杜若咲く八橋のさと 宗砌
ふり返ることのみ多き秋の道 歳
あはれ優しき文でありしに 花
魂のあくがれ歩(あり)く地の極(はたて) 月
蜘蛛の巣こぼれのこりたる館(たち) 舎
枢(とぼそ)落ちまばゆき光り差し込みぬ 衣
鳥船絵巻ひもとかれゆき 草
空言(むなこと)をふはり飛ばせしあまり風 香
きこしめしては泳ぎ出す君 風
身をまかせ流るゝままに雲に問ふ 梯
はやも日は暮れ鐘もかすみて 歳
わび住まい貌よ鳥など啼くを待ち 花
八重山吹にしのぶ歌びと 月
蛙にもたはぶれせむとや蓑かさむ 舎
翌なき春をてらす月の出 衣
<進行表はこちら>
<3折表1治定> ふり返ることのみ多き秋の道 楽歳 <3折表2付け> あはれ優しき文でありしに 路花 いま気づきしは袖のほころび みづらに結ひし髪もほうけて * あはれ優しき文でありしに雑 文は3句もの(恋1、旅1、文学1、このケースは恋でしょう)「ありしに」で懐旧のひびきも出ます。この句が恋・懐旧になり、前句の「ふり返る」は動作ではなく、追憶という心の動きになり、前句も懐旧となります。 いま気づきしは袖のほころび雑 衣類、袖と袖は5句隔てる 連歌の場合「袖の露」「袖を絞る」「袖を振る」「袖返す」などのイディオムを使いますが、「袖のほころび」は出連歌・入俳諧的表現。とはいうものの、いま連歌を再演しようとすれば、俳諧的要素抜きではもはや成り立ちませんので、袖のほころびも風雅のうちです。 みづらに結ひし髪もほうけて雑 髪は人体 この句、なぜか「狂句こがらしの身は竹斎に似たる哉 芭蕉」を連想させます。となると、前句の「秋の道」は「此道や行人なしに秋の暮」に似たセンチメンタリズムに似てきます。 by 連歌楽歳 (2016-02-12 17:25)
宗匠さま、皆さまおはようございます。天気予報のとおり、明るく暖かい朝です。さて、たいへんお待たせいたしてしまいまして、申し訳ございませんでした。路花さまの あはれ優しき文でありしに を頂戴いたしたく存じます。 拙付 浮かれ女のそでなからうは常なれど 海原の果てへの想ひやみがたく 魂のあくがれ歩(あり)く地の極(はたて) 吾妹子に淡路の島ゆ船出してなお、四句目の「吾妹子に」は枕言葉として用いました。よろしかったでしょうか。「ゆ」の使用も可能でしたでしょうか。それも含めまして、拙次へのご指導、なにとぞよろしくお願い申し上げます。 by 如月 (2016-02-19 10:44)
浮かれ女のそでなからうは常なれど雑 恋 浮かれ女は人倫 「そでなからう」の意味は? 海原の果てへの想ひやみがたく雑 恋の句とも読めますが、コロンブスの例もあるので。旅。海原は水辺体、5句前に「波音」(水辺用)があります。水辺同士は5句を隔てるしきたり。 「海原」に代わるものを御考案ください。 魂のあくがれ歩(あり)く地の極(はたて)雑 旅 地の極は地儀 こちらはマルコ・ポーロのおもかげ 吾妹子に淡路の島ゆ船出して雑 恋(枕詞「吾妹子」が「淡路」「逢坂」にかかる理由を考えると) 旅 淡路は「難波」「志賀」などと同じく名所・非水辺。淡路の島としても同じ。「船出して」は「ふなでして」「ふねだして」ともに水辺のにおいが強いので、「漕ぎだして」あるいは「漕ぎ出でて」としてはいかがでしょうか。 吾妹子に淡路の島ゆ漕ぎ出でて by 連歌楽歳 (2016-02-19 14:27)
送信後に気付きました。 吾妹子に淡路の島ゆ船出しては、「淡路」と打越の「秋の道」が嫌いあうと『連歌新式』にありました。この句、残念ながら外します。 by 連歌楽歳 (2016-02-19 14:41)
宗匠様ご教示・ご指導、いろいろとありがとうございました。●まず「そでなからう」ですが、「そでなし(然で無し)」(=素っ気ない、すげない、冷たいの意。「袖なし」と表記されることもあるようです)に推量の意味を加えた表現のつもりですが、文法的には、いかがでしょうか。「そでなからん」でしょうか。ちなみに今月の歌舞伎座で上演中の『籠釣瓶』では、花魁の八ッ橋から突然の愛想尽かし(実は本心からではなく、やむを得ない理由があるのですが)をされた主人公・次郎左衛門が「花魁、え、そりゃア袖なかろうぜ」 と悲痛な叫びをあげる吉原の座敷の場は、歌舞伎名場面の一つとされています。私も先週観てきましたが、吉右衛門演じる次郎左衛門の悲哀の表出には、戦慄させるものがありました。●「海原の果て」は、「雲ながる果て」ではいかがかと思いましたが、「雲ながるる果て」としなくてはいけないでしょうね。また、6句前に「白雲」がありました。別案として、「風通う果て」「おほぞらの果て」も、考えてみました。なお、私としては恋+旅の句のつもりで作りました。●「淡路」「淡路島」は名所であって水辺ではない、というのは面白いというか、不思議というか。つまりは、路と道が障るということでしょうか。もし、漢字の問題であるなら、 吾妹子にあはぢの島ゆ漕ぎ出でて と仮名書きでは駄目でしょうか。吾妹子という枕詞の使用は私にとって初めての体験ですので、可能なことなら残していただけたら有難いのですが。「あはぢ」でも、単語自体が「道」と障るのであれば、致し方ございません。よろしくご指導のほど、お願い申し上げます。 by 如月 (2016-02-20 00:17)
宗匠様先ほどお送りした文面のうち、「風通う果て」は、「風通ふ果て」としてくださいませ。うっかりといたしてしまいました。よろしくお願い申し上げます。 by 如月 (2016-02-20 00:27)
如月さま「そでなからう」は歌舞伎のセリフでしたか。インターネット情報では、明治の初演後に流行語になったそうですね。もっとも、このセリフの後に主人公はダンビラを振り回して花魁を切り殺す殺伐とした吉原物で、どうも連歌の本説には向いていないようですが、前後の脈絡は取れましたので、このままの形で入れておきましょう。 風通ふ果てへの想ひやみがたく雑 風は吹物 「想ひ」は恋の用語 新古今集に「人はこでかぜのけしきもふけぬるにあはれにかりの音づれてゆく 西行法師」の恋の歌がありますので、恋。 吾妹子に淡路の島ゆ漕ぎ出でて とし、この句が治定された場合は、打越句の「ふり返ることのみ多き秋の道」を「・・・・・・秋時雨」と変えることにしましょう。 by 連歌楽歳 (2016-02-20 01:47)
宗匠様吾妹子の句が治定された場合は、後からの句のために、前にある御句の言葉を変えてくださるとは・・・温情あふれるお捌きに、恐縮しつつ心より感謝いたします。候補に入れておいてくださいまして、ありがとうございました。なお芝居では、縁切りを一旦は受け容れて故郷に帰った主人公が数ヵ月後にまた吉原に現れ、八ッ橋ならびに茶屋の女たちなど大勢を切り殺す、という筋になっており、大量殺人は家代々の宝刀・妖剣「籠釣瓶」の魔力のなせる業だったという”こじつけ”がなされています。そもそも歌舞伎には、愛想尽かし(たいていは偽りの)をされた男が殺害行為に及ぶ(無差別大量殺人や間違い殺人など)という筋書きが沢山あり、また妖剣や魔剣のせいであったという”オチ”がついているケースが相当数みられます。本人の所為でなく剣が勝手に殺してしまったという非合理な”設定”にはどういう意味が籠められているのか、これは私にとってたいへん興味ある問題です。すみません、クダクダと書きこんでしまいました。不愉快な話題と思われた方もいらっしゃいましょう。おゆるしくださいませ。宗匠様、ありがとうございました。蘭舎様、治定をよろしくお願い申し上げます。 by 如月 (2016-02-21 01:33)
宗匠様 蘭舎様 皆様おはようございます。昨日一日中の雨のあと、今日は晴れるということですので、期待しております、昨夜はいろいろと書き込んでしまいまして、失礼いたしました。あのように書きましたが、それは路子さまの御句から私がいただいた連想から、有名科白を引用させていただいたまでに他なりません。決して「籠釣瓶」の世界だけを句に籠めたのではございませんので、どうかその点誤解なされませんよう、お願い申し上げます。自句の解説は一切すべきでないというのは、こういうことなのでしょうね。不行き届き、なにとぞご寛恕ください。 by 如月 (2016-02-21 11:03)
如月さまの春寒し。またもやお待たせ致しまして、申し訳ございません。去嫌、差し合い、まだ、十分に呑み込めておりませんので、いろいろとご迷惑おかけしそうですが、付けてみました。魂のあくがれ歩(あり)く地の極(はたて)をいただきまして、殿ばらは歌うめき誦じつ 甚だ雪の吹き舞ひし朝雪あられなど吹き入りし軒蜘蛛の巣こぼれのこりたる館(たち)足踏みはづす西のきざはし霞の島を伏し拝みたり霞の島は山でも岩でも、障りのないところで、よろしく御願いいたします。楽歳さま、そして、羽衣さま、なにとぞ、よしなに。蘭舎拝 by 蘭舎 (2016-02-26 15:57)
