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電脳網千句第9 賦白何百韻 3折裏 2019.2.1~

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  時くれば老木も花をひらかせて         
    笑ひのどかな雛の遊びに         風
  はるかなるいくのの道に東風吹かば      舎
    鳴神となる大臣祀られ          衣
  とどろきにあらがふ身こそもののふと     梯
    諫むる顔の輝やかまほし         香
  巻紙に戯るる猫嗜めて            姫
    ひるがへしゆく墨染の袖         
  走り根のみち鞍馬より貴船へと        月
    鳩ふく声のいづこともなく        歳
  この山の深さを知らぬ昼の月         風
    黒塚らしき影のすさまじ         舎
  なにゆゑに若き血肉を欲りたまふ       衣
    召されし君はつひに帰らず        梯


   





     

 



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連歌楽歳


●3折表14に、

 はつかに明し春雨の朝

をいただきます。辞書によると「はつか」は物事のはじめの一瞬といった時間的な短さ、「わづか」は量的な少なさを言うようです。「明し」は「あけし」「あかし」の読みがありますが、時間的な「はつか」と組み合わせるには、夜が明けはじめたその一瞬ということで、「あけし」がよろしいかと思います。

講釈はともあれ、
   あると見るうつつも夢のうちとこそ    草 
    はつかに明し春雨の朝         月

  「春の夜の夢の浮橋とだえして
    嶺にわかるるよこ雲のそら」

と歌った定家卿に比肩する上句の朦朧と下句の明瞭の鮮やかな対比。世俗のあれこれにうんざりしてしまった年寄りを慰めるこの新古今ムードの風景を頂いて、

●3折裏1付け
 やはらかに花降りつもるその下で    楽歳
 時くれば老木も花をひらかせて
 濡れてゆくさむらひの背に花の散る

   ◇

 やはらかに花降りつもるその下で    楽歳
春 花 木類 
西行風に。同時にオマル・ハイヤーム風に。科学者よりもむしろ『ルバイヤート』によって詩人として名高いオマル・ハイヤームが、生前、「私の墓は一年に二度樹木が花を散らす場所につくられるだろう」と語っているのを弟子の一人が聞いていたそうです。オマルの没後、その弟子がネイシャプールのオマルの墓所を訪ねると、オマルの墓の周りには、数本の梨の木と桃の木が植えられており、おびただしい花びらが地面を覆っていました。それを目にした弟子は涙をこらえきれなかった――小川亮作訳『ルバイヤート』(岩波文庫)の巻末解説に出てくる逸話です。楽歳も花の時期にネイシャプールに行ってオマルの墓まいりをしたいものと願っていますが、パスポートにイランの入国スタンプが押されると、米国入国が面倒になるそうなので、米・イラン和解の時期を待っているところです。あいにく、さきごろイラク国内の過激派組織を米軍が空爆して、イランから来ていた革命防衛隊の名高い将軍を殺してしまったので、緊張は逆に高まる一方です……と、あとがきが長々と付いたのは句自体に力がないせいでしょう。

 時くれば老木も花をひらかせて
春 花 木類 老いは1句物(只1、鳥木など1)
 さしずめ一休禅師と森女の物語

 濡れてゆくさむらひの背に花の散る
春 花 木類 人倫 人体
「月さま、雨が……」





by 連歌楽歳 (2020-01-04 00:48) 

如月

宗匠さま、 皆さま

明けましておめでとうございます。
2020年が佳い年となりますよう、お祈り申し上げます。
また、本年もよろしくお願い申し上げます。

宗匠さま
治定ありがとうございました。
千草さまのお句の幽玄なる趣きに付けるのは力に余る至難事でしたが、春雨の拙次を宗匠さまが解説してくださったお文章を拝読し、どうにか及第点が頂けたらしいと、ホッとしております。

「はつか」につき、また「アケシ」につきましてのご教示、ありがとうございました。
量的と時間的という違いと、アカシ/アケシという読みの違いーーこの微妙な差異は、思ってもいなかったことでして、新年の初勉強させていただきました。

桃の木と梨の木に囲まれているというオマル・ハイヤームの墓所。桃の花が先に咲くのでしょうか。
一年に二度花が咲き散るというからには、春の薔薇と秋の薔薇のように、季節を違えて咲く花と思いましたが、桃と梨の選択は意表外でした。

本年もお導きのほど、よろしくお願い申し上げます。
by 如月 (2020-01-04 10:40) 

梢風


時くれば老木も花をひらかせて    

   付

 うぐひすの啼く庭ぞめでたき    梢風
 晴着たまはることのかしこき     〃
 かはづの声のあれはそら耳      〃
 いくたびも巣を覗く翁は       〃

○楽歳様今年もよろしくお願い致します。こころ清めの連歌の時間楽しみにしております。  梢風
by 梢風 (2020-01-05 13:44) 

連歌楽歳

梢風さま。こちらこそよろしくお願いします。

 うぐひすの啼く庭ぞめでたき    梢風
春 うぐひすは1句物、鳥類 庭は居所体

 晴着たまはることのかしこき     
雑 晴着は衣類、ただし新春に限らない。七五三なら冬季。膨大な俳諧季語を収集した季寄『十七季』にも季語として登録されていない。ここは春の句が必須。あずかり。

 かはづの声のあれはそら耳 
春 かはづは水辺用(連歌新式)、虫類(連珠合璧集、だが、今ではこの分類はばかげて聞こえる) そら耳でも人体か? 
     
