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電脳網千句第9  賦白何百韻 2折表  2019.2.1~ 

 kudara1.jpg

 

   戦慄きてあづま路くだる都びと       衣
     蛇(へみ)の出づるや於爾の現るゝや  梯
   岩かげに打ち捨てられし鈴ひとつ      香
     ひなの里みにかずら橋揺れ       姫
   山の音ふと止み髪のかぐはしき       草
     時雨の先に根の国の坂         月
   榾の火に語部もまたゆらぎけり       歳
     あやかしの子はあやかしとなる     風
   携へしふくべをみたす甘き酒        
     夢見心地のとろりとろりと       衣
   若草の薫るいのちに枕して         梯
     はや遠のきし雉子鳴く声          香
   逢ひがたき君の面影おぼろ月        姫
     佐保姫を描く筆の絵すがた       草    
    


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コメント 47

連歌楽歳

羽衣さま

「気づくのが遅れました。

  あくがれつ東路くだる宮こ人         羽衣
  をののきつ(戦慄きつ)あづま路くだる都びと

「あくがれつ」「をののきつ」の「つ」は完了の助動詞「つ」の終止形でしょうか。そうであれば、「東路」のつながりがぎこちなくなります。連体形は「つる」です。

「あくがれて」「おののきて」と接続助詞「て」を使ってみてはいかがでしょう。
by 連歌楽歳 (2019-05-01 01:02) 

羽衣

宗匠さま
早速のお導き恐れ入ります。有り難うございました。

「あくがれつ」「戦慄きつ」(漢字を当てる方がわかり易く結構に存じます。有り難うございました) の 「つ」 についての拙申し分 甚だ心もと
ございませんが
 憧れつつ下る  戦慄きながら下る  という意を込めたいと思い
「つ」は 完了の助動詞「つ」から派生?した 接続助詞「つ」 で
その用法② 二つの動作・作用が行われる時に その一方に付ける
と電子辞書には ございました。
何分にも 至りませんのでよろしくご吟味頂きますよう
令和早々お手数をおかけ致し恐縮に存じます。


by 羽衣 (2019-05-01 17:08) 

連歌楽歳

 羽衣さま

 あくがれつ東路くだる宮こ人
 戦慄きつあづま路くだる都びと

この「つ」の用法について、『広辞苑』は「二つの動作・作用が同時に行われる時に、従属的な方の動作・作用に付ける) …ながら。方丈記『苦しむ時は休め―、まめなれば使ふ』」と説明しています。『岩波古語辞典』や私が使っているの電子辞書(精選版日本国語大辞典)にはこのような用法は紹介されていません。この2つの辞書にのっている助詞「つ」は「天つ風」のような連体助詞だけです。動作の並行をしめす助詞は「つつ」だけ。古文の専門家にお尋ねするしかありませんね。それまでの間、広辞苑の説明を信じて、現行のままにしましょう。

by 連歌楽歳 (2019-05-01 19:24) 

羽衣

宗匠さま
早速に御妙案をありがとうございました。
当方も折あらば調べてみます。
(パソコンの調子悪しく失礼致します)
誠にまことに有り難うございました。

夢梯さま
よろしくお願い致します。
by 羽衣 (2019-05-01 23:46) 

連歌楽歳

羽衣さま

 あくがれつ東路くだる宮こ人
 戦慄きつあづま路くだる都びと

この「つ」の用法について、同僚だった埼玉大学名誉教授・山口仲美先生(平安文学・音韻論)にお尋ねしました。以下、その回答です。

    ◇
 お尋ねの件ですが、結論から言うと、付け句作者の意図通りにはとってもらえない可能性が高い気がします。
(1)「つ」は接続助詞になってはいますが、完了の助動詞「つ」から来たものですので、完了の意味を色濃く持っていることばです。
(2)広辞苑にある『方丈記』の例にあたってみましたが、『苦しむ時は休めつ、まめなれば使ふ』の例は「(身の方も、心の苦しみを知っているから、)苦しいときは休めるし、元気であれば使う」という文脈で使われています。
 用例の解釈に問題がありそうです。
 広辞苑だから、絶対ということはありません。だいたい、辞書の説明は、私たちのような人間が書いているのですから、執筆者の解釈が加わっています。広辞苑のこの稿の執筆者は、上記の方丈記の文例を「苦しいときは休めながら、元気であれば使う」と解釈したのだと思います。でも、ここは「対」にして述べているところなので、「従属的な方の動作・作用」には当たらない気がします。
(3)出来上がった句を素直に詠みますと、「憧れている(もしくは憧れた)、東路を下る都人を」などのもともとの完了の助動詞の意味にとれますね。接続助詞の「つ」ですと、「追いつ返しつ」「組んづほぐれつ」などのように、二つ並べて使うことが多いので、なかなか接続助詞にはとれないのですね。
 作者の方が一生懸命勉強して句を詠んでいらっしゃることが分かり、感激しています。
 よろしくお伝えください。
   ◇