さきほどの、コメント、なぜか、印字が飛んでしまって、変になってしまいました。あわて床屋、開業中。春寒し。・・・・如月さまの・・・をいただきまして・・・とお読みつなぎ下さいませ。蘭舎拝。 by 蘭舎 (2016-02-26 16:01)
殿ばらは歌うめき誦じつ雑 人倫 「誦じつ」に読みをいれましょう。「誦(ずん)じつ」でよろしいでしょうか。 甚だ雪の吹き舞ひし朝冬 雪は降物・4句もの(初折裏4に雪まぜ、2折表に春の雪。春の雪は4句物の雪とは別枠なので、これが雪の既出2句目) 「吹き舞ひ」で暗意・吹物 朝は2句もの(只1、けさ1)、あいにく2折表8に既出。「今朝(けさ)」に変更しましょう。時分 雪あられなど吹き入りし軒冬 雪(4句ものの既出2句目)、あられともに降物 「吹き入りし」で暗意・吹物 軒は居所体 蜘蛛の巣こぼれのこりたる館(たち)雑 蜘蛛の巣は俳諧で夏ですが、「こぼれのこりりたる」で、雑の気配。 館は小規模な城あるいは官舎、居所体のうちか 足踏みはづす西のきざはし雑 足は人体 西は方角 階は居所体 by 連歌楽歳 (2016-02-26 23:00)
楽歳さまお手数おかけいたしました。読み、結構です。よろしく御願いいたします。寒さももうしばらくですね。みなさま、ご自愛ください。 蘭舎 拝 by 蘭舎 (2016-02-27 09:01)
忘れ物がありました。 霞の島を伏し拝みたり春 島は水辺・山類 山類は4句前の2折裏14にあります。「畑」が山類というのも、東南アジアの山岳民族風で変な話ですが、古典連歌はそういう約束だったのでしょう。いわくありげな伏し拝む「霞の島」を「霞の洞」(仙人のすみか・上皇の御所)に変えてはとおもいましたが、「洞」も本来山類なのでひっかかるところがあります。残念ながらはずします。 by 連歌楽歳 (2016-02-27 10:18)
宗匠さま 皆さま名実ともに 春のひかり まばゆく うろ覚えの春望など思い浮かべております。扨 三折表四句目 蘭舎さま御句より 蜘蛛の巣こぼれのこりたる館(たち) 頂戴致します。(雑) 付け 枢(とぼそ)あき(又は、落ち)まばゆき光り差し込みぬ 枢(とぼそ)開け射し入る光をろがみぬ 太刀ふるふ姿ばかりが闇に消え 墾(はり)なかば兵どもはちりぢりに 浅間山あさましきまでけぶり立ち(つぶて飛び) 払へども取りつくものの声低く(太く) 朝餉(あさがれひ)かしづくものも疾うに失せ 畑が山類とのお定め 如何なりましょうか?そのほか 心許なき次第でございます。よろしくお導き賜りますようお願い申しあげます。 by 羽衣 (2016-02-27 16:38)
宗匠さま朝餉(あさがれひ)は天皇専用のようですので(親王様位はOKかしらと思いましたもので~) 修正致します。 あさけもる御供も疾うに失せたれば御供・家来 さべつようご? よろしくご指導の程お願い申し上げます。 by 羽衣 (2016-02-27 21:10)
枢(とぼそ)あき(又は、落ち)まばゆき光り差し込みぬ雑 枢は1句物にして居所体 光は光物に非ず(物でないので)といえど、光物と濃厚な関係があることに留意 古句に「枢おちたる軒は松風」があり、一連の付句の通奏低音にのれば、枢は落ちた方が似合うでしょう。 枢(とぼそ)落ちまばゆき光り差し込みぬ 枢(とぼそ)開け射し入る光をろがみぬ雑 枢・光とも同然 太刀ふるふ姿ばかりが闇に消え雑 太刀は(刃物とは冗談) この闇を夜分のようで、5句前の「あけがた」(夜分)とさわる。夜分と夜分は5句隔てる。 太刀ふるふ姿ばかりがふと消えてでいかかが? 墾(はり)なかば兵どもはちりぢりに雑 兵は人倫 浅間山あさましきまでけぶり立ち(つぶて飛び)雑 浅間山は名所・山類体用外 けぶりは聳物 5句前に「畑」(山類)が残っています。しかしながら畑が山類というのは現代では異様な分類であり、さらに中4句を隔てているので、浅間山と畑は障らないという考え方もあるでしょう。つぶては石で、石は『連珠合璧集』の分類では地儀、打越の「地の極」と障りますので、「けぶり立ち」を選んで、そ知らぬ顔をしておきましょう。 払へども取りつくものの声低く(太く)雑 句の状況から判断して「野太く」の「太く」がよろしいのでは。 払へども取りつくものの声太く あさけもる御供も疾うに失せたれば雑 朝餉・朝風などの「朝」の字は4句物ですが、ここはひらがななので形式上関係ありません。御供は人倫 by 連歌楽歳 (2016-02-27 23:33)
宗匠さまご丁寧な ご指導 ご解説を賜り誠に有り難うございました。とぼその 通奏低音的ご裁断は 流石にと感じ入りました。畑 と 山 の現代的ご解釈も勉強になりました。大変 結構に存じます。お世話になりました~皆さまには 残り僅かな この閏二ン月 をご機嫌よくお過ごしあそばされますよう~千草さま お後よろしくお願い致します。 by 羽衣 (2016-02-28 14:40)
枢(とぼそ)落ちまばゆき光り差し込みぬ 羽衣羽衣様のこちらの御句をいただきたく存じます。付け すごろくの目にこころ踊りぬ 千草 妙なるしらべ天つ空より 鶴と亀との舞のめでたさ 鳥船絵巻ひもとかれゆき 絵合はぢとなりにけらしも楽歳様、よろしくお願いいたします。 by 千草 (2016-03-02 08:37)
すごろくの目にこころ踊りぬ 千草雑 「すごろくの目」は、双六の賽の目と思われますが、盤上にも目のようなものがあるのでしょうか? ついつい徹夜で勝負してしまいました。 妙なるしらべ天つ空より雑 天つ空は天象 前句と合わせる阿弥陀如来の御来迎のようです。 鶴と亀との舞のめでたさ雑 鶴は2句物(鶴1、たづ1) 鳥類 亀は『連珠合璧集』では貝類ですが、ここの「鶴と亀」は芸能のようなので、鳥や貝類の分類はとりませんが、「鶴」の2句物はうち1つ消費になります。 鳥船絵巻ひもとかれゆき雑 図書館で大型日本語辞典を引きましたが、「岩船絵巻」なるものは見つかりませんでした。実在する巻物でしょうか? 絵合はぢとなりにけらしも雑 絵合わせのゲームで負けたのでしょうか。古風な言い回し「けらしも」が味わい深くよく効いています。 by 連歌楽歳 (2016-03-02 22:32)
楽歳様ご吟味いただいてありがとうございます。羽衣様のお句のまばゆき光のフラッシュに目がくらみそうになりながらゲーム、アニメワールドへすっとんでしまいました。 鳥船は神話の天つ鳥船ですが、このバーチャル絵巻はナウシカの風の谷にもしかするとあるような気がします。ぢは持で、訓では「もち」と古語辞典にあり、その方がよいのか決められませんでした。余計なことを申しましてお詫びいたします。遊香様、どうぞよろしくお願い申しあげます。 by 千草 (2016-03-03 08:39)
「絵合は持(ぢ)となりにけらしも」 「絵合恥ぢとなりにけらしも」並べてみると「持」の方が自然ですね。「ぢ」は辞書によると呉音ですが、そもそもの「絵合の絵(ゑ)が呉音であり、そのついでに、絵合などあわせものや勝負ごとの特殊用語ということで、「持(ぢ)」としておきます。 by 連歌楽歳 (2016-03-03 12:20)
「持」へのご一直、ありがとうございました。遅ればせながら青空を背景にした紅梅の枝枝、ほんとにきれいでございます。この春は、気温の高低はげしく、いろいろな花の盛りを一時に見ているような気がいたします。桜ももうすぐでございますね。 by 千草 (2016-03-03 16:54)
千草様の、バーチャル、アニメ…に誘われ、私も少女マンガの世界に紛れ込んだようです(笑)鳥船絵巻ひもとかれゆきいただきまして 付輩(ともがら)のはららに舞うもすずろはし 遊香目はじきやいつか縁の語り草空言(むなこと)をふはり飛ばせしあまり風ゆるゆると差しのぞきたる真澄鏡明日から3日間、東京を離れますので、その前にと滑りこみました次第です。楽歳様、いつものことながら、お手直し、よろしくお願いいたします。 by 遊香 (2016-03-04 23:23)
輩(ともがら)のはららに舞うもすずろはし 遊香雑 人倫 目はじきやいつか縁の語り草雑 目は人体 空言(むなこと)をふはり飛ばせしあまり風夏 「あまり風」は多分、極楽のあまり風のことで、涼風の意、夏。風は吹物 ゆるゆると差しのぞきたる真澄鏡雑「ますみかがみ」は6音。真澄の鏡と7音にし、中下をいれかえ、 ゆるゆると真澄の鏡さしのぞく遊香さま遠出のご様子なので、一存で変更させていただきます。 by 連歌楽歳 (2016-03-05 00:52)
