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電脳千句第7 賦何水百韻 四折表  2016.10.24~

pacifico.jpg


   引鶴に絡繰り唐子逆立し             月

    かいやぐら消え雲の棚引く           姫

  この浦に漁り小舟を漕ぎ出して          歳

   糸たぐり寄す罪ぞかなしき            衣

  なにゆゑか雑魚の命もいとほしく         花

   しはぶきひとつ冬空の下             梯

  凩の吹くもふかぬもうき名にて           舎

   ただ身すがらに慕ひ来ぬれば          草

  いくたびの闇をくぐりて秋の月           歳

   まつりごとには稲の穂をつみ           風

  小牡鹿の声聞く里の直会に             姫

   色なき風のわたる平城山                月

  いにしへを知るは樟ばかりなり           衣

   位捨つれば人も問ひ来ず             歳
  




 

 

 

進行表はこちら

 









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朝姫

楽歳様、皆様

秋晴れの朝、まだまだ蝉が元気に鳴いています。

楽歳様のお写真、いつも楽しませていただいております。
夏休み中のお地蔵様?の表情が何ともとぼけていて、まだ再開していないとわかっていてもちょくちょく覗いて癒されておりました。
最近の外国のお洒落な写真シリーズも毎回楽しみで、昔カレンダーのこういう写真をわざわざ切り取って飾っていたなぁ、と思い出したりしております。

さて、いつのまにか四折表に入ったのですね。
楽歳様が振ってくださる旗ばかり見ていて周りが見えていなかったかもしれません。
時々全体を見渡さなければいけませんね。

如月様の前句、「所化」も「雁供養」も身近にない言葉で面白そうに思ったのですが、こちらをいただきました。

 引鶴に絡繰り唐子逆立し

 付
  二人静のひそやかに咲く   朝姫
  田打歌きく四阿の下
  薄氷の彩ときに紫
  かいやぐら消え雲の棚引く

春をもう一句続けました。
楽歳様、ご指導宜しくお願い致します。


by 朝姫 (2017-09-13 10:35) 

連歌楽歳

  二人静のひそやかに咲く      朝姫
春 草類 数字

  田打歌きく四阿の下
春 田打歌(小田返す、は連歌春の季語) 四阿は居所体

  薄氷の彩ときに紫
(春か冬か?) 薄氷は江戸末期の『俳諧歳時記栞草』のころまで冬の季語。明治以降、春になった。季節の判定に苦慮する季語。

  かいやぐら消え雲の棚引く
春 『連珠合璧集』によると虹は光物。これに倣えば蜃気楼も光物といえるが、空中にたなびく聳物とも思える 雲は聳物 

by 連歌楽歳 (2017-09-13 11:47) 

連歌楽歳

 春祭りの山車のからくり人形が逆立ちし、見上げる空には帰る鶴。動から静への転換という意味で、4折表2に、

  かいやぐら消え雲の棚引く     朝姫

をいただき、

●4折面3付け
  この浦に漁り小舟を漕ぎ出して
  果てもなき荒野広がるその彼方
 見わたせば浦の苫屋に陽は落ちて

by 連歌楽歳 (2017-09-16 14:17) 

連歌楽歳

 この浦に漁り小舟を漕ぎ出して
雑 浦・小舟で水辺体・体用外

 果てもなき荒野広がるその彼方
雑 地儀(野)

見渡せば浦の苫屋に陽は落ちて
雑 水辺体、居所 光物(陽) 時分(日没時)


by 連歌楽歳 (2017-09-16 14:19) 

羽衣

宗匠さま 皆さま
本日も季語研究会有り難うございました。
帰りも お蔭様にて 大型台風?どこ吹く風?
とばかりに(単なる秋雨) 恙無く帰宅致しました。
が、各地のご無事を祈り申し上げます。

扨 四折表三句目 頂きます。

   この浦に漁り小舟を漕ぎ出して  宗匠さま

         付け

      糸(網)たぐり寄す罪ぞかなしき
      妙(たへ)なる楽の何処(いづく)いざなふ
      ひねもす垂るヽ糸の先より
      玉の緒ばかりこころもとなき
      たゆたふものは吾が命なる
      罪のむくひを知らぬをさな児(はらから)
      永らふほどに積もる罪咎