昨夜メールでお尋ねしましたところ、今朝返事が届きました。昨年中ごろから全8巻の著作集を刊行中なので、相変わらず早朝に起きて仕事をなさっていらっしゃるようです。

ここの「つ」は、専門家の間で意見が異なる古文法のフロンティアの領域にある用法のようです。「連歌練習帖」の「練習」の主旨に従って、楽歳の一存で

 あくがれて東路くだる宮こ人
 戦慄きてあづま路くだる都びと

に変更し、付け合いをすすめるために、次の作者・夢梯さまに送ります。

ご意見・ご感想はいつでもこの通信欄にお寄せください。


by 連歌楽歳 (2019-05-02 11:34) 

羽衣

宗匠さま
この度は ご多用中を大変ご面倒をお掛け致しました。
その道の最高のご権威をも 御煩わせ申し上げ 恐縮の至りでございます。   まことに有り難く 心より深謝申し上げます。
何卒 よろしくお伝え頂きますようお願い申し上げます。(全八巻の著作集 ご刊行中とのこと 恐縮でございました。くれぐれもどうぞおよろしく)

ご承知のように 特に勉強してとかで全くなく 単なる思い付きなのですが 何故か連句の場合でも  この「つ」(接続助詞)が 私的には自然に思いつくのです。でも このような便利な用法?が古歌の用例にも目にすることがないのは 不思議で(多分 「つ」のみですと 助動詞「つ」の言い切り と即断されるのが人情でしょうから) 一度自分なりにも調査致したいとは 念じておりますが 多分 詮無きことでございましょう。
此度のまことに 一通りでないご丁寧な御導きに頭がさがります。
ご教示 並びにご変更 有り難うございました。
しばらく ごゆるりとお過ごし遊ばされますよう~
埼玉大学名誉教授 山口仲美先生にも 大切なお時間を頂戴致し
どうぞおよろしくお伝え頂きますよう、深謝深謝でございます。

 
 
のみ解釈するからだと存じますが) 一度 
by 羽衣 (2019-05-04 15:24) 

羽衣

最後の一行は 消し忘れです。
気づかず失礼申し上げました。

先程来より 元気な初雷でしょうか?

皆さま どうぞよい連休後半を お過ごし遊ばされますよう
by 羽衣 (2019-05-04 15:33) 

連歌楽歳

みなさま

連休が終わりましたので、楽歳は8日から撮影旅行に出かけます。帰宅は17日の予定。しばらくの間、練習帖が止まります。おまたせして申し訳ないです。

楽歳
by 連歌楽歳 (2019-05-07 16:18) 

連歌楽歳

 「早三ヶ月過ぎ、何とか落ち着きましたので又、復帰させて頂き度く存じます」と夢梯さまから留守中にお手紙を頂いていました。

2折表1治定
 戦慄きてあづま路くだる都びと   羽衣

2折2付
 露の命の今日や明日やと      夢梯
 明日(あした)の淵瀬はかりがたくも
 遥けき雲に誘はれつゝ
 あきらめ難き人の世の夢(望みいくつか)
 蛇(へみ)の出づるや於爾の現るゝや
 宇津谷峠ひるも小暗く

            ◇
 露の命の今日や明日やと    夢梯
雑 述懐 命は2句物(只1、虫の命など1、露の命は後者に該当) 今日は2句物 露の命の「露」は無季・非降物

 明日(あした)の淵瀬はかりがたくも
雑 述懐 「世の中は何か常なるあすかがは昨日ののふちぞ今日は瀬になる」(古今集)が出所のようですが、この句の「淵瀬」は非水辺と考えるのが適当でしょう。

 遥けき雲に誘はれつゝ
雑 聳物(雲) 

 あきらめ難き人の世の夢(望みいくつか)
雑 述懐 世は5句物(只1、浮世・世の中の間に1、恋の世1、前世1、後世1) 人は人倫 ここの夢は非夜分

 蛇(へみ)の出づるや於爾の現るゝや
雑 蛇は連歌の世界では虫類なので(ながむし)、4句前の「まつむし」と障ることになります。しかし、「松虫と蛇は5句隔てる」という杓子定規は現代では、少々ばかばかしいので無視しましょう。 於爾(鬼)は1句物にしてその分類は不詳

 宇津谷峠ひるも小暗く
雑 山類(宇津谷峠は東海道の難所) 昼は時分 連歌新式は、時分と時分は打越を嫌う(夕暮と曙)としていますが、時分と夜分についてはノーコメント。


by 連歌楽歳 (2019-05-18 18:33) 

遊香

楽歳さま
長旅の後、ご体調は戻られましたでしょうか。

夢梯様の
蛇(へみ)の出づるや於爾の現るゝや
いただきまして、付

ふと聞きし笛のしらべの甲斐甲斐し(かひがひし) 
岩かげに打ち捨てられし鈴ひとつ
吊り橋を渡りおおせし夕間暮れ
いろり端語らひ草の尽きしなし

よろしくお願いいたします。
遊香
by 遊香 (2019-05-22 10:38) 