空言(むなこと)をふはり飛ばせしあまり風 遊香 付 ひとり遊びの老いの軽さに 梢風 きこしめしては泳ぎ出す君 〃 仲良きことは孝の始めと 〃○「空言」句、面白いですね。楽歳様、「真澄鏡」はマスカガミで五音でよろしいのでは。 by 梢風 (2016-03-10 09:30)
空言(むなこと)をふはり飛ばせしあまり風 遊香 付 ひとり遊びの老いの軽さに 梢風 きこしめしては泳ぎ出す君 〃 仲良きことは孝の始めと 〃○「空言」句、面白いですね。楽歳様、「真澄鏡」はマスカガミで五音でよろしいのでは。 by NO NAME (2016-03-10 09:31)
ひとり遊びの老いの軽さに 梢風雑 「老い」は2句物(只1、鳥木などに1)で、只1の老いは2折裏9に既出。とりあえず外します。梢風さま、取り替えあればお送りください。 きこしめしては泳ぎ出す君夏 泳ぎ=水泳は夏の季語 「きこしめす」は飲食 君は人倫 仲良きことは孝の始めと雑 孝(こう・かう)は漢音です。しかし、訓読みがありません。「かう」を使うより手がないでしょう。 訂正辞書に真澄鏡(ますかがみ、まそかがみ)とありました。真澄の鏡の短縮形で、もっぱら短縮形の方が流通しています。連歌データベースにあたると、「ますかがみ」はたくさんの使用例がありましたが、「ますみのかがみ」はゼロでした。私の頭の中に「ますかがみ」は「増鏡」しかなかったものですから。遊香さま、失礼をお詫びして、付け句を元に戻します。 ゆるゆると差しのぞきたる真澄鏡 遊香なお、 空言(むなこと)をふはり飛ばせしあまり風 遊香は、川柳のエスプリを連歌の口調でくるんだもので、「かぜはひくとも梅にほふころ 守武」風の、俳諧の連歌創生期を思わせます。川柳の人が連歌をよむと守武風味になるというのも面白いですね。 by 連歌楽歳 (2016-03-10 13:41)
夢梯さまから以下の治定と付をいただきました。●3折表8 <治定A> きこしめしては泳ぎ出す君 梢風●3折表9<治定Aの場合>の付け 現無き心に遊ぶ滝つ瀬は 夢梯 みそぎともいひくろめたるみゆきにて 身をまかせ流るゝままに雲に問ふ夢梯さまの注では、出家した花山天皇や、遠島の貴人たちの面影。同 <治定B> 仲良きことは孝の始めと 梢風●3折表9<治定B>の場合 はらからの堪へし歳月なみだ雨 夢梯 斎川に影を落として鎧ふ嫁 はらからに代わりて鎧ふ嫁ふたり夢梯さまの注では、涙雨句は曽我兄弟の面影。鎧ふ嫁句は、佐藤継信・忠信兄弟の母が2人の死を嘆くのを見て、兄弟の妻、楓と初音が夫の鎧、兜をつけて老母を慰めたという説話が本説。 by 連歌楽歳 (2016-03-16 00:46)
前記のように、最終的治定が次回当番の楽歳に回ってきました。しばらくこのままお待ちください。思案します。 by 連歌楽歳 (2016-03-16 00:53)
きこしめしては泳ぎ出す君 梢風 ●3折表9<治定Aの場合>の付け 現無き心に遊ぶ滝つ瀬は 夢梯夏 俳諧の滝=夏を準用 連歌のころは夏に限らない 滝つ瀬は山類用・水辺体 現と夢は打越を嫌う みそぎともいひくろめたるみゆきにて雑 「須磨のみそぎ」は連歌春の季詞だが、みそぎだけでは、雑が妥当。行幸はお出かけの距離にもよるが、いちおう旅 身をまかせ流るゝままに雲に問ふ雑 身体 聳物 <治定B> 仲良きことは孝の始めと 梢風 ●3折表9<治定B>の場合 はらからの堪へし歳月なみだ雨 夢梯雑 述懐 はらからは人倫 なみだ雨は降物に非ず 斎川に影を落として鎧ふ嫁雑 斎川は宮城県白石市の地名 嫁は人倫 はらからに代わりて鎧ふ嫁ふたり雑 はらからは人倫 嫁も人倫 ふたりは数字 by 連歌楽歳 (2016-03-16 12:00)
<3折表9>に、身をまかせ流るゝままに雲に問ふ 夢梯をいただきましょう。「飲んだら乗るな。飲んだら泳ぐな」の鉄則を破った果ては「身をまかせ流るゝままに雲に問ふ」ことになるのですが、ただの土左衛門では曲もなく美しくもありません。ジョン・ミレーの『オフィーリア』や漱石『草枕』の「長良の乙女」を、ふと思い浮かべさせるような名調子は、夢梯さまのあざやかな切り替えしです。この句をいただいて、●3折10付け 川辺に揺るるやなぎ一叢(ひとむら) はやも日は暮れ鐘もかすみて 春の日うららふだらくの舟 * 川辺に揺るるやなぎ一叢(ひとむら)春 柳は木類・3句もの(只1、青柳1、秋冬の間に1) 川辺は水辺 数字 はやも日は暮れ鐘もかすみて春 鐘は4句物(只1、入相1、釈教1、異名1、日は暮れに続く鐘なので入相の鐘) 時分(日暮れ時) 春の日うららふだらくの舟春 日は光物 ふだらく(補陀落)はサンスクリット由来の語だが、『連珠合璧集』の釈教に収録。舟は水辺体用外 by 連歌楽歳 (2016-03-16 14:21)
これまで出た月はすべて秋の月でしたから、うまく呼吸があったところで春の月を楽しみましょう。これから第14くまで春を並べても5句。春5句の許容範囲です。つでに非正花の春の花など出るとあでやかになるでしょう。 by 連歌楽歳 (2016-03-16 21:59)
楽歳様アウシュヴィッツ、テレジン収容所を訪ねて帰ってまいりました。珍しく雪のないビルケナウの荒れた土に這うように生えた草に小さな白い花が咲いていました。今年も春は巡ってくるのだと、あの地に立つと当たり前のことが奇跡のように思えます。楽歳様のはやもう日は暮れ金もかすみて をいただきます。今、ちょうど、私の住む町はそんな気分です。11の付です。 早蕨を摘む乙女子の声さやか わび住まい貌よ鳥など啼くを待ち 色も香もともに競ひて花の兄どうぞご指導よろしくお願いいたします。 by 路花 (2016-03-18 17:19)
18日から21日まで仙台に行っていました。お待たせしました。 はやもう日は暮れ金もかすみて 俳諧調になり、これはこれで、消費税10パーセント実施先送りのイクスキューズのようで面白いのですが、連歌の付句は「はやも日は暮れ鐘もかすみて」でした。転記のさいの誤記と理解して、●3折表11付け 早蕨を摘む乙女子の声さやか春 早蕨は草類 乙女子は人倫 恋の気分もありますが、「乙女子」は幼い少女も言いますので、この句を恋の句と判定するには躊躇します。「さやか」は俳諧では「秋」の季語になっていますが、連歌では無季の詞として使われていました。たとえば、「くれても花はさやかなるいろ」 わび住まい貌よ鳥など啼くを待ち春 貌よ鳥(貌鳥=かほどり)は一座一句物、鳥類 わび住まいは居所、あるいはライフスタイルなら非居所 色も香もともに競ひて花の兄春 木類 「花の兄とは梅をこそいへ」という15世紀ころの句がありました。 by 連歌楽歳 (2016-03-22 00:10)
楽歳様失礼をいたしました。「金もかすみて」になっておりましたとは…。それを消費税実施先送りになぞらえてくださる宗匠様のお心遣い嬉しく思います。もちろん誤記、変換ミスでした。お許しください by 路花 (2016-03-22 11:44)
みなさまこれから30日まで楽歳は旅先です。どうぞ、おくつろぎください。楽歳 by 連歌楽歳 (2016-03-26 22:58)
宗匠さま (皆さま)ぐずぐずしておりますうちに、時間のみ経ってしまいました。ご旅行に出られるとのことですが、出発までに付句が間に合いませず、申し訳なく存じます。どうか、お元気で行っていらしてくださいませ。21日に東京で開花が宣言されましたが、このところの寒さの戻りは相当のものですね。花を長く楽しめそうなのは有難いことながら、もう少し暖かくなってほしいものです。折しも春の句になってまいりました。「正花でない春の花を」とのお勧めに促されまして、欲張って梅、椿、桜・・・と詠みたくなりました。とはいえ相変わらずの不調法。変哲もないものしかお出しできませんで、まことに恐縮に存じます。 路花様のお句 わび住まい貌よ鳥など啼くを待ち を頂戴いたしたく存じます。(僭越ながら、わび住ひ、あるいは 侘住ひ などの表記がよろしいのではないかと愚考いたしましたが、いかがでしょうか。) 拙次 古振り(いにしえぶり)に籠むる梅が香 おちし椿のなほも仰向く (あはれ椿のおちて仰向く) 八重山吹にしのぶ歌びと 紅糸桜ほつほつほつと 桃咲く里の童すこやか 春とひと文字重宝の軸宗匠様、蘭舎様、ご指導、ご一直をよろしくお願い申し上げます。 by 如月 (2016-03-27 02:51)
宗匠さま(皆さま)前回、路花さまの あはれ優しき文でありしにというお句をいただいておりました。その優雅なしらべが、心に残っていたのですね。無意識で使ってしまったようです。失礼いたしました。拙次の椿第二案(あはれ椿のおちて仰向く)は取消しさせていただきまして、代わりに、(おちし椿の仰向けるまま) を出させていただきます。また、古振りのルビは、いにしへぶり となります。これも失礼いたしました。皆様、よい日曜日になさってくださいますよう。 by 如月 (2016-03-27 09:22)