 いくたびも巣を覗く翁は       
春かも? 鳥の巣は春(十七季)、「鳥の巣は春、水鳥の巣・鷹の巣は夏、鶴の巣は雑」(連歌新式)。この巣は鳥の巣と解しておきましょう。しかし「老」と「翁」は付句・打越ともに嫌う(連歌新式)とされていましたので、この句はあずかり。

修正ご希望でしょうか?


by 連歌楽歳 (2020-01-05 16:17) 

梢風

楽歳様、もう少しトライしてみます。いましばらくお待ち下さい。
by 梢風 (2020-01-05 18:43) 

梢風

再考してみましたがいかがでしょうか。前便、頼りなげな球をほおりましたのでもう一度一覧を見直してみました。

  時くれば老木も花をひらかせて    

     付

   ささを召せとて寄り来たる蝶   梢風
   笑ひこぼるる雛の遊びに      〃
   うなづくやうに山彦の声      〃
   蝶の行方も雲のゆくへも      〃


楽歳さまお手数ですが御吟味よろしくお願い致します。

by 梢風 (2020-01-05 19:58) 

連歌楽歳

   ささを召せとて寄り来たる蝶   梢風
春 蝶は虫類 ささは酒で飲食

   笑ひこぼるる雛の遊びに 
春 雛遊は俳諧春の季語 『無言抄』では「人形のことなり」ただけ、季の言及なし。「古へ、女児のひな遊び、三月にかぎらざること」と『俳諧歳時記栞草』。連歌では雑の感じですが、判断は付句作者にゆだねます。
     
   うなづくやうに山彦の声
? 春の季語が見当たりませんでした。あずかり
      
   蝶の行方も雲のゆくへも
春 蝶は虫類 雲は聳物      

by 連歌楽歳 (2020-01-05 21:40) 

梢風

楽歳さま、有り難うございます。「山彦」句、どうも集中力が足りません。お次の方にお願いしたいと思います。

by 梢風 (2020-01-05 23:05) 

蘭舎

楽歳さま、みなさま

連歌頁、始動ですね。
本年も何卒宜しくお願い申し上げます。

梢風さまの「雛の遊び」を頂きたく思います。
雛に関する歴史や季語の扱いを考慮すると、ここでは、
やはり、春の季の詞を補うのがよいと思います。

例えば、
笑ひのどかな雛の遊びに

というのは、いかがでしょうか。

よろしければ、

はるかなるいくのの道に東風吹かば  蘭舎
霞み立つ野にらうたげな犬を連れ
朧にもつれなく見えし人のかげ
君がため琵琶もて春の野に出でむ
尋めゆかん衣のせきの春霞

と付けさせていただきます。
ご吟味よろしくお願いいたします。

by 蘭舎 (2020-01-07 16:06) 

連歌楽歳

 笑ひのどかな雛の遊びに
蕉風さま、ご異論がなければこのままの形でまいりたいと思います。

●3折裏3付
 はるかなるいくのの道に東風吹かば  蘭舎
春 東風(吹物) 「いくの」は地名・歌枕

 霞み立つ野にらうたげな犬を連れ
春 カスミは』聳物 野は地儀 犬は獣類

 朧にもつれなく見えし人のかげ
春 朧 人倫

 君がため琵琶もて春の野に出でむ
春 人倫 地儀 琵琶は「琵」も「琶」もともに字訓「びわ」

 尋めゆかん衣のせきの春霞
春 霞は聳物 衣のせきはみちのくの衣の関=衣川の関。歌枕

by 連歌楽歳 (2020-01-07 21:57) 

連歌楽歳

●追加
 見落としがありました。

  朧にもつれなく見えし人のかげ

春としましたが、雑です。ずいぶん以前のことですが、「おぼろ・おぼろげ」は月と結んで「月おぼろ、おぼろ月」など春、単独では雑と申し上げた記憶があります。すっかり忘れていました。

  秋の扇はなにかうつし絵
  世寒さへおぼろけならぬ須磨の浦
  霧に明石の船の漁火

すでに春3句続いていますので、ここは雑の句で問題ありません。


by 連歌楽歳 (2020-01-08 19:56) 

梢風


 笑ひのどかな雛の遊びに   

蘭舎様、楽歳様、フォロー有り難うございます。なるほど、こういうことになりますかね。「雛・雛まつり・雛遊び」が季節の言葉として落ちつい来るのは江戸時代からで、連歌の時代の生活感ではそのような扱いにならないというところが面白いです。
by 梢風 (2020-01-09 14:11) 

連歌楽歳

羽衣さま宅のPC不具合につき、郵便で付句を頂きました。
 
3折裏3治定
 はるかなるいくのの道に東風吹かば     蘭舎

●3折裏4付け
 神ともなりし大臣(おとど)坐(ましま)す     羽衣
 鳴神となる(り)大臣祀られ
 まだ母御前(ごぜ)を越られもせず
 背伸びしてみる母の門出(かどい)で(門出ぞ)
 歌詠み鳥のあつき心根
 
   ◇

 神ともなりし大臣(おとど)坐(ましま)す     羽衣
雑 神祇 人倫 2折裏1に「田の神の坐す水辺幣きよく」があって、「神」と「坐」のコンビネーションの反復が気になるといえば気になるところ。

 鳴神となる(り)大臣祀られ
夏 鳴神は天象 人倫

 まだ母御前(ごぜ)を越られもせず
雑 人倫

 背伸びしてみる母の門出(かどい)で(門出ぞ)
雑 人倫

 歌詠み鳥のあつき心根
春 一部の辞書に歌詠み鳥はウグイスの異名とある。過去、連歌で歌詠み鳥が使われた形跡はない。


by 連歌楽歳 (2020-01-15 20:51) 