古今伝授の三木三鳥 あらためて面白く学ばせて頂きました。
御伝授遊ばされた超大家は 蕪村の武陵桃源図 の顔つきで
ひそひそ(にやにや)楽しげ?でいらしたかなあと 勝手に
想像致しました。すみません~
又 雁風呂(雁供養)が 南部外ヶ浜 と伺いますと 善知鳥 を
思い浮かべます。宗匠さまの御句も 雁風呂 なる季語
(或は風習) をご否定なさりつつも その様なお心かと
これまた勝手な想像で失礼申し上げます。
蕪村の 牡丹散て の巻 16句目 兎唇の妻のただ泣きになく
17 鐘鋳ある花のみてらに髪きりて・・・が印象深く~
(本日は又 箆鹿の大変結構な珍味を頂いてしまい恐れ多くも
罪深い日々でございます故) 誠に 外ヶ浜=善知鳥短絡的
殺生観 ですが何卒お導きの程よろしくお願い致します。
箆鹿のお蔭かなんだか多弁となり申し訳ございません。
失礼の段何卒お許し頂きますよう~

いよいよ台風がやって参りましたようで 皆さまどうぞ
お大事に。有り難うございました。    
      

      


by 羽衣 (2017-09-18 02:14) 

連歌楽歳

台風一過、また夏が戻ったような今日の天気です。

     *
  糸(網)たぐり寄す罪ぞかなしき
雑 釈教(罪)。網による大量捕獲か、糸の先の一つの命にフォーカスをあてるか、選択は付け句作にお願いします。

   妙(たへ)なる楽の何処(いづく)いざなふ
雑 楽(がく・らく)は字音なので、いっそ楽の主役である「笛」にかえませんか?

   ひねもす垂るヽ糸の先より

      
   玉の緒ばかりこころもとなき
雑 玉緒は(短い)命、玉緒と命はそれぞれ一句物

   たゆたふものは吾が命なる
雑 命と玉緒は懐紙をかえて使う 「吾」で人倫

   罪のむくひを知らぬをさな児(はらから)
雑 釈教(罪) 「おさな児」か「はらから」か、この選択も付け句作者におまかせしましょう。おさな児もはらからも人倫

   永らふほどに積もる罪咎
雑 釈教

        * 

以上、静かな浦に舟を浮かべて沈思する羽衣流「生の哲学」を拝聴いたしました。兼好法師も言っております。「命ある物を見るに、人ばかり久しきはなし。かげろふのゆふべをまち、夏の蝉の春秋を知らぬもあるぞかし。つくづくと一年をくらすほどだにも、こよなうのどけしや。あかず惜しと思はば、千年を過ぐすとも、一夜の夢の心ちこそせめ。住み果てぬ世に、みにくき姿を待ちえて何かはせん。命ながければ辱おほし。ながくとも、四十にたらぬほどにて死なんこそ、めやすかるべけれ」。合掌。9月18日、敬老の日に。



by 連歌楽歳 (2017-09-18 15:55) 

羽衣

宗匠さま
いつもの慌て床屋で出掛けてしまい 失礼致しました。

 妙なる楽の何処いさ゛なふ のお尋ね頂きました様でござい
ますが 楽 は楽歳宗匠へのオマージュ(ゴマすり?)ですので 
其の儘 と致したきところですが(笛 でも勿論結構ですが当方の
楽の音は 篳篥 と申したきところですので)

 妙なる調べおほどかに過ぎ(揺れ)  くらいで如何でしょうか?


こちら辺りは 楽天的人生観とおとり頂けましたら幸いです。
お後は何卒よしなにお願い申し上げます。

  (辱おほき馬齢重ねて菊膾 ~ お粗末様でございました)
    


by 羽衣 (2017-09-18 23:14) 

連歌楽歳

羽衣さま

よく見ると4句前に「何」の字がありました。

「おほどか」の響きが醸し出す楽天的人生観をいただいて、

  妙なる調べおほどかに揺れ
  
としましょうか。「おほどかに過ぎ」では、調べが過ぎてゆく時間的経過なのか、「のんびりしすぎ」なのか、はっきりしませんので。

by 連歌楽歳 (2017-09-18 23:45) 

