうということにいたしました。

⑤についてはあらためてお尋ね申し上げますが、一か所だけ念のため
付けの前にお尋ねいたします。
 
 深山へと蝶の誘ふ道ゆかば      朝姫

「ゆかば」は未然形で、まだ行っていないけれど行くとするならの意となりますが、已然形の「ゆけば」でなく「ゆかば」であることを一応確認させていただきたく存じます。
このような意識の流れを辿り、

路花さまの雑の付け
   ふと懐かしき鄙歌の節
こちらを頂戴いたします。

   襲(かさね)たる花のくれなゐ綻ぶも  羽衣
     筆持つ庭にあは雪ぞふる        梢風
   深山へと蝶の誘ふ道ゆかば      朝姫
     ふと懐かしき鄙歌の節        路花

付け 
  祭待つ社の空にかかる月   千草
  月の出を告ぐる一声不如帰
  泡盛の月もろともに干すならむ
  潮干珠潮満珠の月涼し

よろしくお願いいたします。


by 千草 (2018-03-11 21:55) 

連歌楽歳

  祭待つ社の空にかかる月   千草
夏 月 光物 夜分 神祇 天象

  月の出を告ぐる一声不如帰
夏 月 光物 夜分 ほととぎすは1句物、鳥類 数字。打越に「蝶」があります。虫と鳥は3句隔てる決まりです。ご検討下さい。

  泡盛の月もろともに干すならむ
夏 月 光物 夜分 泡盛は焼酎とともに現代俳句・連句の夏の季語。
焼酎暴飲の果て煙草をのみ黒こげになった男二人あり……焼酎は燃性のものなれば多く飲みたらん後は煙草を吸ふことは慎むこと」と『俳諧歳時記』(改造社、1933年)の参考欄にあり。

  潮干珠潮満珠の月涼し
夏 月 光物 夜分 涼しは2句物(『連歌新式』は夏1、その他1、『産衣』は夏1、秋1、月涼しは夏) 「しほひるたま・しほみつたま」は『日本書紀』伝説の神器の名なので「潮」の字があっても非水辺。

  ◇
「未然形+ば」と「已然形+ば」の使い分けは、千草さまのおっしゃる通りです。
『葉守千句』第2百韻に、

 みるまゝにあくがれゆかば月もうし
みるまゝにあくがれゆけば月もうし

の2通りの写本があるそうです。時の流れの中で使い分けがあいまいになってきたのでしょうか?

深山へと蝶の誘ふ道ゆかば
 ふと懐かしき鄙歌の節

はそれぞれが独立句なので、気分のつながりが読み取れれば、論理的なつながりは気にしなくてもいいと思います。



by 連歌楽歳 (2018-03-12 00:54) 

千草

ご吟味いただいてありがとうございます。
それでは、不如帰は帰ることといたします。
 
朝姫様の御句につきまして
ご説明をありがとうございました。
Eテレの子供番組に登場する「じゅうばこのすみつつきのすけ」のような
お訊ねを申しまして、朝姫様、お許しください。


by 千草 (2018-03-12 08:42) 

連歌楽歳

千草さま
ほととぎすの件、承知しました。
また、お気づきの「深山へと蝶の誘ふ道ゆかば」の未然形については、もっかリサーチ中です。結果がでましたら、今夜にでもお知らせいたします。

如月さま
付け句に影響を与えるような結果は出ませんの、現状のままでご思案ください。   
by 連歌楽歳 (2018-03-12 12:30) 

千草

恐れ入ります。
あのEテレの歌の主人公は「じゅうばこのすみつくくのすけ」が正しゅうございました。兄弟がおり、「じゅうばこのすみほじくるのすけ」と「じゅうばこのすみきにしないのすけ」なのですが。
前々便に書きました二、三の事柄はこの間にじゅんじゅんに解消しましたのであまり煩くないようもう一つ、コメントをお許しください。