連歌楽歳

●夢梯さまから3折裏4治定、同5付の連絡を頂きました。

 羽衣さまの
  鳴神となる大臣祀られ
 を頂き、

3折裏5付
 もの思ふすべあらばこそ大滝に    夢梯
 とどろきに有心無心の則を超え
 とどろきにひれ伏す民の多き世々
 とどろきの戦恐るる民の声
 とどろきにあらがふ身こそもののふと

   ◇

 もの思ふすべあらばこそ大滝に    夢梯
雑 大滝は大きな滝という意味でしょうか。水辺。問答無用と時流に流され皆大滝のツボの底に沈むということでしょう。

 とどろきに有心無心の則を超え
雑 連歌・俳諧で文体や流派について「有心」「無心」の語を使いますが、連歌本体では字音なので、使用例は見当たりません。

 とどろきにひれ伏す民の多き世々
雑 民は人倫 世は5句物(只1、浮世・世の中に1、恋の世1、前世1、後世1)で、個々の「世々」は只1に該当

 とどろきの戦恐るる民の声
雑 人倫
 
 とどろきにあらがふ身こそもののふと
雑 人倫 
前句の「鳴神となる大臣」をイランのソレイマニにかぶせて、21世紀の暗い世界到来の予感を語る一連の付句の中で、唯一の激励句。心敬が「雲は猶さだめある世の時雨かな」――今の世相に比べればあてにならない時雨の空の雲も今の世に比べれば一定の規則で動いている――と詠んだ室町の混乱期の世相の世界的拡散の中で、志を持つ者への応援歌。一連の暗い付句の最後の灯。


by 連歌楽歳 (2020-01-19 21:53) 

羽衣

宗匠さま 皆さま
遅れ馳せながら 本年も宜しくお願い致します。
鳴神となる大臣 が直近の現代史にも通じる!というご解釈
有り難く恐れ入ります。連歌ブログの行方と合わせ 
この年の世界の行方、行く末に注目致したく存じました。
(予定より早くパソコン帰還致し 只今メール設定終わりました。真っ先に連歌ブログ 拝見させて頂いた次第で メール以外は
この先どうなりますことやら)
先づは 新年早々の失礼をお詫び申し上げ 
寒中の皆様のご健勝をお祈り申し上げます

by 羽衣 (2020-01-22 16:34) 

遊香

遅くなりました!

夢梯様の
とどろきにあらがふ身こそもののふと
いただきまして、付

歩み続ける足の健か(すくよか・したたか) 遊香
両の素足で立所(たちど)確かむ
明るき声のあへしらふ里
里隣より温き伝言(つてごと)
諫むる声の輝やかまほし

最後の句はグレタさんへの応援歌のつもりで、「十七歳の諫め輝く」としたのですが、「十七歳」などと連歌では使えない気がして、上記のように変えた次第です。「輝やかまほし」もこんな言い方するのかなぁ、と思いつつ…。すみません、よろしくお願いいたします。
by 遊香 (2020-01-24 09:03) 

連歌楽歳

 歩み続ける足の健か(すくよか・したたか)  遊香
雑 人体 「すくよか」か、さらに強度のある「したたか」かの選択は、付句作者に。

 両の素足で立所(たちど)確かむ
雑 身体 

 明るき声のあへしらふ里
雑 里は居所 鳴神→とどろき→声、「雷の声」という言い方もあるので、声を避けて「笑ひ」あたりで逃げては?

 里隣より温き伝言(つてごと)
雑 里は居所 「温い」は「あたたかい」ともども俳諧春の季語ですが、連歌ではデータベースであたったところ「ぬくし」の用例は見当たりませんでした。もっぱら「あたたか」を使っていたようです。というわけで、無季。

 諫むる声の輝やかまほし
雑 同様に「声」はさけて、「筆」でいかが?

     ◇
「両の素足で立所確かむ」。本場所の立ち合いのような勇壮な句です。なよなよとした句ばかりが目立つ古典連歌ですが、ときどきは勇ましい句も出ております。
 もののふの先をあらそふ馬の上    羽柴千句第2
 武士の剣とりもつ梓弓        紫野千句第5


by 連歌楽歳 (2020-01-24 16:05) 

遊香

楽歳様
ご教示、ありがとうございます。
なるほど、「声」は重なりますね。「笑い」「筆」に替えてくださいますよう、お願いいたします。
遊香
by 遊香 (2020-01-24 20:13) 

連歌楽歳

修正

 明るき声の(笑ひ)あへしらふ里
    ↓
 明るき声(顔)のあへしらふ里

4句前に「笑ひ」がありました。
by 連歌楽歳 (2020-01-24 20:22) 

連歌楽歳

ついでに

 諫むる声(筆)の輝やかまほし
    ↓
 諫むる声(顔)の輝やかまほし

とした方が、あの舌鋒鋭い少女の面影に近くなります。
by 連歌楽歳 (2020-01-24 20:31) 

遊香

楽歳さま

いろいろありがとうございます。「顔」でお願いします。
テレビで彼女が大写しになるたびにこの句を思い出します(笑)。

もう一つ、勇ましい句を紹介してくださってありがとうございました。羽柴千句! 大河ドラマの「麒麟」がらみで、明智の「ときは今…」がたびたび話題になります。戦国連歌が見直される年になるかも(笑)。
by 遊香 (2020-01-25 09:35) 

朝姫

楽歳様、皆様

明日は節分。
年が明けたと思っていたらもう春ですね。
初氷が観測されないまま春になってしまうのでしょうか。
温暖化を心配しつつ、遊香様の

諫むる顔の輝やかまほし

を頂きます。

 付
  戯れ歌の歌い継がれしその力   朝姫
  戯れ歌を書き散らしたるあけの閨
  湯殿から仰ぐ空へと吸われたる
  巻紙に戯るる猫嗜めて

相変わらず雅やかな心とは縁遠くお恥ずかしい限りです。
ご指導宜しくお願い致します。

by 朝姫 (2020-02-02 09:51) 