路花

楽歳宗匠さま  皆さま
フィヨルドの写真を楽しく拝見させていただいています。
敬老の日にお祝いが届く齢になりながら、三木三鳥など改めて学ばせていただくこと多く、嬉しくもあり恥ずかしくもありという思いで降ります。一か月お休みさせていただきましたが、またどうぞよろしくお願いいたします。

羽衣さまの
  糸たぐり寄す罪ぞかなしき
をいただきます。少々体調を崩した日々、そして敬老の日を迎えた故でしょうか、細い糸の先の小さな魚、そんな小さな命を奪ってしまう罪――と勝手に思いをいたしました。羽衣さまの作句の思いと異なっておりましたら、お許しくださいませ。

付句です。
  小さき魚の命がなぜかいとほしく
  ながらへば遠方(をちかた)の人なつかしく
  かくとだに己がよはいのおもほれて
いつものことながら、思いのみあって句にならず、情けなく思いながら――。
どうぞご指導のほどよろしくお願いいたします。
by 路花 (2017-09-19 17:38) 

連歌楽歳

 小さき魚の命がなぜかいとほしく   路花
雑 魚は水辺用 命は1句物 
  
  この浦に漁り小舟を漕ぎ出して
  (浦・小舟で水辺体・体用外)
  糸たぐり寄す罪ぞかなしき 
  (糸は前句との関連で釣り糸、釣垂は水辺用)

水辺は3句まで続けることが可。打越との関係は<水辺体・体用外>と<水辺用>となり、式目上は障らない。ただ上5が「小さき魚の」と7音なので(連歌では長句の上6は「昔思ふ袖にかほれる梅の花 心敬」のような例があるが、上7は俳諧ほどにはみかけません)、

 なにゆへか雑魚の命もいとほしく

でいかがでしょうか?


  ながらへば遠方(をちかた)の人なつかしく
雑 人倫

  かくとだに己がよはいのおもほれて
雑 恋 人倫 「かくとだに」とは何かと云えば……

 かくとだに言はで儚く恋ひ死なばやがてしられぬ身とやなりなん
                                   隆恵法師
 かくとたに思ふ心をいはせ山したゆく水の草かくれつゝ  実定

「おもいはむねにあふれるのだか……」といったところでしょう。

by 連歌楽歳 (2017-09-19 20:38) 

連歌楽歳

追加

  かくとだに己がよはいのおもほれて

の「おもほれて」は「おもはれて」のミスタイプでしょう。「おもほれて」だと、溺れての意味になります。とりあえず「おもはれて」と直しておきます。路花さま、ご連絡をお待ちしています。

by 連歌楽歳 (2017-09-20 01:33) 

羽衣

訂正
 前コメント 頭をかしげて⇒首をかしげて
    訂正して お詫び申し上げます。
  (まだ他にもあるやもしれません。お騒がせ致します。)
by 羽衣 (2017-09-20 03:19) 

路花

宗匠さま
おはようございます。薄曇りの朝になりました。
拙句のお直し、ありがとうございます。
小さき魚の・・・ なにゆえか雑魚の命もいとほしく  の直していただきありがとうございます。「水辺」が三句続くことが許されるのかどうか、ご教示をいただきたいと思いながらの投句でした。
かくとだに・・・は、「おもはれて」のミスでした。ご訂正ありがとうございます。
by 路花 (2017-09-20 08:59) 

連歌楽歳

夢梯さまから次のような連絡を頂きました。


 <4折表5治定>
 なにゆへか雑魚の命もいとほしく    路花

 <4折表6付け>
 成りゆくまゝに身を任せつゝ      夢梯
 「あ」と言ひ残し遠き彼方へ
 しわぶきひとつ冬空の下
 炉辺の語りもはや尽きる頃
 古人と炉辺に語らふ

前句の「なにゆへ」は「なにゆゑ」ではありませんか?と、夢梯さまからご指摘を頂きました。

   *

 成りゆくまゝに身を任せつゝ      夢梯
雑 身を任せるの「身」は身体か?人倫か?