羽衣様の御句のご吟味の欄に引用されました
 「世中の人の心は花ぞめのうつろひやすき色にぞありける」につきまして。
初花の風情嫋嫋として美しい御句と存じますが、ご引用の花ぞめ(花染め)は、露草の花の青い汁を摺りつけて染める技法で、変色しやすい特色があるようなので、少しわかりにくく感じたことでした。

如月様
知りたがり屋もほどほどにと反省しつつ 遅滞をお詫びいたします。
どうぞ、付けをよろしくお願い申し上げます。つつしみてかしこ。
by 千草 (2018-03-12 13:43) 

連歌楽歳

 「深山へと蝶の誘ふ道ゆかば」のように接続助詞「ば」が句の末尾にくる[ば留まり]のケースについて。

古典文庫の『千句連歌集』9巻に収められた2万を超える句のなかから「ば留まり」の句を探したところ、見つかったのは

 神風やいせの内外の春とへば  (周阿・紫野千句第3)
 野をも過山路になりて里とへば  (周阿・紫野千句第5)
 行くらす片山里に宿とへば     (救済・紫野千句第8)

の3例だけでした。いずれも「已然形+ば」(確定条件)の形で、それも「と(問・訪)へば」にかぎられています。「未然形+ば」(仮定条件)の例は皆無でした。室町時代の連歌師たちが「条件節だけを独立させ」て句をつくることに抵抗を感じていた可能性がうかがえます。『紫野千句』は俳諧句が目立つ集ですが、確定条件については大目に見ても、仮定条件だけの句がなかったのは、句が独り立ちするに足る結論部分が無く、それを他の句にゆだねるのを嫌ったのかもしれません。以上、想像です。

千草さまが立ち止まられたことに敬意を表します。

さて、「連歌練習帖」の看板を出していますので、この「深山へと蝶の誘ふ道ゆかば」を紫野千句の前例にならって「道行けば」とするかどうか、朝姫様・みなさまのご意見をうかがったうえ、この巻終了までに決めたいと思います。

次に、千草さまのご意見「世中の人の心は花ぞめのうつろひやすき色にぞありける」について「花ぞめ(花染め)は、露草の花の青い汁を摺りつけて染める技法で、変色しやすい特色があるようなので、少しわかりにくく感じたことでした」についてお答えします。

 ①いたはしや千と一つの夜を泣きて
 ②枕にこめし思ひさまざま
 ③襲(かさね)たる花のくれなゐ綻ぶも    
 ④筆持つ庭にあは雪ぞふる           

②のさまざまな思いがこもった枕から恋の行く先の危うさを感じ取り、花の襲の糸のほころびを引き出したものと感じて「世中の人の心は花ぞめのうつろひやすき色にぞありける」と古今和歌集の恋歌を蛇足に引用しました。③の気分は打越の①と通じるところがあるかもしれませんが①は号泣③は言外に漠然とした不安を示唆しているだけなので、打越の重罪は免れ得ると感じています。さて、作者・羽衣さまのご意見はいかがでしょうか?

④の句は「ほころぶ」を「衣の館はほころびにけり――年を経し糸の乱れの苦しさに」のほころびから、「花ほころぶ」に読み替えて蕉風さまが庭の淡雪をお出しになった。①から④まで、ウィットに満ちた付け合いになっています。


by 連歌楽歳 (2018-03-12 17:49) 

千草

「ば」につきまして
お調べいただきましてありがとうございました。

四句の流れもすばらしいと存じます。

ご引用の
  衣の館はほころびにけり     義家
年を経し糸の乱れの苦しさに    貞任

は、聞き覚えがあり、念のため再確認いたしました。

by 千草 (2018-03-12 20:28) 