連歌楽歳

 ふと聞きし笛のしらべの甲斐甲斐し(かひがひし)
雑 「甲斐」は字音。「かひがひし」に「甲斐甲斐し」をあてるようになったのは中世以降、と辞書にあるので、ひらがなの方にしておきましょう。
 
 岩かげに打ち捨てられし鈴ひとつ
雑 岩は地儀 蛇に飲みこまれたか、鬼にさらわれたかした娘巡礼の鈴なのでしょうか。

 吊り橋を渡りおおせし夕間暮れ
雑 橋は5句物(只1、御階1、梯1、名所1、浮橋1) この橋は水辺用 時分(夕)

 いろり端語らひ草の尽きしなし
雑 ゐろりは俳諧冬の季語 「囲炉裏」は漢音ですが、辞書には「当て字」とあり、ひらがな書きすれば問題はなさそうです。居所体

    ◇
短時間で長距離の旅は回復にてまどる齢になりました。まだ、体が宙に浮いているような感じが残っています。



by 連歌楽歳 (2019-05-22 14:02) 

朝姫

楽歳様、皆様

急にやってきた連日の猛暑、体がついていくのに一杯一杯ですね。
今年の夏はどうなるのでしょうか。。。

さて、付けにお時間いただいてしまい申し訳ありませんでした。
何を勘違いしたのか、暫く長句をうんうんと考えておりました。
やっと気付いて仕切り直し、また短句をうんうんと考え。。。
大変失礼いたしました。

遊香様の

 岩かげに打ち捨てられし鈴ひとつ

をいただきました。



 ほとけの縁むすぶ指に     朝姫
 滝壺へ身をひるがへす影
 あまねく青く染めし滝つ瀬
 ひなの里みにかずら橋揺れ

遊香様の美しい夕間暮れの吊り橋の句には及びませんが、
今月初めに祖谷のかずら橋を渡ってきたので、
吊り橋の句を一句混ぜました。

お待たせしましたが、ご指導どうぞ宜しくお願い申しげます。

by 朝姫 (2019-05-27 23:11) 

連歌楽歳

 ほとけの縁むすぶ指に     朝姫
雑 釈教 人体

 滝壺へ身をひるがへす影
雑 滝壺は山類体・水辺体、 人体 「滝」について『連歌新式』は詳しく書いていません。『無言抄』では、滝は5句物(只1、名所1、滝津瀬1、花の滝1、涙の滝1)。滝自体は山類用・水辺体。次に出てくる「滝つ瀬」は水辺で非山類。

 あまねく青く染めし滝つ瀬
雑 水辺体

 ひなの里みにかずら橋揺れ
雑 居所(里) 橋は5句物(只1、御階1、梯1、名所1、浮橋1)鄙びた里近くのかずら橋なので、この橋は名所の橋。谷が山類なので、橋は山類用の可能性があり、また『連珠合璧集』は橋を水辺に指定。ここのかずら橋は山類用・水辺用・名所と考えられます。なお、かずらは「かづら」が古式ですが、祖谷渓では「かずら橋」と表記。


by 連歌楽歳 (2019-05-28 12:21) 

千草

ごめんください。
しばらくこちらのサイトに行き着けず
途方にくれておりましたが楽歳様のメールの入り口から
辿りついたようです。
付けを案じましてから再度お伺いいたします。
by 千草 (2019-05-28 17:47) 

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消えないうちに

    ひなの里みにかずら橋揺れ 朝姫様

付け
   白妙の御衣を縫へば物思ひ    千草

   きぬずれのさやさや笹を分くるらん

静けさの底ゆく谷の駒に水

   山の音ふと止み髪のかぐはしき  
 
by お名前(必須) (2019-05-28 18:41) 

連歌楽歳

 白妙の御衣を縫へば物思ひ    千草
雑 衣類 「御衣」の読み方は辞書によると「ぎょい、みぞ(そ)、おんぞ(おほんぞ)、みけし」。お召し物。▽天皇・貴人の衣服の尊敬語。字音の「ぎょい」をのぞいて、お好きな読みを。3音のものがよろしいかと。

  きぬずれのさやさや笹を分くるらん
雑 衣類 草類

  静けさの底ゆく谷の駒に水
雑 谷は山類体 駒(馬)は1句物 獣類 水辺用

  山の音ふと止み髪のかぐはしき
雑 山類体 人体   

by 連歌楽歳 (2019-05-28 20:34) 

如月

宗匠さま、ご連衆の皆さま

長らくのご無沙汰、申し訳ございませんでした。平におゆるしをお願い申し上げます。

千草さまのお句

山の音ふと止み髪のかぐはしき

を頂戴させていただきます。
拙次

時雨の先に根の国の坂
狐火招く草はらの径
白息うちてとどろくばかり
嫗神さまの笑ひ聴こゆる
噴井の洞にしばし休めば
雲の晴間に虹の根の見え

以上でございます。
ご指導よろしくお願い申し上げます。
by 如月 (2019-06-12 10:52) 