 「あ」と言ひ残し遠き彼方へ
雑 連歌に「」は珍しいのですが、といって無いとわかりにくくなります。

 しわぶきひとつ冬空の下
冬 空は天象 ひとつで数字 しはぶき(咳)は現代俳句の冬の季語。 「すはぶきて翁や門をひらくらむ  几董」のころは雑。

 炉辺の語りもはや尽きる頃
冬 炉は俳諧冬の季語 「炉辺の語りも/はや尽きる頃」で8・7、「炉辺の語り/もはや尽きる頃」だと7・8。「炉辺の語りはや尽きる頃」だと7・7。「も」を抜きましょう。炉辺で居所体

 古人と炉辺に語らふ
冬 古は1句物 人は人倫 炉辺は居所体

◎ご指摘いただきましたように「なにゆへ」は歴史的仮名遣いでは、正確には「なにゆゑ」でした。辞書にもそのように記載されています。表記を「なにゆゑ」と変えます。

ところで、余談ですが、岩波の日本古典文学大系『新古今和歌集』を開きますと、巻13恋歌3に、
 
 何ゆゑ(へ)と思ひもいれぬ夕べだに待ち出でし物を山のはの月

があり、「ゑ」の字の隣に「へ」のルビがふってあります。原本は「なにゆへ」だったが、歴史的仮名遣いに統一するために「ゑ」に変えた、という意味です。
 
国文学資料館の電子データでこの歌を探すと「なにゆへ」の表記で紹介されており、関連の写本の画像に「なにゆへ」と書かれていました。

定家仮名遣いが定着する以前の和歌では「ゑ、え、へ」が入り乱れており、「なにゆへ」という表記が広く流通していたようです。

最大の?は国文学資料館のデータベースで「なにゆゑ」と入力しても、ヒットする歌は「なにゆへ」という表記を使った歌ばかり。一方で、国際日本文化研究センターの連歌データーベースでは、「なにゆへ」と入力するとヒット0、すべて「なにゆゑ」で統一されていました。


by 連歌楽歳 (2017-09-25 21:31) 

蘭舎

楽歳宗匠、みなさま

おはようございます。
暑さ寒さも彼岸までとはいいますが、きゅうに朝晩厚手のものが
必要になってまいりました。

夢梯さまの

しはぶきひとつ冬空の下

を頂きまして、粗忽ながら、冬をつづけた付句を案じてみました。
ご吟味よろしく御願いいたします。

拙次
凩の吹くもふかぬもうき名にて   蘭舎
時雨きてむすびし夢のはや覚めぬ
風さゆる炉辺にいにしへ語りつゝ
はつ雪に小躍りをする女童に
しろたへの霜こそ末をいのりつれ
かよひ路のここにかしこに薄ごほり
雪折の笹のみどりはそのままに

by 蘭舎 (2017-09-26 06:23) 

連歌楽歳

 凩の吹くもふかぬもうき名にて   蘭舎
冬 凩は吹物、木枯は1句物 恋(うき名)

 時雨きてむすびし夢のはや覚めぬ
冬 時雨は降物、秋冬各1の2句物 前句の冬をうけてここの時雨は冬の時雨 夢は夜分

 風さゆる炉辺にいにしへ語りつゝ
冬 『無言抄』に「月のさゆる」は冬、「さゆる」は光や音が冷たく澄むことなので、「風のさゆる」も冬。炉辺も冬、居所体。「いにしへ」は1句物。「いにしへ」が出ると、句は述懐になります(『連珠合璧集』)。それと、いま気がついいたのですが、枕草子に「雪のいと高う降りたるを例ならず御格子まゐりて、炭櫃に火おこして、物語などして集まりさぶらうに、少納言よ、香炉峰の雪いかならむ」とあり、「炉」が字音であることを思い出しました。言い換えは「いろり」「炭櫃」。

 はつ雪に小躍りをする女童に
冬 初雪は降物 人倫 「女」が1句物なので、複合名詞「女童」も1句物とすべきかどうか、思案のしどころですが、1句物にしておいた方が無難ですかね。

 しろたへの霜こそ末をいのりつれ
冬 霜は降物 しろたへは白いものにかかる枕言葉。「いのりつれ」は祈る(4段活用)の連用形に完了の助動詞「つ」の已然形がついたものか、而してその意味は?