お待たせしました。旅行から帰りました。 * 古振り(いにへえぶり)に籠むる梅が香春 梅は木類で5句物、只1、紅梅1、冬木1、青梅1、紅葉1。2折裏5に白梅=梅があり、重複とも思えますが、「籠むる梅が香」となると「袖の梅が香」を思わせて木類の梅の印象が薄まります。たとえば、たえだえの霞の色に春たちて ふかくなりぬる袖の梅が香 (因幡千句第8) という付け合いがあるように、木類の印象は薄く、しかし春の季詞としての効力は残しています。「古」は一座一句物、述懐 おちし椿のなほも仰向く (おちし椿の仰向けるまま)春 椿は雑(連歌新式)、花と結ぶと春、ただの椿は雑(産衣)。この電脳連歌では俳諧の季語も場合によっては許容しています。春か雑かの最終判断は次の付句作者に一任。木類。 八重山吹にしのぶ歌びと春 山吹は一座一句物、植物分類上は木類ですが連歌では草類(連珠合璧集) 「しのぶ」で述懐 人倫 紅糸桜ほつほつほつと春 木類 桃咲く里の童すこやか春 桃は木類 里は居所体 童は人倫 春とひと文字重宝の軸春 ひと文字の「ひと」は数字 軸は居所用(多分) 重宝(ちょうほう)は漢音で連歌には不向き。 by 連歌楽歳 (2016-03-31 19:45)
楽歳さま、ご旅行はいかがでしたか?本日は雨に花がしっとりとして見えます。みなさま、ことしの花、たのしまれていることと存じます。わが家のあたり、ヤマザクラも多いのですが、ことしはすこし開花もはやいようです。お待たせしました。如月さまの、椿も桃の花もすてきですね。迷いましたが、八重山吹にしのぶ歌びとをいただきまして、雨やがて熄むことみゆる小倉山 蘭舎裾の野のわたくし雨に蓑のなく緩らかな音を廻せる水車寄り添ひてうち笑みおはす道の神わかされの小糠の雨に濡るる塚蛙にもたはぶれせむとや蓑かさむ三日三晩を宿題をとく子のようでした(笑)。一斉にはなのひらく山里の春景色を想像し、楽しませていただきました。楽歳さま、羽衣さま、なにとぞ宜しくお願い申しあげます。蘭舎拝 by 蘭舎 (2016-04-04 12:36)
雨やがて熄むことみゆる小倉山 蘭舎雑 雨は降物 小倉山は名所・山類「七重八重花は咲けども山吹のみのひとつだになきぞあやしき」(兼明親王)「小倉の家に住み侍りける頃、雨の降りける日、蓑借る人の侍りければ、山吹の枝を折りて取らせて侍りけり、心も得でまかりすぎて又の日、山吹の心得ざりしよし言ひにおこせて侍りける返りに言ひつかはしける」。面影付け 裾の野のわたくし雨に蓑のなく雑 裾の野は地儀 雨は降物「山吹の咲きたる野辺のつぼすみれこの春の雨に盛りなりけり」(高田女王)をふまえ、山吹→裾の野。 緩らかな音を廻せる水車雑 水車(みづくるま)は水辺用でしょう(懸樋が水辺用ですから)。井出の山吹→井出の水車 寄り添ひてうち笑みおはす道の神雑 道の神は神祇(でしょう) 信州には寄り添う道祖神が多いですね。 わかされの小糠の雨に濡るる塚雑 「わかされ」は信州・追分の分去れのことで、地儀(名所とするにはややマイナーか) 雨は降物 この塚が墓なのか単なる土盛なのかは不明 「分去れ」に「来ぬか」とシャレも入れて。 蛙にもたはぶれせむとや蓑かさむ春 蛙は連歌では虫類(連珠合璧集)・水辺用 山吹→かはづ「かはづ鳴く井出の山吹散りにけり花のさかりにあはましものを」(よみ人知らず・古今集) 『連歌新式』に「虫に鳥」は3句隔てるとありますが、「鳥と虫」「鳥に虫」については言及がありません。(カエルを捕食する鳥もいますが)鳥(貌よ鳥)のあとの虫(カエル)はOKと判断しましょう。 by 連歌楽歳 (2016-04-04 15:36)
宗匠さま 皆さま佳き花の季節をお楽しみ遊ばされたことと存じます。当方も此度はじめての中国、江南の春を満喫致して参りました。折しも清明節の連休とかでごった返しておりまして、あらためてチャイニーズパワーに圧倒され暫しエネルギー喪失状態ですがよろしくお願い致します。ちなみに雨上がり、蘭亭散策では蛙が鳴いておりました。 蛙にもたはぶれせむとや蓑かさむ 蘭舎さま 付け おぼろ月夜の旅の手枕 おぼろの月を享くる盃(さかづき) 弥生かたらふ舟べりの月 月の朧にほろ酔ひて候 翌なき春をてらす月の出 筆のすさびの止まぬ朧夜 朧ぼろぼろ月の揺らめく春の月とのサゼスチョンがございましたようで 一応案じてみましたがよろしかったでしょうか? お差し戻し ご一直等 何なりとよろしくお願い申し上げます。 by 羽衣 (2016-04-10 16:47)
おぼろ月夜の旅の手枕春 月 光物 夜分 旅 おぼろの月を享くる盃(さかづき)春 月 光物 夜分 盃で飲食 弥生かたらふ舟べりの月春 弥生は時節 月 夜分 光物 舟は水辺体用外 月の朧にほろ酔ひて候春 月 光物 ほろ酔いは飲食(の結果) 翌なき春をてらす月の出春 月 光物 夜分 筆のすさびの止まぬ朧夜春 月 夜分(俳句歳時記のなかには、朧夜は朧月夜の略とするものがありますので、この場合、その説に従っておきます。連歌では、通常、「朧」だけでは雑、月と結んで春になります) 朧ぼろぼろ月の揺らめく春 月 夜分以上、これで第10句から春の句連続めいっぱいの5句となりました。 *羽衣さま、江南とは良い所へ良い時期にお出かけでしたね。 ――「江南春」杜牧――千里鶯啼いて緑紅に映ず水村山郭酒旗の風 南朝四百八十寺多少の楼台煙雨の中お疲れのところ、たくさんの付句をありがとうございました。 by 連歌楽歳 (2016-04-10 20:14)
宗匠さま早速のご教示有り難うございました。毛吹草の連歌四季之詞をたのみとするものですが 道理で朧のみはございませんでした。 橋朧 などでしたら 雑になるのですね~びっくりぽん! 勉強になりました。因みに 連歌では 三春(春全体に関わる季語)という分類はない様で~いまさらながら古人の繊細な感覚と文化しきたりはこのアバウトな身によき鍛錬となりましょう。有り難うございました。江南旅は慌ただしいエコノミーツアーでしたが百聞は一見に如かず で(連休中の渋滞 混雑はありましたが 柳や樟の若葉が殊に素晴しい時)初心者としては取り敢えず良い処だけ見て(悪しきは目をつぶり)大満足でした。誠に杜牧の七言絶句の如く(四百八十寺はなかったですが 代わりに 新興団地建設めざましく) 晴れた日 雨の日 存外に落ち着いた街並と風情(一党独裁の強み?)に感嘆致しました。 ご丁寧な「江南春」ご掲載恐縮に存じます。 また近々台北のお話などよろしくお願い申し上げます。 有り難うございました。では千草さま お待たせ申し上げました。折立宜しくお願い致します。 by 羽衣 (2016-04-11 14:03)
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<3折表1治定>
ふり返ることのみ多き秋の道 楽歳
<3折表2付け>
あはれ優しき文でありしに 路花
いま気づきしは袖のほころび
みづらに結ひし髪もほうけて
*
あはれ優しき文でありしに
雑 文は3句もの(恋1、旅1、文学1、このケースは恋でしょう)「ありしに」で懐旧のひびきも出ます。この句が恋・懐旧になり、前句の「ふり返る」は動作ではなく、追憶という心の動きになり、前句も懐旧となります。
いま気づきしは袖のほころび
雑 衣類、袖と袖は5句隔てる 連歌の場合「袖の露」「袖を絞る」「袖を振る」「袖返す」などのイディオムを使いますが、「袖のほころび」は出連歌・入俳諧的表現。とはいうものの、いま連歌を再演しようとすれば、俳諧的要素抜きではもはや成り立ちませんので、袖のほころびも風雅のうちです。
みづらに結ひし髪もほうけて
雑 髪は人体 この句、なぜか「狂句こがらしの身は竹斎に似たる哉 芭蕉」を連想させます。となると、前句の「秋の道」は「此道や行人なしに秋の暮」に似たセンチメンタリズムに似てきます。
by 連歌楽歳 (2016-02-12 17:25)
宗匠さま、皆さま
おはようございます。天気予報のとおり、明るく暖かい朝です。
さて、たいへんお待たせいたしてしまいまして、申し訳ございませんでした。
路花さまの
あはれ優しき文でありしに
を頂戴いたしたく存じます。
拙付
浮かれ女のそでなからうは常なれど
海原の果てへの想ひやみがたく
魂のあくがれ歩(あり)く地の極(はたて)
吾妹子に淡路の島ゆ船出して
なお、四句目の「吾妹子に」は枕言葉として用いました。よろしかったでしょうか。「ゆ」の使用も可能でしたでしょうか。
それも含めまして、拙次へのご指導、なにとぞよろしくお願い申し上げます。
by 如月 (2016-02-19 10:44)
浮かれ女のそでなからうは常なれど
雑 恋 浮かれ女は人倫 「そでなからう」の意味は?