連歌楽歳

 時雨の先に根の国の坂
冬 降物(時雨は2句物、秋1、冬1) 根の国は黄泉の国のことで、国郡には当たらず、哀傷。坂は山類体。打越の「かずら橋」を山類と感じても、分類は山類用。前句の山の音の山は山類体。山類用→山類体→山類体、となって打越を避けることができる。また、「根の国の坂」を「黄泉比良坂」の言い換えととれば、地名ととれなくもない。

 狐火招く草はらの径
冬 狐火は俳諧冬の季語。連歌では使用例は少なく、
  
  魂祀るあたりの原の古塚に
  灯すに似たる狐火の影
  疑ひは何の上にも在りてまし

の1例が「連歌データベース」にあるだけ(15世紀末の作品)。その時代、狐火は無季。とはいえ、狐火の背後には「狐火や髑髏に雨のたまる夜に」(蕪村)や強力な「王子の狐火」の江戸伝承が控えているので、その引力によって冬季とせざるをえない。

 白息うちてとどろくばかり
冬 「白息」は「息白し」の名詞形であろう。冬の北海道の馬はこんな感じであろう。

 嫗神さまの笑ひ聴こゆる
雑 「おうながみ」「おみながみ」。いずれにしても神とあれば神祇か。

 噴井の洞にしばし休めば
夏 水辺体(噴井=ふきゐは俳諧夏の季語) 打越の「かずら橋」は下に谷川の流れがあれば水辺用、なければ非水辺。水辺打越なしの方で手を打ちましょう。洞は山類体
 
 雲の晴間に虹の根の見え
夏 「虹の根」とは虹の根元のことなのでしょう。虹は俳諧夏の季語。『連歌新式』に記載なし。『産衣』では、1句物・非聳物・非生類。季については言及なし。雲は聳物。


by 連歌楽歳 (2019-06-12 18:48) 

如月

宗匠さま

早速のご検分、有難うございました。
山類につきまして、お目こぼしをいただきましたようで、恐縮に存じます。

ところで「嫗神」ですが、「姥神」と表記書したほうがよかったでしょうか?
「うばがみ」と読んでいただくつもりで書きました。
ご指導よろしくお願い申し上げます。
by 如月 (2019-06-12 21:04) 

連歌楽歳

「媼」「嫗」「姥」はみな老女のことですが、ルビなしで「うば」と読ませるのであれば、姥捨山でなじみのある「姥」が無難かと思います。付け句の漢字をかえておきます。
by 連歌楽歳 (2019-06-13 02:26) 

連歌楽歳

●2折表6治定
 時雨の先に根の国の坂  如月

この選択には、多少の説明/弁明が必要かもしれません。2折表は、「戦慄て」(第1句)→「蛇・於爾」(第2句)→「捨てられし鈴」(第3句)→「ひなの里のかずら橋」(第4句)→「山の音」(第5句)と、不安を誘う、写真でいえばモノクロ/陰画風の情景が続きました。ここでさらに、「根の国の坂」を入れると、モノトーンの念押しになるという心配がありました。

しかし、

 山の音ふと止み髪のかぐはしき 千草
 時雨の先に根の国の坂     如月

の組み合わせがつくりだす誘惑には抗えませんでした。「山の音」はひとかたまりの言葉としては手持ちの『広辞苑』(第5版)にも記載がなく、『精選版日本国語大辞典』には川端康成の小説の題名とあるだけです。山の音とかぐわしい髪の組み合わせは、自宅近くの山の音を自分の死期を告げる音ではないかと怯える鎌倉住まいの初老の男性が息子の妻に寄せる思いテーマにした川端の『山の音』を本説とする句としてつくられたものでしょう。その小説の中で、川端は初老の主人公の思いを「老いが恋忘れんとすればしぐれかな」と蕪村の句に託しています。前句を受けて、さらに蕪村句をふまえて、「時雨の先に根の国の坂」。なんとも絶妙な付け合いです。

古典連歌はどちらかというと、低い調子でさびしい心情・風景を詠むことが多く

 老い果てば無きが如くと思ふ身に  宗祇
 有て命の何をまつらん       専順
 ひまもなき心の程はしる袖に    紹永
 ひとり枕にあかす夜な夜な     慶俊
 虫の音や恨むる色をさそふらん   能通
 常より秋のつらき故郷       与阿
(寛正7年心敬等何人百韻 3裏11から名残裏2)


こうした単調さにも意外な味わいがあります。以上、釈明。

さて、前置きが長くなりました。

●2折表7付け
 冬空に煌めく星の物語
 榾の火に語部もまた揺らぎけり
 陽がさせば落葉の道の耀きて
 舞へよ舞へ木の葉散り敷く里神楽

    ◇

 冬空に煌めく星の物語
冬 天象(空) 光物・夜分(星) 

 榾の火に語部もまた揺らぎけり
冬 榾は燃料なので非木類 人倫 

 陽がさせば落葉の道の耀きて
冬 光物 木類 

 舞へよ舞へ木の葉散り敷く里神楽
冬 神祇 里神楽は非居所 木類 


by 連歌楽歳 (2019-06-14 00:51) 