 かよひ路のここにかしこに薄ごほり
冬 薄氷は連歌で冬、『俳諧歳時記栞草』の時代も冬。現代の俳句季語が春に移した。氷は4句物(只1、つらら1、月の氷など1、霜雪の氷など1)で水辺用 かよひ路で恋(通学路でなければ)

 雪折の笹のみどりはそのままに
冬 雪は4句物(この他に春雪1)で降物 笹は草類。雪折れ竹は聞いたことがありますが、はたして「雪折れ笹」はあるのか、どうか?


by 連歌楽歳 (2017-09-26 13:57) 

蘭舎

楽歳さま

早速に拙句のご吟味ありがとうございます。
「舌頭千転」すべし、粗製濫造はよくないとは思いますが、
思いつくままに口から投げ出してしまい、そのままを
おゆるしください。

風さゆる炉辺にいにしへ語りつゝ

「風さゆる」も「炉辺」(言い換え=いろり、すびつ)も冬の詞ですので、

「風の夜は炭櫃(すびつ)に寄りて語り合ひ」

と変更させてください。よろしいでしょうか?
なるほど、「炉」(ろ)は、字音なのですね。

しろたへの霜こそ末をいのりつれ

「しろたへの霜」と少しきどってみたかったのですが、句意あやしく、どうぞ、ボツにしてくださいませ。

「雪折れの笹」

柳以外は、みな雪折れありかと思いましたが、確たる自信はありません。

お次の千草さまも、どうぞ、宜しくお願いいたします。


謝謝 蘭舎拝

by 蘭舎 (2017-09-26 15:15) 

連歌楽歳

蘭舎さま

おおせのままに。
by 連歌楽歳 (2017-09-26 17:13) 

千草

ごめんくださいませ
蘭舎さまのお後をうけて、付け順により、出て参りました。

付けをいたします前に、心にかかることがあり
差し出がましきことながら、

四折り表6
 小さき魚の命がなぜかいとほしく   路花

やさしいお心根の御句と拝してしんみりといたしました。

こちらの元句を
 なにゆゑか雑魚の命もいとほしく

とのご一直があり、路花さまのご了承もありますのに
いまさら、時を経て、お訊ね申し上げるおぼつかなさ、
くれぐれもお詫び申し上げつつも

雑魚(ざこと読むと存じますが)の語の歌語としていかがかを
どうか、うかがいたく存じます。

魚の読みには「いろくづ」「うろくづ」ございますが
データベースを調べるなど思いもよらぬ初歩的ネット生活の身、どうぞ
雑魚出典・先例をご教示いただければありがたく存じます。
かしこ
by 千草 (2017-09-26 18:16) 

千草

凩の吹くもふかぬもうき名にて   蘭舎さま

 恋の句をいただきます。
  連歌の恋研究会のような気持ちです。

付け

   ただ身すがらに慕ひ来ぬれば   千草
  
   知らぬ衾に衣かたしき

   恋しき涙人に知られじ

   しぐれの宿り今は恋しき 

   負はれていゆく武蔵野の果て

恋の文字は、限度いっぱいだった気もしますが、乱発してしまいました。

よろしくお捌きくださいませ。

千草

by 千草 (2017-09-27 22:23) 

連歌楽歳

   ただ身すがらに慕ひ来ぬれば   千草
雑 恋 この「身」は身一つの「みすがら」なので、身体。俳諧だと「手鍋さげても」という言い回しになる場面でしょうか。
  
   知らぬ衾に衣かたしき
雑 恋 夜分 衣類 「衣かたしく」は独り寝。くわえて知らぬ掛布団。どういう状況なのか興味がわきます。

   恋しき涙人に知られじ
雑 恋 人倫 百人一首の「わが袖は潮干に見えぬ沖の石の人こそ知らねかわく間もなし」の世界。

   しぐれの宿り今は恋しき
冬 時雨は2句物(秋冬各1) 宿りで旅 恋の句に聞こえますが、

 世にふるもさらに時雨のやどりかな  宗祇
 世にふるもさらに宗祇のやどりかな  芭蕉

をふまえた旅の懐旧(述懐)の句ともとれます。

   負はれていゆく武蔵野の果て
雑 「いゆく」は見かけない言葉なので辞書にあたると上代語の「行く」でした。姨捨山伝説似た姨捨が原の慟哭の句。前句のノンシャラン節と好対照です。とは冗談で、ほんとは違う情景なのでしょう。武蔵野は地名、歌枕