連歌楽歳

 戯れ歌の歌い継がれしその力   朝姫
雑 

  戯れ歌を書き散らしたるあけの閨
雑 あけ(明け)は時分 居所

  湯殿から仰ぐ空へと吸われたる
雑 湯殿はたいてい居所ですが、「語られぬ湯殿にぬらす袂かな」のように湯殿山(山類)を意味することもあります。空は天象。

  巻紙に戯るる猫嗜めて
雑 獣類

by 連歌楽歳 (2020-02-02 14:55) 

千草

巻紙に戯るる猫嗜めて   朝姫様

こちらをいただこうと思います。

「戯れ歌」の戯れは源氏物語にも散見される言葉ながら
戯れ歌は俳諧歌の意となり、連歌にはいかがかと考えました。
仮名遣いも現代風なので、その御意図も熟考したのですが
やはり難しいと思いました。

湯殿は、まんだらさまから芭蕉句のご引用がありましたが
こちらの御付けは
羽黒山、月山の湯殿山のことではないように思われました。

霊山と普通のお湯殿の意味の錯綜については、
丸谷才一氏の書物に面白いエッセイがあり、
非常に心惹かれました。
ただ、
仮名遣いは現代ではないほうがよかったと思います。

私見を申して失礼いたしました。

   巻紙に戯るる猫窘めて 朝姫様

   付け
      ひるがへしゆく墨染の袖     千草
      穂先を正す新しき筆
      ほだしを断てば限りなき空

パソコン一新して、まだ人見知り状態で入力していますので
ゆきとどかぬこと多いかと申し訳ございません。
よろしくお捌きくださいませ。
かしこ
by 千草 (2020-02-03 10:19) 

連歌楽歳

●3折裏7治定
 巻紙に戯るる猫窘めて 朝姫
前句の「諫むる」と「窘めて」は「誡め」系の言葉で重複感はありますが、打越ではなく付句なので、気にすることもないでしょう。

●3折裏8付け
 ひるがへしゆく墨染の袖     千草
雑 衣類 墨染の袖(衣)は僧衣のようでもあり世捨て人の衣装のようでもあって、釈教か述懐かで揺れ動いていましたが、連歌新式では苔衣と同じ述懐に分類されています。したがって、述懐の句になります。ところで、
  巻紙に戯るる猫窘めて      朝姫
ひるがへしゆく墨染の袖     千草
には、二句の間の阿吽の呼吸というか、禅機というべきか、ハッと感じるものがありました。禅の公案集『無門関』の「南泉斬猫」という話を思い出しました。禅マスターの南泉和尚が、雲水たちが猫について言い争いをしているのを見て、言い争いのもとの猫をつかみあげて「お前たちが何か一言いうことができたらこの猫を助けよう。言うことができなかったら、この猫を切り殺す」。雲水たちが答えることができなかったので、南泉和尚は猫を斬った。夜になって高弟の趙州が寺に帰ってきたので、猫の話をすると、趙州は履を脱いで頭の上にのせて出て行った。それを見て「もし、あんたがいたらあの猫を救うことができたのに」と南泉和尚が言った。(秋月龍珉『無門関を読む』、講談社学術文庫)。凡俗にはちんぷんかんぷんの禅問答ですが、こちらの連歌の展開の方は、戯れる猫をたしなめて、さっと袖を翻して出て行く人物、その颯爽とした付け合いの切れ味はなんとなくわかります。

 穂先を正す新しき筆
雑 筆試すは連歌では春(新春)の季語で、俳句の書初・筆始・試筆にあたりますが、「新しき筆」なので雑が穏当でしょう。

 ほだしを断てば限りなき空
雑 空は天象、4句物


by 連歌楽歳 (2020-02-04 01:31) 

千草

楽歳様
ありがとうございました。
ひょいと頭に浮かんでくるままに付けていて
禅の公案集『無門関』については何の知識もなく
ひえー!と驚きつつ拝読しました。
雲水たちは猫のことでいったい何を言い争っていたのでしょう。
名前をミーちゃんにしようか、ハーちゃんにしようかというくらいのことで
斬られてしまったら、なんと哀れな・・・・・
千草考案の墨染めの袖の人は
もっと恵み深く犬猫にも温顔を向ける門跡のようなイメージの人です。

by 千草 (2020-02-04 09:19) 

連歌楽歳

千草さま
『無門関を読む』の説明によると、雲水たちが議論していたのは、猫に仏性あるかないかということだったそうです。事典によると仏性とは仏になりうる可能性のことで、インド仏教では有情の動物にのみ仏性があるとされ、中国仏教では草木土石など無情のものにも仏性をみとめ、日本では「草木国土これ心なり、心なるが故に衆生なり、衆生なるが故に仏性あり」と道元が三段論法で説明しました。そういうわけで、中国では猫に仏性があるとされていたのに、なぜ雲水はいまさらその有無を論じいていたのか、和尚さんはなぜ猫を斬り殺したのか、高弟はなにゆえ履物を頭の上にのせたのか、疑問が渦を巻きますねえ。解説によれば、南泉和尚は猫を斬ったのではなく、人間の小さな自我を切ったのだそうです。自我を切り捨てることで「ほだしを断てば限りなき空」が現れるのでしょう。こんなレトリックが一部の外国人をいまでも禅ファンにするのですね。
by 連歌楽歳 (2020-02-04 12:41) 