連歌楽歳

訂正 
「里」「揺」は同字なので、ひらがなに改めました。

by 連歌楽歳 (2019-06-14 01:16) 

如月

宗匠さま

治定有難うございました。
なんですか、過分のお言葉を頂戴してしまいましたようで、嬉しいやら面映ゆいやら でございます。
暫く前から、蛇、鬼、捨てられた鈴、かづら橋……と、何やらオドロオドロしい世界が展開していますので私も躊躇ったのですが、「山の音」のお句を頂戴しますと、川端の小説の魔力のせいか、矢張り「死の影」のようなものを感じざるを得ません。ですので、他の付句も、同様に異界めいた内容になってしまいました。
それがよくないというご指導を受けるかと、おそれておりましたが、寂漠たるモノトーンな世界の連続も前例が少なくないというお言葉に、安堵しました次第です。

『山の音』の細部は忘れてしまっておりまして、作中に蕪村の時雨の句が引用されていたことは、思い出しもしませんでした。
正直に申しまして、時雨をもってきたのは全くの偶然でして、計算したわけではありません。自分でも驚いております。

宗匠さまのコメントで、たいへん勉強させていただきました。有難うございました。
by 如月 (2019-06-14 15:12) 

千草

どういうわけかなかなかコメントの書き込みができなくて
いまさらのことではございますが
拙句 山の音は恋句のつもりでございました。
前句前前句がひえつきぶしのようでございましたので。

六日のあやめでしたか、
いまごろすみません。
お聞き捨てになさってください。
一応。
by 千草 (2019-06-15 20:36) 

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 榾の火に語部もまたゆらぎけり  楽歳

    付

  風動き出すしののめの城     梢風
  くたかけの声かしましきには    〃
  閼伽水を汲む時の近づく      〃
  あやかしの子はあやかしとなる   〃
  湯気噴く鍋に笑ひこぼるる     〃

○朝風呂の壁にプリントと貼り付けて付句を案ずるのは朝の楽しみの一つです。いわずもがなのことですが。

楽歳さまよろしくお捌き下さい。

by お名前(必須) (2019-06-18 08:35) 

連歌楽歳

 風動き出すしののめの城     梢風
雑 吹物 時分(明け方) 

 くたかけの声かしましきには 
雑 鳥類 には(庭)は居所用、2句物(只1、庭訓=にはのをしへ)。4句前に「里み(回)」があります。には(二羽)とすれば居所5句の難を逃れうる――これは冗談、言い換えをご検討ください。

 閼伽水を汲む時の近づく
雑 釈教 水辺用 閼伽結ぶは夜分
      
 あやかしの子はあやかしとなる
雑 あやかしは①海の妖怪②妖怪一般③愚か者。解釈によって人倫とも非人倫とも。子もそれに準じる。前句に語部=人倫。於爾(鬼)は5句を隔てているので、妖怪と妖怪の子ととれる。

 湯気噴く鍋に笑ひこぼるる 
雑 

by 連歌楽歳 (2019-06-18 21:43) 

梢風

お返事遅くなりました。失礼しました。「庭」のようなものでも引っかかってきますね。張り巡らした蜘蛛の囲のような鋭敏な関係性、刺激的です。

 くたかけの声かしましきには→くたかけの声かしましくなる

でどうでしょうか。よろしくお願い致します。
by 梢風 (2019-06-20 08:51) 

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雀羅 さま
了解です。
楽歳
by お名前(必須) (2019-06-20 22:31) 

蘭舎

楽歳宗匠、みなさま
梅雨最中、しとしとと雨が降っております。
たいへんお待たせいたし、申し訳ございません。

梢風さまのお句、どれをいただくか、もたもたとして
おりました。
いただきましたのは、
 あやかしの子はあやかしとなる

数句前のおどろおどろしい於爾にもかよう「あやかし」の
親子ですが、こちらは、なにか、俳(ハイ)で乙な気分も
あって、人間臭さもあってと、勝手に解釈しました。

付け
携へし徳利をみたす甘き酒   蘭舎
ひたぶるに都の空に憧れて
くたかけの声たかくなるあさぼらけ
網代木のやがて晴れゆくあさぼらけ
網代木に波のいさよふあさぼらけ
はしなくも笑まひし色のやごとなく

水辺のこと等も気になりますが、提出いたします。
なにとぞよろしくご吟味くださいませ。
by 蘭舎 (2019-06-24 08:44) 

連歌楽歳

 携へし徳利をみたす甘き酒   蘭舎
雑 「徳利」は字音につき「ふくべ」でいかかでしょうか。 飲食

 ひたぶるに都の空に憧れて
雑 都は国郡 空は天象

 くたかけの声たかくなるあさぼらけ
雑 鳥類 時分(朝) 