連歌楽歳

思いついて『菟玖波集』(二条良基・救済共撰の初の連歌集)に収められた約2000句の中の「ば留まり」をさがしてみた。

① 行月も天つ空なる道なれば
② 空に行月の桂の里とへば     源頼氏
③ 高野山室の戸深き跡とへば
④ 相坂はたがゆるしける関なれば  行家
⑤ 古の契を今も思はねば
⑥ 別れても同じうき世の中なれば
⑦ 名社おしけれ忘れ果てなば    山階入道
⑧ とても又と絶果ぬる中なれば
⑨ 覚ぬるも後には結ぶ夢なれば   善阿
⑩ 是よりも北なる国の名をきけば  救済
⑪ 深山の庵に年のへぬれば     後宇陀院
⑫ 名こそおしけれ忘れはてなば   後深草院少将内侍
⑬ 我が年にならぶ齢の稀なれば
⑭ 此世に似たる御代のなければ
⑮ 天地の国つもわさ道しあれば(ママ)
⑯ 君が心のにごりなければ
⑰ 河舟の浅せも近く成ければ
⑱ 山地より堀求めたる草なれば   藤原為守
⑲ 飛鳥河定めなきよにたきつ身なれば

二条良基以後の連歌千句集2万数千句中3句に比べると、2千余句中19句は非常に多いといえる。この理由はおそらく、良基以前の連歌作者には和歌が専門で連歌は余技という人が多く、和歌の上の句と下の句を切り離しただけのような連歌の句づくりをしていたせいらしい。歌人が詠んだ連歌は句のまとまりに欠けて連歌師から歌連歌(うたれんが)と馬鹿にされ、連歌師の句はなだらかさに欠け、歌人はこれを連歌歌(れんがうた)とあざけった(山田孝雄『連歌入門』)。

さて、以上の19句中18句が「已然形+ば」の確定条件節の句形であり、「海ゆかば水漬く屍」の「海ゆかば」のような「未然形+ば」の仮定条件の使用は⑫だけだった。

以上のようなわけで、二条良基以前の連歌では確定条件節で句を仕立てることはとくに不自然ではなかったと考えられる。

       ◇

以上のリサーチ結果をご参考に、朝姫さま、「深山」句の修正をご思案ください。



by 連歌楽歳 (2018-03-13 23:15) 

如月

宗匠さま、皆さま

遅くなりまして大変恐縮に存じます。
愚図愚図しておりますうちに、今日あたり靖国の桜標準木も開花か、ということになっております。拙宅の枝垂れ桜は、木曜に開花しました。
春は忙しないことでございます。

さて、千草さまの個性的な御句

潮干珠潮満珠の月涼し

を頂戴いたしました。
暫し神話の世界に迷いこみ、愉しく遊ばせていただきました。
山幸彦様ではありませんが、なかなか戻ってこれませんでしたのは、ひとえに私の非力のせいでございます。

拙次

鵜戸の岩屋にやまぬ滴り
沖南風寄する鵜戸のきりきし
神輿もみ合ふ住之江の浦
神輿渡れる丹塗り反り橋
宵宮の灯に揺るる綿津見
泥絵ゆらして宵宮の灯の
船鉾に佇つ影のりりしく

大打越に深山がありまして、此処で海を詠んで宜しいのか迷うところです。
ご指導お願い申し上げます。

なお、「道ゆかば」「道ゆけば」のことですが、私個人の感覚を申しますと、海ゆかば の例のとおり、論理で縛らず漠とした広がりを感じさせてくれる未然形のままがよろしいように感じられます。
朝姫さま、いかがでございましょうか。

では、宗匠さま、
よろしくお願い申し上げます。
by 如月 (2018-03-17 10:09) 

連歌楽歳

 鵜戸の岩屋にやまぬ滴り
雑 岩屋は『連珠合璧集』の分類では居所で、4句前の「庭」と障る。一方、『連歌新式』では「岩屋」「関戸」などは「居所との打越を嫌う」。「潮干珠潮満珠」から引きだした「鵜戸の岩屋」は「鵜戸神社」を意味し、伝承から宗教的な構造物となり、神祇。
 草の庵なに露けしと思けんもらぬ岩屋も袖はぬれけり  行尊
 笠寺やもらぬ窟も春の雨   芭蕉
上記を「もらぬ洞」と言い換えると山類になる。ものは言いよう。