千草

楽歳様
再度のご説明ありがとうございました。
カードゲームのように
「パス」
と申し上げるより手立てのないような難しいお話でございました。
by 千草 (2020-02-04 13:46) 

如月

楽歳さま、 皆さま

冬らしい寒さになっていますね。お変りございませんか?
新型コロナ肺炎はまだ蔓延中で、いつ下火になるのか見通せず、それが心配です。
クルーズ客たちは、とくにお気の毒なことです。

南泉斬猫の詳しいおはなし、有難うございました。
これを知った切っ掛けは三島の『金閣寺』だったと思います。
記憶では、妖美なるものの惑わしへの反撃という文脈へ、作者はズラシを行っていたと思うのですが、果してどうでしたか・・・。今度、読み直してみます。

ということで、私も連想から、墨染のお句を頂戴致したく存じます。

ひるがへしゆく墨染の袖 千草さま

拙次
走り根のみち鞍馬より貴船へと
日照雨くる裾からげして旅姿
裾からげ沓を戴く俄雨
擦れちがふ被衣(かづき)の薫り橋の上(へ)に
月代に横笛冴ゆる橋の上

以上です。
ご指導よろしくお願い申し上げます。
by 如月 (2020-02-09 18:04) 

連歌楽歳

 走り根のみち鞍馬より貴船へと   如月
雑 「走り根」が手持ちの辞書に見当たりません。何でしょうか? 鞍馬・貴船とも地名・名所

 日照雨くる裾からげして旅姿
雑 旅 日照雨は光物+降物になるんでしょうね。裾は衣類(前句の墨染めの袖のあと裾からげ。衣類と衣類は5句だが、衣類の擦り付け2句続きは古典連歌にも例があり、OKとしましょう) 旅姿となるとやはり人倫か?

 裾からげ沓を戴く俄雨
夏 にわか雨を驟雨ととれば夏 衣類

 擦れちがふ被衣(かづき)の薫り橋の上(へ)に
雑 衣類 この橋は水辺の橋 

 月代に横笛冴ゆる橋の上
秋 月 光物 夜分 水辺

by 連歌楽歳 (2020-02-09 23:42) 

如月

宗匠さま、皆さま
おはようございます。

ご指導有難うございました。

走り根は、一つは園芸や盆栽の用語で、一本の木に生じる複数の根のなかで、特に大きく長い根のことを指す語だそうです。

私が使ったのはもう一つの意味でして、確かに一般的な用語ではないようですね。(とはいえ、この意味での俳句は多いように思います。)

それは、木の根が地中に潜らずに地上に浮き出し、特に大木の場合、遠くまでうねりながら根を四方に走らせている状態のことです。
寺社の境内や公園等で、よく目にする光景です。

走り根で先ず名前が挙がるのが、鞍馬山のようです。山頂近く、奥の院辺りの鬱蒼たる杉林は、地表一面縦横に走り根が盛り上がり、恐ろしいほどの雄渾な雰囲気を醸し出しています。

20年も前、鞍馬から貴船へと、山越えの走り根道を歩いたときを思い出して、そのままを句にしたものです。
牛若丸が天狗から武芸を伝授されたのはこの山中だったという伝説が、納得できるような景観でした。

初級程度のハイキングコースです。仏閣はもとより、鉄幹晶子の歌碑をはじめ見所たくさんありますし、ぜひ歩いてみてください。
新緑の季節以降、貴船の床料理が始まっている時期が、最適ですよ。
鞍馬の走り根は手強いですから、靴だけはしっかりしたものを!

一つ質問させてください。
「冴ゆ」は俳句では冬の季語ですが、連歌では雑なのですか。
以前お聞きしたような記憶もありますが、調べても分からず、お尋ねさせていただく次第です。
私の意図としては、冬の月として詠みたかったのですが・・・。
ご指導よろしくお願い申し上げます。

余寒厳しい毎日です。宗匠さま、皆さま、くれぐれも御自愛くださいませ。
by 如月 (2020-02-10 10:12) 

連歌楽歳

●3折裏9治定
 走り根のみち鞍馬より貴船へと   如月
「走り根」のご説明、ありがとうございました。そういえば低山の山道のところどこで木の根が地表に現れているのを見たことがあります。あれが「走り根」でしたか。西行や芭蕉の旅を連想させる「日照雨」「俄雨」、はりまや橋や五条大橋をおもわせる「被衣」「横笛」もさることながら、墨染めの袖が翻る舞台を鞍馬から貴船への山道と、モノクロ写真風のシンプルな風景描写にひかれました。

●3折裏10付け
 行きつ戻りついくたびの秋   楽歳
 鳩ふく声のいづこともなく
 里のにぎはふ火祭りのころ

  ◇
 行きつ戻りついくたびの秋   楽歳
秋 

 鳩ふく声のいづこともなく
秋 3句前に猫がいます。獣類と鳥類は3句隔てるのですが、文字面はともかく「鳩ふく」は鳥ではないので。

 里のにぎはふ火祭りのころ
秋 神祇 居所

  ◇
「冴ゆ」について。『無言抄』に「さゆる 冬に一、他季に一、以上二也」、また同書に「月のさやけきなど秋也。月さえては冬なり」。『毛吹草』は「月冴る」を初冬。『無言抄』に、おぼろげだけでは無季、月を結んで春、とあるので、「冴ゆ」も月と結んだ場合のみ冬と思いこんでいました。連歌データベースにあたると、多くは月と結んでいましたが、
 