 網代木のやがて晴れゆくあさぼらけ
冬 水辺用 時分(朝) 5句前に「かずら橋」があるが、この橋は水の橋か、陸の橋か、あいまいなので水辺5句の決まりの圏外。
6・7句が冬なので網代木と別のもをお出し下さい。


 網代木に波のいさよふあさぼらけ
冬 水辺用 時分(朝) 前の句と同じで、網代木とば別のものを。

 はしなくも笑まひし色のやごとなく
雑 「しのぶれど色に出でにけり」が表情であるように、「笑まひし色」は笑顔のこと。「色」では人体にならない

by 連歌楽歳 (2019-06-24 21:13) 

連歌楽歳

皆さまにお願い

楽歳のメインのPCが壊れてしまいました。寿命です。
新品が来るまであと10日ほど。ただ今応急のノートパソコンでしのいでいます。

連歌練習帖のみなさまのメールアドレスが消えてしまいました。
楽歳あてに空メールを送ってくださいませんか。
アドレスを作り直します。
by 連歌楽歳 (2019-06-24 21:42) 

蘭舎

楽歳さま

早速にご吟味くださり、感謝いたします。
「徳利」→「ひさご」
  ご一直ありがとうございます。
網代木のやがて晴れゆくあさぼらけ
 網代木を「葦垣」としてもOKであれば、そのように。
 障りがあれば、ばっさりとお捨てくださいませ。

網代木に波のいさよふあさぼらけ
 こちらは、取り下げます。

お手数をおかけいたします。  草々 蘭舎拝

by 蘭舎 (2019-06-25 07:30) 

連歌楽歳

代案「葦垣」をいただいましたが、これはれっきとした「居所」であり、第4句の「里」と障ります。ぎりぎりの4句去りですが、あきらめましょう。
by 連歌楽歳 (2019-06-25 10:31) 

蘭舎

楽歳さま

たびたび恐れ入ります。
「葦垣」居所、承知いたしました。

それから、徳利ですが、せっかくの「ふくべ」をなぜか「ひさご」としてしまいました。

携へしふくべをみたす甘き酒

でお願いいたします。お次の羽衣さまもなにとぞよろしく
お願いいたします。  
蒸し暑い一日、みなさまもお大切に。 草々 蘭舎



by 蘭舎 (2019-06-25 12:51) 

羽衣

宗匠さま 皆さま
本日は久々の梅雨の晴れ間でしたでしょうか?はや確たる記憶も
失せて居りますが 風はなかなかの薫風の様でございました。
青葉 紫陽花 擬宝珠 百合 ザクロ等 色とりどりの花の所為で
しょうか? 全く頼りなきまま 蘭舎さま御句

     携へしふくべをみたす甘き酒    頂きます

          付け

       夢の世ばかりかなしきはなし
       浮かれ烏を見遣るくたかけ
       寝入りばな(端)をば突くくたかけ
       夢見心地のとろりとろりと

いつもながら そそかしく案じてみましたが 「ふくべ」 に季語が
ございましたら 付け直しいたします。
何卒お導きの程 よろしくお願い致します。
      
             
 
 



by 羽衣 (2019-06-26 00:52) 

連歌楽歳

 夢の世ばかりかなしきはなし
雑 述懐 世は5句物(只1、浮世、世の中の間に1、恋の世1、前世1、後世1) この夢は非夜分。 たいていのことは「やがて悲しき鵜舟哉」

 浮かれ烏を見遣るくたかけ
雑 鳥類 浮かれ烏は月夜の烏で、夜分。 月給トリが放蕩三昧の朝帰りの図でもあります。

 寝入りばな(端)をば突くくたかけ
雑 夜分 鳥類 英語にhenpecked――めんどりにつつかれておんどり時をうたう。

 夢見心地のとろりとろりと
雑 この夢も非夜分でしょうね

   ◇
酒が出ると俳諧心が刺激されるようですね。

「ふくべ」の使用例は「連歌データベース」に見当たりません。もっぱら俳諧の季語。「ふくべ」の花は夏の季語、実は秋の季語。器としてのふくべには季はないと考えるのが普通(カンピョウはユウガオから作るが無季、垢すりのヘチマも無季)。「瓢箪の大きさ五石ばかり也 越人」(曠野・鳫がねの巻)も無季が定説。とはいえ、季を感じたければご自由に。

by 連歌楽歳 (2019-06-26 13:28) 

羽衣

宗匠さま
早速のご吟味と 軽妙洒脱なご解釈賜り 恐れ入ります。
また、容器としての「ふくべ」のご教示 有り難く存じました。
昨今 地球と生態系を蝕むペットボトル等 何とかなりませんかしら 
最早 かの芭蕉さん時代のエコ社会には戻れない人類の現実です。
トップの水飲み場の御写真(シチリア?) 動物と人にもよさそうです~
四角い白い容器に何が浸されているのか ちょっと恐い気が致します。
物語のあるワンカット いつも有り難うございます。

では夢梯さま よろしくお願い致します。
沖縄では 大荒れのようです。お見舞い申し上げます。
皆さまも 天候不順の折柄 何卒お大事に遊ばされますよう
by 羽衣 (2019-06-26 16:58) 