 沖南風寄する鵜戸のきりきし
夏 「南風(はえ)」は主として俳諧夏の季語。「沖南風」の採録は歳時記によってまちまち。 「きりきし」の岸は3句物(只1、名所1、彼岸1)。連歌では「はえ」という言葉は使わず、「南の風」という(『産衣』)。

唐の人、我妻を御門にとられて行時に、帯を形見にやりて云、南風吹ん時、我魂汝に通ふべし。
   夏のくる南の風や匂ふらん
   かたミの帯の短夜のそら  宗伊 
                     (『産衣』)

 神輿もみ合ふ住之江の浦
夏 神祇 名所(歌枕) 浦は水辺体 昔は住吉大社のすぐ前が浜辺だったので、神輿のみそぎは浜で行われた。いまは埋め立てで海まで距離ができた。海水を汲んできて禊をするそうだ。

 神輿渡れる丹塗り反り橋
夏 神祇 反り橋のような橋は水辺用 昔は住吉大社の反り橋を神輿が渡ったそうだ。橋の反りようは並大抵ではない。あぶない、あぶない。

 宵宮の灯に揺るる綿津見
夏 宵宮・宵祭は神祇、綿津見は海神・綿津見神社を意味し、神祇(多分、非水辺)。 夜分

 泥絵ゆらして宵宮の灯の
夏 神祇 夜分

 船鉾に佇つ影のりりしく
夏 船鉾は山車で非水辺 

   ◇
きらびやかな句が並んで、目がくらみそう。次当番の楽歳、句が継げず、ただただ瞑目・・・・・・

by 連歌楽歳 (2018-03-17 14:05) 

如月

宗匠さま、

早速のご指導、有難うございました。

「岩屋」は、今回は神社の言換えということで、庭と障らないと考えてよろしうございましょうか。
「滴り」は俳諧・俳句では夏の季語ですが、清水などと同様に連歌では雑なのですね。了解しました。

また南風は、連歌では「南の風」と記すとのこと。それでは

南のかぜ来鵜戸のきりきし

とさせていただくのは、どうでしょうか。

また船鉾の句のなかの「影」の語は、「姿」と直してよろしいでしょうか。

船鉾に佇つ姿りりしく

メールで訂正のお願いをさせていただいたのですが、コメント欄に記入しませんで、失礼いたしました。
では、お捌きよろしくお願い申し上げます。

季節にぴったりのタイトル写真。
清楚とは、こういう形をいうのでしょうね。
by 如月 (2018-03-17 15:58) 

如月

宗匠さま、皆さま

度々すみません。
船鉾の拙句ですが、神祇の句と解してよろしうございますね。(そのつもりで作ったものです。)
失礼ながら、念のために書かせていただきました。
よろしくお願い申し上げます。
by 如月 (2018-03-17 17:05) 

連歌楽歳

如月さま、みなさま

① 鵜戸の岩屋=鵜戸神社→神祇で、非居所。
② 「滴り」が俳諧の夏の季語とは知りませんでした。開発途上国の政治が専攻分野だったので、したたり=trickle downとしか頭が働きませんでした。連歌では清水だけでは雑→石清水も雑→岩屋の滴りも雑、と理解してよろしいかと思います。
③ 春の風=春風、秋の風=秋風と申しますので、南の風を「南風」と言い換えて、
    南風ふく鵜戸のきりきし
で、いかがでしょうか。
④ 影→姿と変えておきます。
⑤ 船鉾の句に「神祇」を入れ忘れました。祇園会(連歌では「かみのそのゑ」だそうです。『毛吹草』のころから出てきた季語で、使用例は手元の資料に(インターネットをふくめ)見当たりません)は八坂神社の祭礼で、神祇。船鉾は祭礼の山車の一つなので、神祇。



by 連歌楽歳 (2018-03-17 19:06) 