 霜冴ゆる嵐の鐘の声ふけて
 冴ゆる夜や枕の夢は覚めぬらむ
 仮寝の袖に冴ゆる松風

などの組み合わせで冬季になっている例がありました。一方、

 涙に冴ゆる袖の移り香
 霞に冴ゆる須磨の浦波
 春冴ゆる屏風の隙間たてよせて

など、中立的な「冴ゆる」の用法もあります。俳諧のように「冴ゆる」だけで冬とは言い切れぬ、前後関係次第のあいまいさが連歌にはあるようです。
 そういうわけで
 月代に横笛冴ゆる橋の上  如月
の語順を変えて。
 月代の冴ゆる横笛橋の上
とすれば、「冴ゆる」が月と横笛の双方に掛かって冬の句になります。

     

by 連歌楽歳 (2020-02-10 19:40) 

千草

如月様
弁慶を付けてくださってありがとうございました!!

by 千草 (2020-02-10 22:50) 

梢風


  鳩ふく声のいづこともなく    楽歳

     付

 この森の深さを知らぬ昼の月    梢風
 こころなきものとは見えぬ吾亦紅   〃
 すさまじの業とやいのち奪ふわざ   〃
 山がつの笑ひは高みより落ちて   〃

○楽歳さま、よろしくご指導下さい。

2/22よりイスラエル行きですが、このように新型コロナウイルスが騒がれていてはどうなるでしょうという感じです。私自身は一向に気にしませんが、何しろ香港経由で、ここに数時間滞在するということになっており、このところ綱渡りを感じるところです。海外旅行初めての飛行機、なかなかドラマティックです。
by 梢風 (2020-02-10 23:22) 

連歌楽歳

 この森の深さを知らぬ昼の月    梢風
秋 月 時分(昼) 森や林は分類上「地儀」ですが(『連珠合璧集』)、「打越の走り根のみち」と「森」はどこかだぶる気分がします。後年の『産衣』では森も林も植物とされました。「森→山」あたりでどうでしょう?

 こころなきものとは見えぬ吾亦紅
秋 吾亦紅は草類

 すさまじの業とやいのち奪ふわざ
秋 「冷まじ」が「凄まじ」の意味になった場合でも秋(『産衣』『無言抄』) いのち(命)は2句物(只1、虫の命など1)

 山がつの笑ひは高みより落ちて   〃
雑 人倫 秋の季語が欲しい所です。預かりにしておきます。代案があれば、どうぞ。
 
  ◇
梢風さま。香港経由を気にすることはありません。8日現在香港のコロナウイルス感染者数は30人ほど、日本ではクルーズ船乗客をふくめその3倍の約90人。イスラエルは未感染国なので、香港発の便に限らず検疫は厳しいでしょう。


by 連歌楽歳 (2020-02-11 01:24) 

梢風


再案

 この山の深さを知らぬ昼の月    梢風
 山がつの笑ひをはこぶ野分なり    〃

○楽歳様、ご意見頂き上のようになおしてみました。よろしくお願い致します。

香港情報有り難うございます。行き着くまでには沢山のハードルが待ち構えていそうです。

   
by 梢風 (2020-02-11 08:12) 

連歌楽歳

梢風さま
さっそくの変更をありがとうございました。本文に反映します。
by 連歌楽歳 (2020-02-11 11:55) 

如月

宗匠さま

治定有難うございました。
また「冴ゆ」につきましての詳しいご教示にも、御礼申し上げます。

このように申し上げる前に、早くもお次の梢風さまがお句を付けられて・・・恐れ入るばかりでございます。

千草さま、よろこんでいただけて嬉しうございます。
素敵な前句を楽しませていただきました。

皆さま、休日の午後を、ゆっくりとお過ごしのことでしょう。私は溜まった用事もつい忘れて、TVの「七人の侍」に観入ってしまいました。これからいよいよクライマックスです。
by 如月 (2020-02-11 15:09) 

蘭舎

楽歳さま、みなさま
お待たせしました。なにかと不穏な世間を厭わしくもおもいますが、風雅の道を、暫しさまよいたく。

梢風さまの
この山の深さを知らぬ昼の月   

をいただき、次を案じてみました。

 あまづるは実をひそやかに付け    蘭舎
 痩せたる腕に触るゝあぶれ蚊 (秋の蚊)
 つれなきまゝに女郎花揺れ
 霧の向かふに鬼婆の墓
 黒塚らしき影のすさまじ
 蓮の実飛べば暫し黙(もだ)する

楽歳さま、羽衣さま、ご吟味、宜しくお願いいたします。

by 蘭舎 (2020-02-16 08:06) 

連歌楽歳

 あまづるは実をひそやかに付け    蘭舎
秋 「あまづる」はマイナーな俳句秋の季語。木か草か俳句の扱いが不明なので植物とだけ。3句前に「走り根」があり、厳密には木と木は5句。木と草は3句隔てる約束です。変更しますか? 判断を付句作者にゆだねますか?

 痩せたる腕に触るゝあぶれ蚊 (秋の蚊)
秋 あぶれ蚊は俳諧秋の季語、虫類。人体

 つれなきまゝに女郎花揺れ
秋 女郎花は1句物、草類 走り根の木と草は3句

 霧の向かふに鬼婆の墓
秋 霧は聳物 鬼は1句物ですでに2折表2に「於爾」が出ています。

 黒塚らしき影のすさまじ
秋 すさまじ 黒塚は地名・そこにある花崗岩の塚(みちのくの安達の原のくろづかに鬼こもれりと聞くはまことか)。

 蓮の実飛べば暫し黙(もだ)する
秋 植物 

by 連歌楽歳 (2020-02-16 22:11) 