連歌楽歳

夢梯さまから次のご連絡を頂きました。

●2折表10治定
 夢見心地のとろりとろりと   羽衣
●2折表11付
 若草の薫るいのちに枕して    夢梯
 かぎろひの野ゆき山ゆき安らけく
 愁ひなきひと日ひと日を過さむと
 旅寝こそ吾がいのちなれ明日もまた
 草枕いよゝかはゆき小さ花
 あさぼらけ囀りの野に佇ちつくし

   ◇
 若草の薫るいのちに枕して   夢梯
春 旅 草類 いのち(命)は2句もの(只1、虫の命など1) 

 かぎろひの野ゆき山ゆき安らけく
春 かぎろひ(陽炎)は「立つ」と結んで連歌の春季、俳諧ではそのままで春季。かぎろには、日の出のころの空の赤らむ様子もいう。こちらは無季。ここでは春の季語と了解。

 愁ひなきひと日ひと日を過さむと
雑 日次の日。

 旅寝こそ吾がいのちなれ明日もまた
雑 旅 いのちは2句もの。

 草枕いよゝかはゆき小さ花
雑 「いささ花」は草花を暗示、非正花。 草類、旅

 あさぼらけ囀りの野に佇ちつくし
春 「あさぼらけ」は秋冬と結びつきやすく、「あさぼらけ有明の月と見るまでに吉野の里に降れる白雪」。「春はあけぼの」。とはいえ「(鳥の)囀り」は至宝抄のころから春の季語。野は地儀


by 連歌楽歳 (2019-07-02 22:10) 

遊香

楽歳さま
そろそろ新しいパソコンをセットアップしておられる頃でしょうか。私は1年前に買い換えたときその作業に丸一週間かかりました。お疲れの出ませんように。

さて、夢梯様の
若草の薫るいのちに枕して
いただきまして、付

かろき翼や春風に乗る   遊香
拾ひし羽を揺らすやわ東風
歩むつがひに柔らかき風
巣を去りかねて雉子ほろほろ
はや遠のきし雉子の鳴き声

よろしくお願いいたします。
遊香
by 遊香 (2019-07-06 21:20) 

連歌楽歳

 かろき翼や春風に乗る     遊香
春 吹物(春風は2句物、春風1、春の風1) 鳥の翼かグライダーの翼か、不明につき用語分類は中止

 拾ひし羽を揺らすやわ東風
春 吹物(「やは東風」は俳諧の季語。連歌では使用例はなくただ「こち」とのみ。羽は鳥の羽か、蝶の羽か。

 歩むつがひに柔らかき風
春 「風光る・風やはらか」俳諧春の季語。連歌の時代にはなかった言い回し。連歌ではさしずめ「風のあたたか」。

 巣を去りかねて雉子ほろほろ
春 鳥類

 はや遠のきし雉子の鳴き声
春 鳥類 巣をさりかねる雉子は「きぎす」、遠のきし雉子は「きじ」。「きぎす」に読みをそろえて、「はや遠のきし雉子鳴く声」あたりでどうでしょうか。

  ◇
新しいPCが届き、1日がかりでソフトウェアとこれまでのデータを入れました。そのよく朝、PCがストライキを起こして、電源をスイッチを押してもスタートしません。とほほ……ですよ。メーカーが新しい製品と交換してくれますが、届くまでにさらに数週間かかります。もっか、旅行用のノートPCで作業しています。



by 連歌楽歳 (2019-07-06 23:00) 

遊香

新品のPC、当日は異常なく翌日にストライキとは、がっくりが倍増ですね。製品の個体の不具合だったんでしょうか。私だったら、PC近辺のお祓い、お清めにすがるかもしれません(笑)。次に届く機械は、性格のよいまっとうなものでありますよう…。

さて、雉子は「きぎす」のほうがよいですね。「雉子鳴く声」に変更をお願いします。
遊香

by 遊香 (2019-07-07 10:07) 

朝姫

楽歳様、皆様

涼しい、というより肌寒い日が続いています。
ちょっと夏が恋しくなってきました。
楽歳様の新しいPCはあまりにも儚い命だったご様子。
またセットアップするのも難儀ですね。
次は働き者のいい子でありますように。

さて、遊香様の
 はや遠のきし雉子鳴く声
をいただきました。


知る人に逢ふて帰ればおぼろ月  朝姫
逢ひがたき君の姿よおぼろ月
訪ふ人の絶えて庵の春の月
おぼろ月夜の匂ひの薄く濃く

宜しくお願い致します。

朝姫

by 朝姫 (2019-07-12 15:52) 

連歌楽歳

 知る人に逢ふて帰ればおぼろ月  朝姫
春 月 光物 夜分 人倫

 逢ひがたき君の姿よおぼろ月
春 月 光物 夜分 人倫

 訪ふ人の絶えて庵の春の月
春 月 光物 夜分 人倫 居所

 おぼろ月夜の匂ひの薄く濃く
春 月 光物 夜分 「おぼろ月夜」と続くのではなくて、「おぼろ月/夜の匂ひの」と切れるのでしょう。「大空は梅のにほひに霞みつつくもりもはてぬ春の夜の月」(藤原定家・新古今)。「夜の梅」は虎屋でしたね。


by 連歌楽歳 (2019-07-12 20:03) 