海原の果てへの想ひやみがたく
雑 恋の句とも読めますが、コロンブスの例もあるので。旅。海原は水辺体、5句前に「波音」(水辺用)があります。水辺同士は5句を隔てるしきたり。 「海原」に代わるものを御考案ください。
魂のあくがれ歩(あり)く地の極(はたて)
雑 旅 地の極は地儀 こちらはマルコ・ポーロのおもかげ
吾妹子に淡路の島ゆ船出して
雑 恋(枕詞「吾妹子」が「淡路」「逢坂」にかかる理由を考えると) 旅 淡路は「難波」「志賀」などと同じく名所・非水辺。淡路の島としても同じ。「船出して」は「ふなでして」「ふねだして」ともに水辺のにおいが強いので、「漕ぎだして」あるいは「漕ぎ出でて」としてはいかがでしょうか。
吾妹子に淡路の島ゆ漕ぎ出でて
by 連歌楽歳 (2016-02-19 14:27)
送信後に気付きました。
吾妹子に淡路の島ゆ船出して
は、「淡路」と打越の「秋の道」が嫌いあうと『連歌新式』にありました。この句、残念ながら外します。
by 連歌楽歳 (2016-02-19 14:41)
宗匠様
ご教示・ご指導、いろいろとありがとうございました。
●まず「そでなからう」ですが、「そでなし(然で無し)」(=素っ気ない、すげない、冷たいの意。「袖なし」と表記されることもあるようです)に推量の意味を加えた表現のつもりですが、文法的には、いかがでしょうか。「そでなからん」でしょうか。
ちなみに今月の歌舞伎座で上演中の『籠釣瓶』では、花魁の八ッ橋から突然の愛想尽かし(実は本心からではなく、やむを得ない理由があるのですが)をされた主人公・次郎左衛門が「花魁、え、そりゃア袖なかろうぜ」 と悲痛な叫びをあげる吉原の座敷の場は、歌舞伎名場面の一つとされています。私も先週観てきましたが、吉右衛門演じる次郎左衛門の悲哀の表出には、戦慄させるものがありました。
●「海原の果て」は、「雲ながる果て」ではいかがかと思いましたが、「雲ながるる果て」としなくてはいけないでしょうね。また、6句前に「白雲」がありました。
別案として、「風通う果て」「おほぞらの果て」も、考えてみました。
なお、私としては恋+旅の句のつもりで作りました。
●「淡路」「淡路島」は名所であって水辺ではない、というのは面白いというか、不思議というか。つまりは、路と道が障るということでしょうか。もし、漢字の問題であるなら、
吾妹子にあはぢの島ゆ漕ぎ出でて と
仮名書きでは駄目でしょうか。吾妹子という枕詞の使用は私にとって初めての体験ですので、可能なことなら残していただけたら有難いのですが。「あはぢ」でも、単語自体が「道」と障るのであれば、致し方ございません。
よろしくご指導のほど、お願い申し上げます。
by 如月 (2016-02-20 00:17)
宗匠様
先ほどお送りした文面のうち、
「風通う果て」は、「風通ふ果て」と
してくださいませ。
うっかりといたしてしまいました。よろしくお願い申し上げます。
by 如月 (2016-02-20 00:27)
如月さま
「そでなからう」は歌舞伎のセリフでしたか。インターネット情報では、明治の初演後に流行語になったそうですね。もっとも、このセリフの後に主人公はダンビラを振り回して花魁を切り殺す殺伐とした吉原物で、どうも連歌の本説には向いていないようですが、前後の脈絡は取れましたので、このままの形で入れておきましょう。
風通ふ果てへの想ひやみがたく
雑 風は吹物 「想ひ」は恋の用語 新古今集に「人はこでかぜのけしきもふけぬるにあはれにかりの音づれてゆく 西行法師」の恋の歌がありますので、恋。
吾妹子に淡路の島ゆ漕ぎ出でて
とし、この句が治定された場合は、打越句の「ふり返ることのみ多き秋の道」を「・・・・・・秋時雨」と変えることにしましょう。
by 連歌楽歳 (2016-02-20 01:47)
宗匠様
吾妹子の句が治定された場合は、後からの句のために、前にある御句の言葉を変えてくださるとは・・・温情あふれるお捌きに、恐縮しつつ心より感謝いたします。候補に入れておいてくださいまして、ありがとうございました。
なお芝居では、縁切りを一旦は受け容れて故郷に帰った主人公が数ヵ月後にまた吉原に現れ、八ッ橋ならびに茶屋の女たちなど大勢を切り殺す、という筋になっており、大量殺人は家代々の宝刀・妖剣「籠釣瓶」の魔力のなせる業だったという”こじつけ”がなされています。そもそも歌舞伎には、愛想尽かし(たいていは偽りの)をされた男が殺害行為に及ぶ(無差別大量殺人や間違い殺人など)という筋書きが沢山あり、また妖剣や魔剣のせいであったという”オチ”がついているケースが相当数みられます。本人の所為でなく剣が勝手に殺してしまったという非合理な”設定”にはどういう意味が籠められているのか、これは私にとってたいへん興味ある問題です。すみません、クダクダと書きこんでしまいました。不愉快な話題と思われた方もいらっしゃいましょう。おゆるしくださいませ。
宗匠様、ありがとうございました。
蘭舎様、治定をよろしくお願い申し上げます。
by 如月 (2016-02-21 01:33)
宗匠様 蘭舎様 皆様
おはようございます。
昨日一日中の雨のあと、今日は晴れるということですので、期待しております、
昨夜はいろいろと書き込んでしまいまして、失礼いたしました。
あのように書きましたが、それは路子さまの御句から私がいただいた連想から、有名科白を引用させていただいたまでに他なりません。決して「籠釣瓶」の世界だけを句に籠めたのではございませんので、どうかその点誤解なされませんよう、お願い申し上げます。
自句の解説は一切すべきでないというのは、こういうことなのでしょうね。不行き届き、なにとぞご寛恕ください。
by 如月 (2016-02-21 11:03)
如月さまの春寒し。またもやお待たせ致しまして、申し訳ございません。
去嫌、差し合い、まだ、十分に呑み込めておりませんので、いろいろとご迷惑おかけしそうですが、付けてみました。
魂のあくがれ歩(あり)く地の極(はたて)
をいただきまして、
殿ばらは歌うめき誦じつ
甚だ雪の吹き舞ひし朝
雪あられなど吹き入りし軒
蜘蛛の巣こぼれのこりたる館(たち)
足踏みはづす西のきざはし
霞の島を伏し拝みたり