連歌楽歳

 泥絵ゆらして宵宮の灯の 如月

をいただいて、

●2折表1付け

 めくるめく眩さ去りて闇の底
 おどろおどろ陸奥のねぷたの浮かび出で
 かぜの神いかづちの神みぎひだり


 めくるめく眩さ去りて闇の底
雑 闇は非夜分

 おどろおどろ陸奥のねぷたの浮かび出で
秋 ねぷたは秋の行事 国郡 

 かぜの神いかづちの神みぎひだり
雑 風神・雷神は非神祇(ヴェーダに出てくるヴァーユとインドラ) 風は吹物 いかづちは雑(『産衣』)

by 連歌楽歳 (2018-03-18 20:14) 

如月

宗匠さま、

お世話になっております。治定、有難うございました。
また順序が前後してしまいましたが、新たなるご教示やご一直(沖南風[→]南の風[→]南風)も、ありがとうございました。

ところで、滴りで trincle down を思われたとは、傑作!
古くて新しいこの資本主義的手法は、実際には滴りというよりは精々がお湿り程度(さらに言えば、鰻を焼く煙だけを嗅がされるような?)をもたらすに過ぎないことは、企業が潤っても労働者の所得は増えない日本の現状が実証しているようですね。

連歌のテーマに戻りますと、風神・雷神は神祇ではないということですが、アニミズム的な八百万の神様の一つと思っていましたので驚きました。
起源は外国だとしても、日本化されていると考えることはできないのですか?

では、どういう分類名になるのでしょう?
連句では、キリスト教を始め外国の神さま関係は「宗教」という括りになっているようですが、現代の連歌でも同様と考えてよろしいのでしょうか。
おついでの時にご教示くださいませ。
よろしくお願い申し上げます。
by 如月 (2018-03-19 00:41) 

羽衣

宗匠さま 皆さま
愈々 桜も綻び始めましたが(つぼみが開くことも綻ぶと申しますそうで)
本日はまた冷たい雨となって居ります。
俗世の煩ひ(所謂 納税期)に感け 暫しブログ(3月12日夕)のお尋ね
逸し 大変失礼申し上げました。 お詫び申し上げます。
その後も何やら慌ただしく打ち過ぎ はや 折も(一折から二折へと) 
うつろいて居りましたが 言い訳がてら失礼申し上げます。

拙句  襲(かさね)たる花のくれなゐ綻ぶも    ですが 
基本的に出句すべて 景(場)の句となるよう心積り致したつもりです。
勿論 枕草子などの漠たるイメージですが 恋 又は 女性(にょしょう 或は男性) の姿と 受け取って頂いても構いません。
「かさね」 の表記 は少々悩みましたが この場面で 「重ね」の字は
無粋のように思えましたし、また前句の、枕 との兼ね合い(多分に
個人的感覚なので恐縮ですが)で襲(かさね)と表記させて頂きました。

兎に角、 枕にこめし思ひさまざま(夢梯さま) の素晴しい多重性を
拙花句にて さらに映像的?に感じて頂けましたら幸いです。
因みに 綻ぶ にも多重な意がございますのでマイナーな気分とのみ
思し召されませぬよう うちとけたり笑ったり咲いたりとブラス思考で 
宗匠さまに 襲=衣類 と分類して頂き 大変結構に存じました。
また、梢風さまの素晴しい御句が続き この辺り みやびな恋と
申せますでしょうか。有り難きことと御礼申し上げます。 
お尋ねの答えにはなっておりませんでしょうが取り急ぎの
お詫びと御礼まで失礼申し上げます。
どうぞ 皆さまも よき花の季節をご堪能遊ばされますよう~ 
    

 
by 羽衣 (2018-03-21 02:01) 

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