千草

楽歳様
当方のパソコンも快調なうちに取り急ぎ、お出しいたします。

この面に
すでにかぐわし、薫るがありますので
おぼろ月夜の匂ひの薄く濃く の朧月夜尚侍の情緒纏綿に心残しつつ
すみません。 

   逢ひがたき君の姿よおぼろ月  朝姫様
    
こちらをいただきます。 

付け
    佐保姫を描く筆の絵すがた     千草
    雪解の川に思ひ隔つる
    雛あそびのかくもをさなく
    春の嵐のところあらはし
    かはらぬ恋の立ちかへる春

よろしくお願いします。    
by 千草 (2019-07-13 10:24) 

連歌楽歳

千草さま。「薫」と「匂」の打越についてコメントをありがとうございます。『連歌新式』は触れていませんが、『無言抄』には匂と香は面を嫌うとありました。

      ◇

 佐保姫を描く筆の絵すがた     千草
春 佐保姫は「春」と「春の女神」の、言ってみれば抽象と具象を兼ね備えています。佐保姫=春の場合、「佐保姫を描く筆の絵すがた」は春を題材に絵筆をとっている画家の肖像画ととれます。佐保姫=春の女神の場合は、佐保姫を描いている画家の筆が活写するキャンバスの中の春の女神の姿とも、佐保姫を描いている画家を描いた肖像画ともとれます(フェルメールの『画家のアトリエ』の構図)。前句「逢ひがたき君の姿よおぼろ月」と対にして考えていると、やがて夜になっても眠れなくなりそうです。

 雪解の川に思ひ隔つる
春 恋 雪で降物 水辺体 雪解(ゆきげ)の解(げ)は呉音。「雪消」と『岩波古語辞典』にあり。「雪げ」の形で古典連歌に使用例が見えます。

 雛あそびのかくもをさなく
春    

 春の嵐のところあらはし
春 恋 「ところあらはし」は平安時代の結婚披露宴。嵐は吹物

 かはらぬ恋の立ちかへる春
春 恋 


by 連歌楽歳 (2019-07-13 15:06) 

連歌楽歳

千草さま。「薫」と「匂」の打越についてコメントをありがとうございます。『連歌新式』は触れていませんが、『無言抄』には匂と香は面を嫌うとありました。


 佐保姫を描く筆の絵すがた     千草
春 佐保姫は「春」と「春の女神」の、言ってみれば抽象と具象を兼ね備えています。佐保姫=春の場合、「佐保姫を描く筆の絵すがた」は春を題材に絵筆をとっている画家の肖像画ととれます。佐保姫=春の女神の場合は、佐保姫を描いている画家の筆が活写するキャンバスの中の春の女神の姿とも、佐保姫を描いている画家を描いた肖像画ともとれます(フェルメールの『画家のアトリエ』の構図)。前句「逢ひがたき君の姿よおぼろ月」と対にして考えていると、やがて夜になっても眠れなくなりそうです。

 雪解の川に思ひ隔つる
春 恋 雪で降物 水辺体 雪解(ゆきげ)の解(げ)は呉音。「雪消」と『岩波古語辞典』にあり。「雪げ」の形で古典連歌に使用例が見えます。

 雛あそびのかくもをさなく
春    

 春の嵐のところあらはし
春 恋 「ところあらはし」は平安時代の結婚披露宴。嵐は吹物

 かはらぬ恋の立ちかへる春
春 恋 


by 連歌楽歳 (2019-07-13 15:10) 

連歌楽歳

「薫る」「香る」「匂ふ」 補足

「薫る」と「匂う」が同意語の打越になるという結論は変わりませんが、古典連歌の感覚ではちょっと違う点もあるので触れておきます。

『連歌新式』の「輪廻事」の項に「薫といふ句にこかると付てまた紅葉を付へからす」とあります。「こか(焦)る」には「赤茶けた色になる」の意味があり、「薫る」は元来「薫り・燻り=煙・火・霧などがほのかに立ち上って、ただよう意。平安時代以降、良い匂いの意味になり、鎌倉時代に歌語として定着した」(『岩波古語辞典』)。連歌の時代になっても元来の意味の記憶が残っていて、薫る→焦る→紅葉が輪廻の例としてとり上げられたと考えられます。

思い出したので調べてみるとベルグソンの哲学用語に「エラン・ビタル」があって、生命の本源的な衝動によって生物を飛躍的に進化させる創造的な力のことだそうです。「若草の薫るいのちに枕して」を「若草の命のエラン・ビタルがたちのぼる旅寝」と理解すれば、匂いとの正面衝突は、理屈の上で避けることが可能です。







by 連歌楽歳 (2019-07-13 16:23) 

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