霞の島は山でも岩でも、障りのないところで、よろしく御願いいたします。
楽歳さま、そして、羽衣さま、なにとぞ、よしなに。
蘭舎拝
by 蘭舎 (2016-02-26 15:57)
さきほどの、コメント、なぜか、印字が飛んでしまって、変になってしまいました。あわて床屋、開業中。
春寒し。・・・・
如月さまの・・・をいただきまして・・・
とお読みつなぎ下さいませ。蘭舎拝。
by 蘭舎 (2016-02-26 16:01)
殿ばらは歌うめき誦じつ
雑 人倫 「誦じつ」に読みをいれましょう。「誦(ずん)じつ」でよろしいでしょうか。
甚だ雪の吹き舞ひし朝
冬 雪は降物・4句もの(初折裏4に雪まぜ、2折表に春の雪。春の雪は4句物の雪とは別枠なので、これが雪の既出2句目) 「吹き舞ひ」で暗意・吹物 朝は2句もの(只1、けさ1)、あいにく2折表8に既出。「今朝(けさ)」に変更しましょう。時分
雪あられなど吹き入りし軒
冬 雪(4句ものの既出2句目)、あられともに降物 「吹き入りし」で暗意・吹物 軒は居所体
蜘蛛の巣こぼれのこりたる館(たち)
雑 蜘蛛の巣は俳諧で夏ですが、「こぼれのこりりたる」で、雑の気配。 館は小規模な城あるいは官舎、居所体のうちか
足踏みはづす西のきざはし
雑 足は人体 西は方角 階は居所体
by 連歌楽歳 (2016-02-26 23:00)
楽歳さま
お手数おかけいたしました。
読み、結構です。よろしく御願いいたします。
寒さももうしばらくですね。みなさま、ご自愛ください。 蘭舎 拝
by 蘭舎 (2016-02-27 09:01)
忘れ物がありました。
霞の島を伏し拝みたり
春 島は水辺・山類 山類は4句前の2折裏14にあります。「畑」が山類というのも、東南アジアの山岳民族風で変な話ですが、古典連歌はそういう約束だったのでしょう。いわくありげな伏し拝む「霞の島」を「霞の洞」(仙人のすみか・上皇の御所)に変えてはとおもいましたが、「洞」も本来山類なのでひっかかるところがあります。残念ながらはずします。
by 連歌楽歳 (2016-02-27 10:18)
宗匠さま 皆さま
名実ともに 春のひかり まばゆく うろ覚えの春望など思い浮かべて
おります。
扨 三折表四句目 蘭舎さま御句より
蜘蛛の巣こぼれのこりたる館(たち) 頂戴致します。(雑)
付け
枢(とぼそ)あき(又は、落ち)まばゆき光り差し込みぬ
枢(とぼそ)開け射し入る光をろがみぬ
太刀ふるふ姿ばかりが闇に消え
墾(はり)なかば兵どもはちりぢりに
浅間山あさましきまでけぶり立ち(つぶて飛び)
払へども取りつくものの声低く(太く)
朝餉(あさがれひ)かしづくものも疾うに失せ
畑が山類とのお定め 如何なりましょうか?
そのほか 心許なき次第でございます。
よろしくお導き賜りますようお願い申しあげます。
by 羽衣 (2016-02-27 16:38)
宗匠さま
朝餉(あさがれひ)は天皇専用のようですので(親王様位はOKかしらと思いましたもので~) 修正致します。
あさけもる御供も疾うに失せたれば
御供・家来 さべつようご? よろしくご指導の程お願い申し上げます。
by 羽衣 (2016-02-27 21:10)
枢(とぼそ)あき(又は、落ち)まばゆき光り差し込みぬ
雑 枢は1句物にして居所体 光は光物に非ず(物でないので)といえど、光物と濃厚な関係があることに留意 古句に「枢おちたる軒は松風」があり、一連の付句の通奏低音にのれば、枢は落ちた方が似合うでしょう。
枢(とぼそ)落ちまばゆき光り差し込みぬ
枢(とぼそ)開け射し入る光をろがみぬ
雑 枢・光とも同然
太刀ふるふ姿ばかりが闇に消え
雑 太刀は(刃物とは冗談) この闇を夜分のようで、5句前の「あけがた」(夜分)とさわる。夜分と夜分は5句隔てる。
太刀ふるふ姿ばかりがふと消えて
でいかかが?
墾(はり)なかば兵どもはちりぢりに
雑 兵は人倫
浅間山あさましきまでけぶり立ち(つぶて飛び)
雑 浅間山は名所・山類体用外 けぶりは聳物 5句前に「畑」(山類)が残っています。しかしながら畑が山類というのは現代では異様な分類であり、さらに中4句を隔てているので、浅間山と畑は障らないという考え方もあるでしょう。つぶては石で、石は『連珠合璧集』の分類では地儀、打越の「地の極」と障りますので、「けぶり立ち」を選んで、そ知らぬ顔をしておきましょう。
払へども取りつくものの声低く(太く)
雑 句の状況から判断して「野太く」の「太く」がよろしいのでは。
払へども取りつくものの声太く
あさけもる御供も疾うに失せたれば
雑 朝餉・朝風などの「朝」の字は4句物ですが、ここはひらがななので形式上関係ありません。御供は人倫
by 連歌楽歳 (2016-02-27 23:33)
宗匠さま
ご丁寧な ご指導 ご解説を賜り誠に有り難うございました。
とぼその 通奏低音的ご裁断は 流石にと感じ入りました。
畑 と 山 の現代的ご解釈も勉強になりました。
大変 結構に存じます。お世話になりました~
皆さまには 残り僅かな この閏二ン月 をご機嫌よくお過ごし
あそばされますよう~
千草さま
お後よろしくお願い致します。
by 羽衣 (2016-02-28 14:40)
枢(とぼそ)落ちまばゆき光り差し込みぬ 羽衣
羽衣様のこちらの御句をいただきたく存じます。
付け
すごろくの目にこころ踊りぬ 千草
妙なるしらべ天つ空より
鶴と亀との舞のめでたさ
鳥船絵巻ひもとかれゆき
絵合はぢとなりにけらしも
楽歳様、よろしくお願いいたします。
by 千草 (2016-03-02 08:37)
すごろくの目にこころ踊りぬ 千草
雑 「すごろくの目」は、双六の賽の目と思われますが、盤上にも目のようなものがあるのでしょうか? ついつい徹夜で勝負してしまいました。
妙なるしらべ天つ空より
雑 天つ空は天象 前句と合わせる阿弥陀如来の御来迎のようです。
鶴と亀との舞のめでたさ
雑 鶴は2句物(鶴1、たづ1) 鳥類 亀は『連珠合璧集』では貝類ですが、ここの「鶴と亀」は芸能のようなので、鳥や貝類の分類はとりませんが、「鶴」の2句物はうち1つ消費になります。
鳥船絵巻ひもとかれゆき
雑 図書館で大型日本語辞典を引きましたが、「岩船絵巻」なるものは見つかりませんでした。実在する巻物でしょうか?