羽衣

宗匠さま 蘭舎さま みなさま
昨日は楽しい猪鹿蝶を有難うございました。お疲れ様でした。

植物と植物(樹木と草でも三句とのこと)でしたが これまでになかったご境地の恋を目指していらっしゃることとご拝察申し上げ
誠に感じ入りました。

三折裏十二句目  
    黒塚らしき影のすさまじ   蘭舎さま頂きます

十三句目   付け
    こはきもの(怖いもの)見たさもひとの情けにて
    あだしくもあらん(あだしとも思へ)待てども来ぬ君は 
    人を待つ身をばあだしと言ひ捨てゝ
    口惜しや若きみそらをむざむざと
    なにゆゑに若き血肉(血潮)を欲りたまふ

何かとめちゃくちゃです!が 何卒お導きのほどよろしくお願い
申し上げます。


    
by 羽衣 (2020-02-17 15:44) 

蘭舎

楽歳さま
さっそくにありがとうございます。
植物のあまづる、女郎花、そして、鬼のこと、ありがとうございます。おにさんはすでに登場していたのですね。

また、羽衣さま、さっそく、拙句おとりあげくださり、
ありがとうございます。
                 草々   蘭舎 拝
by 蘭舎 (2020-02-17 16:07) 

連歌楽歳

千草さまからメールで以下の指摘をいただきました。興味深い話題ですので、練習帖のコメント欄に移します。

    ◇

  走り根のみち鞍馬より貴船へと        月
  鳩ふく声のいづこともなく          歳
  この山の深さを知らぬ昼の月         風

この三句のわたりにつきまして

鞍馬は、そして貴船も「山類」ではないでしょうか。
山三句として、
鳩ふく声の句も山であったほうがよいように思われますが
いかがでしょうか。

   ◇

①鞍馬・貴船は山類ではないかとのご指摘について。練習帖の基本式目は14世紀の『連歌新式』によっています。連歌新式では「富士、浅間、葛城などばかりは山類之体用之外なるべし」としています。鞍馬・貴船が「富士、浅間、葛城など」にあたるかどうかについては微妙です。手もとの資料をあたりましたが、これという直接的なヒントは得ることができませんでした。しかし、桜の「吉野」とは吉野山のことで、山類ではないかと考える方がいらっしゃるでしょうが、一方で、山類とは見なさいという証句もあります。

  雲ゐる山やなをしぐるらん
  世のほかの我が隠家はおぼつかな
  吉野のさくらだれもこそ見れ
       (宝徳4年千句第10、1折裏)

鞍馬寺は標高400メートルほどの山で、鞍馬から貴船へのハイキング道は山道ですが、似たような標高の吉野山も「吉野」だけでは地名・名所の扱いです。鞍馬・貴船も同様と推測する材料になります。

ただ、『連歌新式』から200年余り後の16世紀の『無言抄』は「富士、浅間、葛城などは山類体用のほかなるべしといえどもただ山類の体なり」と解釈を変更しています。さらに元禄期の連歌式目書『産衣』は「鞍馬と許も山類也。寺も同前」とし、「貴布禰 舟5句嫌」と水辺をにおわせ、同じ京都の名所「清滝」を山類・水辺に加えています。軽井沢や蓼科、草津温泉などは標高1000メートルを超えます。現代の連句で山類とみなしておかしくはありませんが、どうなんでしょうね。

『連歌新式』は「志賀」「難波」は非水辺、「須磨」「明石」は水辺と区別しています。この判断基準は当時の連歌人の感触によるものでしょう。『連歌新式』には「鞍馬」について言及がありません。「富士」など「山」の字が欠落した場合、山類体用外とするなど判断に腰が引けているように見えます。

そういうわけで、『連歌新式』による限り当時の連歌人は「鞍馬」を山類と確定していなかったと推測し、「鞍馬」と「この山の深さ」を山類打越とみなさないという判断を楽歳は採用しました。

②「鳩ふく」は鹿よせの音で、日本の森は山に多く、山類と感じられる方もいらっしゃるでしょう。鳩ふくを山類とみなせば、

走り根のみち鞍馬より貴船へと        山類体用外
  鳩ふく声のいづこともなく          山類用
  この山の深さを知らぬ昼の月         山類体

と、山類3句続きの式目をクリアできます。ただし、「鳩ふく」を山類ととれば鹿笛も同類となり、ひいては鹿自体もも山類になりかねません。



by 連歌楽歳 (2020-02-17 16:14) 

千草

ありがとうございました。

 鳩ふく声のいづこともなく 

を勝手にいじりまして 
         
 鳩ふく声の峰か谷かと 

とか

こてこてに山類体にするのはどうかなあなどとひとりで
遊んでいました。

山の奥にも鹿ぞ鳴くなる なので鳩吹くが山類なのですね。
そうだったのかと霧が晴れました。

お座敷を取り散らかしまして
お詫び申し上げます。失礼しました。


          
by 千草 (2020-02-17 18:27) 

連歌楽歳

●3折裏12治定
 黒塚らしき影のすさまじ   蘭舎
「黒塚」について一言。3句前(中2句)に「鞍馬」「貴船」の歌枕(名所)があって、ここでまた「安達ケ原」の核心部分「黒塚」(ともに歌枕)が出てきました。あらかじめコメントしておくべきでしたが、楽歳の見落としでした。あれこれ弥縫策を考えましたが、

   ちりもせぬ鎌倉桜はてしらで  良基
   春はすぐるにのこる東道
   行きくらす関より末やかすむらん
   舟こぎよするすまの柴の戸   良基
      (至徳二年石山百韻)

と、名所と名所は3句隔てるべきところを、『連歌新式』の責任者・二条良基が中2句で「鎌倉」と「須磨」を出した例もありますので、ここの鞍馬・貴船・黒塚のことは不問に付してくださいますようお願い申し上げます。

●3折裏13付け
  こはきもの(怖いもの)見たさもひとの情けにて
雑 人倫

  あだしくもあらん(あだしとも思へ)待てども来ぬ君は
雑 恋 あだし(心)・待つ・来ぬ君 人倫

  人を待つ身をばあだしと言ひ捨てゝ
雑 恋 人倫 

  口惜しや若きみそらをむざむざと
雑 「身」が人倫なので身空も人倫か?