絵合はぢとなりにけらしも
雑 絵合わせのゲームで負けたのでしょうか。古風な言い回し「けらしも」が味わい深くよく効いています。
by 連歌楽歳 (2016-03-02 22:32)
楽歳様
ご吟味いただいてありがとうございます。
羽衣様のお句のまばゆき光のフラッシュに目がくらみそうになりながら
ゲーム、アニメワールドへすっとんでしまいました。
鳥船は神話の天つ鳥船ですが、このバーチャル絵巻はナウシカの風の谷にもしかするとあるような気がします。
ぢは持で、訓では「もち」と古語辞典にあり、その方がよいのか決められませんでした。
余計なことを申しましてお詫びいたします。
遊香様、どうぞよろしくお願い申しあげます。
by 千草 (2016-03-03 08:39)
「絵合は持(ぢ)となりにけらしも」
「絵合恥ぢとなりにけらしも」
並べてみると「持」の方が自然ですね。「ぢ」は辞書によると呉音ですが、そもそもの「絵合の絵(ゑ)が呉音であり、そのついでに、絵合などあわせものや勝負ごとの特殊用語ということで、「持(ぢ)」としておきます。
by 連歌楽歳 (2016-03-03 12:20)
「持」へのご一直、ありがとうございました。
遅ればせながら
青空を背景にした紅梅の枝枝、
ほんとにきれいでございます。
この春は、気温の高低はげしく、いろいろな花の盛りを
一時に見ているような気がいたします。
桜ももうすぐでございますね。
by 千草 (2016-03-03 16:54)
千草様の、バーチャル、アニメ…に誘われ、
私も少女マンガの世界に紛れ込んだようです(笑)
鳥船絵巻ひもとかれゆき
いただきまして 付
輩(ともがら)のはららに舞うもすずろはし 遊香
目はじきやいつか縁の語り草
空言(むなこと)をふはり飛ばせしあまり風
ゆるゆると差しのぞきたる真澄鏡
明日から3日間、東京を離れますので、
その前にと滑りこみました次第です。
楽歳様、いつものことながら、
お手直し、よろしくお願いいたします。
by 遊香 (2016-03-04 23:23)
輩(ともがら)のはららに舞うもすずろはし 遊香
雑 人倫
目はじきやいつか縁の語り草
雑 目は人体
空言(むなこと)をふはり飛ばせしあまり風
夏 「あまり風」は多分、極楽のあまり風のことで、涼風の意、夏。風は吹物
ゆるゆると差しのぞきたる真澄鏡
雑「ますみかがみ」は6音。真澄の鏡と7音にし、中下をいれかえ、
ゆるゆると真澄の鏡さしのぞく
遊香さま遠出のご様子なので、一存で変更させていただきます。
by 連歌楽歳 (2016-03-05 00:52)
空言(むなこと)をふはり飛ばせしあまり風 遊香
付
ひとり遊びの老いの軽さに 梢風
きこしめしては泳ぎ出す君 〃
仲良きことは孝の始めと 〃
○「空言」句、面白いですね。楽歳様、「真澄鏡」はマスカガミで五音でよろしいのでは。
by 梢風 (2016-03-10 09:30)
空言(むなこと)をふはり飛ばせしあまり風 遊香
付
ひとり遊びの老いの軽さに 梢風
きこしめしては泳ぎ出す君 〃
仲良きことは孝の始めと 〃
○「空言」句、面白いですね。楽歳様、「真澄鏡」はマスカガミで五音でよろしいのでは。
by NO NAME (2016-03-10 09:31)
ひとり遊びの老いの軽さに 梢風
雑 「老い」は2句物(只1、鳥木などに1)で、只1の老いは2折裏9に既出。とりあえず外します。梢風さま、取り替えあればお送りください。
きこしめしては泳ぎ出す君
夏 泳ぎ=水泳は夏の季語 「きこしめす」は飲食 君は人倫
仲良きことは孝の始めと
雑 孝(こう・かう)は漢音です。しかし、訓読みがありません。「かう」を使うより手がないでしょう。
訂正
辞書に真澄鏡(ますかがみ、まそかがみ)とありました。真澄の鏡の短縮形で、もっぱら短縮形の方が流通しています。連歌データベースにあたると、「ますかがみ」はたくさんの使用例がありましたが、「ますみのかがみ」はゼロでした。私の頭の中に「ますかがみ」は「増鏡」しかなかったものですから。遊香さま、失礼をお詫びして、付け句を元に戻します。
ゆるゆると差しのぞきたる真澄鏡 遊香
なお、
空言(むなこと)をふはり飛ばせしあまり風 遊香
は、川柳のエスプリを連歌の口調でくるんだもので、「かぜはひくとも梅にほふころ 守武」風の、俳諧の連歌創生期を思わせます。川柳の人が連歌をよむと守武風味になるというのも面白いですね。
by 連歌楽歳 (2016-03-10 13:41)
夢梯さまから以下の治定と付をいただきました。
●3折表8 <治定A>
きこしめしては泳ぎ出す君 梢風
●3折表9<治定Aの場合>の付け
現無き心に遊ぶ滝つ瀬は 夢梯
みそぎともいひくろめたるみゆきにて
身をまかせ流るゝままに雲に問ふ
夢梯さまの注では、出家した花山天皇や、遠島の貴人たちの面影。
同 <治定B>
仲良きことは孝の始めと 梢風
●3折表9<治定B>の場合
はらからの堪へし歳月なみだ雨 夢梯
斎川に影を落として鎧ふ嫁
はらからに代わりて鎧ふ嫁ふたり
夢梯さまの注では、涙雨句は曽我兄弟の面影。鎧ふ嫁句は、佐藤継信・忠信兄弟の母が2人の死を嘆くのを見て、兄弟の妻、楓と初音が夫の鎧、兜をつけて老母を慰めたという説話が本説。
by 連歌楽歳 (2016-03-16 00:46)
前記のように、最終的治定が次回当番の楽歳に回ってきました。
しばらくこのままお待ちください。思案します。
by 連歌楽歳 (2016-03-16 00:53)
きこしめしては泳ぎ出す君 梢風
●3折表9<治定Aの場合>の付け
現無き心に遊ぶ滝つ瀬は 夢梯
夏 俳諧の滝=夏を準用 連歌のころは夏に限らない 滝つ瀬は山類用・水辺体 現と夢は打越を嫌う
みそぎともいひくろめたるみゆきにて
雑 「須磨のみそぎ」は連歌春の季詞だが、みそぎだけでは、雑が妥当。行幸はお出かけの距離にもよるが、いちおう旅
身をまかせ流るゝままに雲に問ふ
雑 身体 聳物
<治定B>
仲良きことは孝の始めと 梢風
●3折表9<治定B>の場合
はらからの堪へし歳月なみだ雨 夢梯
雑 述懐 はらからは人倫 なみだ雨は降物に非ず
斎川に影を落として鎧ふ嫁
雑 斎川は宮城県白石市の地名 嫁は人倫
はらからに代わりて鎧ふ嫁ふたり
雑 はらからは人倫 嫁も人倫 ふたりは数字
by 連歌楽歳 (2016-03-16 12:00)
<3折表9>に、
身をまかせ流るゝままに雲に問ふ 夢梯
をいただきましょう。
「飲んだら乗るな。飲んだら泳ぐな」の鉄則を破った果ては「身をまかせ流るゝままに雲に問ふ」ことになるのですが、ただの土左衛門では曲もなく美しくもありません。ジョン・ミレーの『オフィーリア』や漱石『草枕』の「長良の乙女」を、ふと思い浮かべさせるような名調子は、夢梯さまのあざやかな切り替えしです。この句をいただいて、
●3折10付け
川辺に揺るるやなぎ一叢(ひとむら)
はやも日は暮れ鐘もかすみて
春の日うららふだらくの舟
*
川辺に揺るるやなぎ一叢(ひとむら)
春 柳は木類・3句もの(只1、青柳1、秋冬の間に1) 川辺は水辺 数字
はやも日は暮れ鐘もかすみて
春 鐘は4句物(只1、入相1、釈教1、異名1、日は暮れに続く鐘なので入相の鐘) 時分(日暮れ時)
春の日うららふだらくの舟
春 日は光物 ふだらく(補陀落)はサンスクリット由来の語だが、『連珠合璧集』の釈教に収録。舟は水辺体用外
by 連歌楽歳 (2016-03-16 14:21)
これまで出た月はすべて秋の月でしたから、うまく呼吸があったところで春の月を楽しみましょう。これから第14くまで春を並べても5句。春5句の許容範囲です。つでに非正花の春の花など出るとあでやかになるでしょう。
by 連歌楽歳 (2016-03-16 21:59)
楽歳様
アウシュヴィッツ、テレジン収容所を訪ねて帰ってまいりました。珍しく雪のないビルケナウの荒れた土に這うように生えた草に小さな白い花が咲いていました。今年も春は巡ってくるのだと、あの地に立つと当たり前のことが奇跡のように思えます。
楽歳様の
はやもう日は暮れ金もかすみて
をいただきます。今、ちょうど、私の住む町はそんな気分です。
11の付です。
早蕨を摘む乙女子の声さやか
わび住まい貌よ鳥など啼くを待ち
色も香もともに競ひて花の兄
どうぞご指導よろしくお願いいたします。
by 路花 (2016-03-18 17:19)
18日から21日まで仙台に行っていました。お待たせしました。
はやもう日は暮れ金もかすみて
俳諧調になり、これはこれで、消費税10パーセント実施先送りのイクスキューズのようで面白いのですが、連歌の付句は「はやも日は暮れ鐘もかすみて」でした。転記のさいの誤記と理解して、
●3折表11付け
早蕨を摘む乙女子の声さやか
春 早蕨は草類 乙女子は人倫 恋の気分もありますが、「乙女子」は幼い少女も言いますので、この句を恋の句と判定するには躊躇します。「さやか」は俳諧では「秋」の季語になっていますが、連歌では無季の詞として使われていました。たとえば、「くれても花はさやかなるいろ」
わび住まい貌よ鳥など啼くを待ち
春 貌よ鳥(貌鳥=かほどり)は一座一句物、鳥類 わび住まいは居所、あるいはライフスタイルなら非居所
色も香もともに競ひて花の兄