  なにゆゑに若き血肉(血潮)を欲りたまふ
雑 





by 連歌楽歳 (2020-02-17 21:51) 

羽衣

宗匠さま 
走り根のみち からの三句の渡り 山類の分類を 連歌新式、
無言抄、産衣等駆使遊ばされてのご教示 有難うございました。
愚見ながら この三句は とても面白い展開と存じました。
また 当方もこのどさくさ?に乗じましたようでございますが
 須磨をすま と記すのも 楽しい?処方とお見受け致しました。
俳諧では 暴れどころ というのでしょうが 宗匠さまのご腐心
お察し申し上げます。誠に誠に有り難うございました。
蘭舎さま 千草さま ありがとうございました!
猶、時節柄
皆さまには 一層のご自愛とご息災をお祈り申し上げます。

  


by 羽衣 (2020-02-18 00:33) 

蘭舎

宗匠さま

歌枕(名所)と歌枕(名所)の去嫌のこと、
二条良基の例まで引き合いに出してくださり、
恐縮に存じます。

このところ、おくのほそ道に関係する謡曲にすこし
気をとられていての所為です。

羽衣さま、千草さま、いろいろとありがとうございます。
それでは、また。
by 蘭舎 (2020-02-20 12:39) 

連歌楽歳

夢梯さまから3折裏13治定、14付を頂きました。

●3折裏13治定
 なにゆゑに若き血肉を欲ろたまふ    羽衣
●3折裏14付
 戦を誘ふあららかな(あららなる)沙汰 夢梯
 召されし君はつひに帰らず
 ゆくへも知れず往にし蛍火
 誰とも知らぬ骨を抱きて
 いづくの野にか骨の散るらむ

     ◇
 戦を誘ふあららかな(あららなる)沙汰 夢梯
雑 「沙汰」は漢語なので、「あららかな(あららなる)君」に変えましょう。「あららなる」は「粗らなる」でまばらなこと。「あららか」は「荒らか」で激しく乱暴なこと。「あららかな」は口語体、文語では「あららかなる」。
  
 戦を誘ふ公(きみ)は荒らか
雑 人倫

 召されし君はつひに帰らず
雑 君は人倫

 ゆくへも知れず往にし蛍火
夏 蛍火の蛍は1句物 虫類

 誰とも知らぬ骨を抱きて
雑 誰で人倫 「骨を抱きて」で述懐

 いづくの野にか骨の散るらむ
雑 述懐 地儀


by 連歌楽歳 (2020-02-25 22:27) 

遊香

予定していた句会や会合が次々キャンセルとなって、通常生活を懐かしむこの頃です。「コロナがくれた読書週間」と前向きに捉える友人もおりますが。

夢梯様の
召されし君はつひに帰らず
いただきまして、付

薬師とてはやり病にかかりしを
つつがなく友と相みて語りたき
禍(まがごと)のものの聞こえに広まりて
清めたき身なれば唯に手を洗ふ
刈株(かりばね)を見れば清らな芽のひとつ

お手直し、よろしくお願いいたします。
遊香
by 遊香 (2020-03-01 11:55) 

連歌楽歳

 薬師とてはやり病にかかりしを
雑 この場合「薬師」は「やくし=釈教」よりも「くすし=人倫」でしょうね。

 つつがなく友と相みて語りたき
雑 人倫

 禍(まがごと)のものの聞こえに広まりて
雑 
 清めたき身なれば唯に手を洗ふ
雑 人体 「唯」を「ユイ」と読めば字音。辞書を引きましたが、訓読みで適当なものが見当たりませんでした。

 刈株(かりばね)を見れば清らな芽のひとつ
春 木類 樹木の「芽ぶく・芽立つ」は俳諧春の季語。稲の場合、「ひつじ田」は秋。すぐ前に秋の句があるので、春の芽吹きにならざるをえない。「清らな」という形容動詞連体形は口語で、文語だと「清らなる」です。
 刈株(かりばね)を見れば芽ひとつ清らなる
の連体止めでいかが?



by 連歌楽歳 (2020-03-01 16:28) 

遊香

楽歳様
早速、ありがとうございます!
「唯に」は「ひたすら」の意味で「ただに」と読むつもりでした。
ひたと・ひたに・切に でもいいのかな、と思いますが、微妙な違いがどうもよくわかりません。

「…清らな芽のひとつ」は、すみません、「…芽ひとつ清らなる」の連体止めでお願いします。

by 遊香 (2020-03-01 18:02) 

連歌楽歳

「唯に」を古語辞典で引くと「平安時代以降には、漢文訓読体で使う語。多く助詞「のみ」と呼応する。単にの意味。「大保をば唯に卿のみとは念ほさず。朕が父と……なも念ほす」

「確と」でどうでしょう。
 清めたき身なれば確と手を洗う
たっぷりと石鹸をつけてhappy birthday to you を歌い終わるまで洗うとよろしいそうです。
by 連歌楽歳 (2020-03-01 23:34) 

遊香

楽歳さま
確かに! 「確と」手を洗うのが一番ですね。
ありがとうございました。
遊香
by 遊香 (2020-03-02 09:15) 

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