春 木類 「花の兄とは梅をこそいへ」という15世紀ころの句がありました。
by 連歌楽歳 (2016-03-22 00:10)
楽歳様
失礼をいたしました。「金もかすみて」になっておりましたとは…。
それを消費税実施先送りになぞらえてくださる宗匠様のお心遣い嬉しく思います。もちろん誤記、変換ミスでした。お許しください
by 路花 (2016-03-22 11:44)
みなさま
これから30日まで楽歳は旅先です。
どうぞ、おくつろぎください。
楽歳
by 連歌楽歳 (2016-03-26 22:58)
宗匠さま (皆さま)
ぐずぐずしておりますうちに、時間のみ経ってしまいました。ご旅行に出られるとのことですが、出発までに付句が間に合いませず、申し訳なく存じます。どうか、お元気で行っていらしてくださいませ。
21日に東京で開花が宣言されましたが、このところの寒さの戻りは相当のものですね。花を長く楽しめそうなのは有難いことながら、もう少し暖かくなってほしいものです。
折しも春の句になってまいりました。「正花でない春の花を」とのお勧めに促されまして、欲張って梅、椿、桜・・・と詠みたくなりました。とはいえ相変わらずの不調法。変哲もないものしかお出しできませんで、まことに恐縮に存じます。
路花様のお句
わび住まい貌よ鳥など啼くを待ち
を頂戴いたしたく存じます。
(僭越ながら、わび住ひ、あるいは 侘住ひ などの表記がよろしいのではないかと愚考いたしましたが、いかがでしょうか。)
拙次
古振り(いにしえぶり)に籠むる梅が香
おちし椿のなほも仰向く
(あはれ椿のおちて仰向く)
八重山吹にしのぶ歌びと
紅糸桜ほつほつほつと
桃咲く里の童すこやか
春とひと文字重宝の軸
宗匠様、蘭舎様、ご指導、ご一直をよろしくお願い申し上げます。
by 如月 (2016-03-27 02:51)
宗匠さま(皆さま)
前回、路花さまの
あはれ優しき文でありしに
というお句をいただいておりました。その優雅なしらべが、心に残っていたのですね。無意識で使ってしまったようです。失礼いたしました。
拙次の椿第二案(あはれ椿のおちて仰向く)は取消しさせていただきまして、代わりに、
(おちし椿の仰向けるまま)
を出させていただきます。
また、古振りのルビは、いにしへぶり となります。これも失礼いたしました。
皆様、よい日曜日になさってくださいますよう。
by 如月 (2016-03-27 09:22)
お待たせしました。旅行から帰りました。
*
古振り(いにへえぶり)に籠むる梅が香
春 梅は木類で5句物、只1、紅梅1、冬木1、青梅1、紅葉1。2折裏5に白梅=梅があり、重複とも思えますが、「籠むる梅が香」となると「袖の梅が香」を思わせて木類の梅の印象が薄まります。たとえば、
たえだえの霞の色に春たちて
ふかくなりぬる袖の梅が香
(因幡千句第8)
という付け合いがあるように、木類の印象は薄く、しかし春の季詞としての効力は残しています。「古」は一座一句物、述懐
おちし椿のなほも仰向く
(おちし椿の仰向けるまま)
春 椿は雑(連歌新式)、花と結ぶと春、ただの椿は雑(産衣)。この電脳連歌では俳諧の季語も場合によっては許容しています。春か雑かの最終判断は次の付句作者に一任。木類。
八重山吹にしのぶ歌びと
春 山吹は一座一句物、植物分類上は木類ですが連歌では草類(連珠合璧集) 「しのぶ」で述懐 人倫
紅糸桜ほつほつほつと
春 木類
桃咲く里の童すこやか
春 桃は木類 里は居所体 童は人倫
春とひと文字重宝の軸
春 ひと文字の「ひと」は数字 軸は居所用(多分) 重宝(ちょうほう)は漢音で連歌には不向き。
by 連歌楽歳 (2016-03-31 19:45)
楽歳さま、ご旅行はいかがでしたか?
本日は雨に花がしっとりとして見えます。みなさま、ことしの花、たのしまれていることと存じます。
わが家のあたり、ヤマザクラも多いのですが、ことしはすこし開花もはやいようです。
お待たせしました。如月さまの、椿も桃の花もすてきですね。迷いましたが、
八重山吹にしのぶ歌びと
をいただきまして、
雨やがて熄むことみゆる小倉山 蘭舎
裾の野のわたくし雨に蓑のなく
緩らかな音を廻せる水車
寄り添ひてうち笑みおはす道の神
わかされの小糠の雨に濡るる塚
蛙にもたはぶれせむとや蓑かさむ
三日三晩を宿題をとく子のようでした(笑)。
一斉にはなのひらく山里の春景色を想像し、楽しませていただきました。
楽歳さま、羽衣さま、なにとぞ宜しくお願い申しあげます。
蘭舎拝
by 蘭舎 (2016-04-04 12:36)
雨やがて熄むことみゆる小倉山 蘭舎
雑 雨は降物 小倉山は名所・山類
「七重八重花は咲けども山吹のみのひとつだになきぞあやしき」(兼明親王)
「小倉の家に住み侍りける頃、雨の降りける日、蓑借る人の侍りければ、山吹の枝を折りて取らせて侍りけり、心も得でまかりすぎて又の日、山吹の心得ざりしよし言ひにおこせて侍りける返りに言ひつかはしける」。面影付け
裾の野のわたくし雨に蓑のなく
雑 裾の野は地儀 雨は降物
「山吹の咲きたる野辺のつぼすみれこの春の雨に盛りなりけり」(高田女王)をふまえ、山吹→裾の野。
緩らかな音を廻せる水車
雑 水車(みづくるま)は水辺用でしょう(懸樋が水辺用ですから)。
井出の山吹→井出の水車
寄り添ひてうち笑みおはす道の神
雑 道の神は神祇(でしょう) 信州には寄り添う道祖神が多いですね。
わかされの小糠の雨に濡るる塚
雑 「わかされ」は信州・追分の分去れのことで、地儀(名所とするにはややマイナーか) 雨は降物 この塚が墓なのか単なる土盛なのかは不明 「分去れ」に「来ぬか」とシャレも入れて。
蛙にもたはぶれせむとや蓑かさむ
春 蛙は連歌では虫類(連珠合璧集)・水辺用 山吹→かはづ「かはづ鳴く井出の山吹散りにけり花のさかりにあはましものを」(よみ人知らず・古今集) 『連歌新式』に「虫に鳥」は3句隔てるとありますが、「鳥と虫」「鳥に虫」については言及がありません。(カエルを捕食する鳥もいますが)鳥(貌よ鳥)のあとの虫(カエル)はOKと判断しましょう。
by 連歌楽歳 (2016-04-04 15:36)
宗匠さま 皆さま
佳き花の季節をお楽しみ遊ばされたことと存じます。
当方も此度はじめての中国、江南の春を満喫致して参りました。
折しも清明節の連休とかでごった返しておりまして、あらためて
チャイニーズパワーに圧倒され暫しエネルギー喪失状態ですが
よろしくお願い致します。
ちなみに雨上がり、蘭亭散策では蛙が鳴いておりました。
蛙にもたはぶれせむとや蓑かさむ 蘭舎さま
付け
おぼろ月夜の旅の手枕
おぼろの月を享くる盃(さかづき)
弥生かたらふ舟べりの月
月の朧にほろ酔ひて候
翌なき春をてらす月の出
筆のすさびの止まぬ朧夜
朧ぼろぼろ月の揺らめく
春の月とのサゼスチョンがございましたようで 一応案じて
みましたがよろしかったでしょうか?
お差し戻し ご一直等 何なりとよろしくお願い申し上げます。
by 羽衣 (2016-04-10 16:47)
おぼろ月夜の旅の手枕
春 月 光物 夜分 旅
おぼろの月を享くる盃(さかづき)
春 月 光物 夜分 盃で飲食
弥生かたらふ舟べりの月
春 弥生は時節 月 夜分 光物 舟は水辺体用外
月の朧にほろ酔ひて候
春 月 光物 ほろ酔いは飲食(の結果)
翌なき春をてらす月の出
春 月 光物 夜分
筆のすさびの止まぬ朧夜
春 月 夜分(俳句歳時記のなかには、朧夜は朧月夜の略とするものがありますので、この場合、その説に従っておきます。連歌では、通常、「朧」だけでは雑、月と結んで春になります)
朧ぼろぼろ月の揺らめく
春 月 夜分
以上、これで第10句から春の句連続めいっぱいの5句となりました。
*
羽衣さま、江南とは良い所へ良い時期にお出かけでしたね。
――「江南春」杜牧――
千里鶯啼いて緑紅に映ず
水村山郭酒旗の風
南朝四百八十寺
多少の楼台煙雨の中
お疲れのところ、たくさんの付句をありがとうございました。
by 連歌楽歳 (2016-04-10 20:14)
宗匠さま
早速のご教示有り難うございました。
毛吹草の連歌四季之詞をたのみとするものですが 道理で朧のみは
ございませんでした。 橋朧 などでしたら 雑になるのですね~
びっくりぽん! 勉強になりました。
因みに 連歌では 三春(春全体に関わる季語)という分類はない様で~
いまさらながら古人の繊細な感覚と文化しきたりはこのアバウトな身に
よき鍛錬となりましょう。
有り難うございました。
江南旅は慌ただしいエコノミーツアーでしたが百聞は一見に如かず で
(連休中の渋滞 混雑はありましたが 柳や樟の若葉が殊に素晴しい時)
初心者としては取り敢えず良い処だけ見て(悪しきは目をつぶり)大満足でした。
誠に杜牧の七言絶句の如く(四百八十寺はなかったですが 代わりに 新興団地建設めざましく) 晴れた日 雨の日 存外に落ち着いた街並と
風情(一党独裁の強み?)に感嘆致しました。
ご丁寧な「江南春」ご掲載恐縮に存じます。
また近々台北のお話などよろしくお願い申し上げます。
有り難うございました。
では千草さま お待たせ申し上げました。折立宜しくお願い致します。
by 羽衣 (2016-04-11 14:03)