恋の字は2折表13に1度でただけ。『連歌新式』は言及していませんが、『産衣』によると、「恋」が2回、「こひ」が2回の計4句ものだそうです。
by 連歌楽歳 (2017-09-28 00:12) 

千草

楽歳様

ありがとうございました。
恋のじのことも忘れないよういたします。

よしなきことながら
姨捨のご鑑賞に加えまして
前句の「凩」→言水→果て→武蔵野のような思いがつながりまして
伊勢物語へ着地したような感じということも
お伝え申し上げます。

10月初めまで留守となります。よろしくお願いいたします。
by 千草 (2017-09-28 09:18) 

連歌楽歳

遊香さま対米中につき、楽歳が代打。

       *

 ただ身すがらに慕ひ来ぬれば   千草

を頂いて、
 凩の吹くもふかぬもうき名にて   蘭舎
 ただ身すがらに慕ひ来ぬれば    千草

と恋の句を2句続け、肖柏さまに忠義立てしておきましょう(「恋の句1句にて止めること無念」と『連歌新式肖柏注』)。

●4折表9付け
 六十路過ぎなほもときめく松の月   楽歳
 望月の御池のほとりさやけくて   
 いくたびの闇をくぐりて秋の月
  
   *

 六十路過ぎなほもときめく松の月   楽歳
秋 月 光物 夜分 木類 数字

 望月の御池のほとりさやけくて
秋 月 光物 夜分 御池は京都の地名 

 いくたびの闇をくぐりて秋の月
秋 月 光物 夜分

        *

 負はれていゆく武蔵野の果て   千草

千草さまから『伊勢物語』第12段が本説とのご説明を頂きました。『伊勢物語』は古文の授業で「つついづつ」をならったことを覚えているだけです。12段を読んでみました。

昔、男が人の娘を盗んで、武蔵野に連れて行った。男は役人に追いかけられて、女を草むらにおいて逃走した。追手が盗人を火攻めにしようとしたとき、女が

 武蔵野はけふはな焼きそ若草のつまもこもれり我もこもれり

と、歌を詠んだ。

以上の話に、一瞬?を感じましたが、俗言に「恋は思案の外」。古代ギリシア世界の女の略奪行為についてヘロドトスがうんちくを傾けてこんなことを書き残しています。トロイのパリスがラケダイモンのヘレネを略奪したことについて、ヘロドトス曰く――女を略奪するのは悪人の所業であるが、一方、女が略奪されたことで本気になって報復しようとするのは愚か者の所業である。女の方にもその気がなければ、略奪されるはずもない。男本位の発想ですね。ヘロドトスは男、伊勢物語は作者不詳ですが、12段の作者は多分、男でしょう。


by 連歌楽歳 (2017-09-30 12:18) 

連歌楽歳

付け句修正
 望月の御池のほとりさやけくて  楽歳
ですが、打越が「て」留りにつき、
 望月の御池のほとり人だかり
と、変更します。
 
 
by 連歌楽歳 (2017-10-01 14:56) 

梢風


 ただ身すがらに慕ひ来ぬれば     千草
いくたびの闇をくぐりて秋の月 楽歳

    付
    
 墨の匂ひのさやかなりけり 雀羅
 まつりごとにもとんぼらしきが    〃
 上も笑へる虫のつらくせ 〃
夜目にもしるきもみぢ葉を手に 〃

○9/29~10/1と奈良の国文祭に参加しておりました。奈良はまだまだ出かけて行って、見て確かめて来ないといけないところが沢山あることに気付かされた旅でした。

楽歳様、よろしくお願い致します。  梢風
by 梢風 (2017-10-03 12:20) 

連歌楽歳

梢風さま。
初秋の奈良をお楽しみになられたご様子ですね。

さて、

 墨の匂ひのさやかなりけり     雀羅
秋 「月のさやけき」は秋なり(『無言抄』)、「さやけき」は秋の月をいう(『俳諧歳時記栞草』)と、明治以前は「月+さやけき」がワンセットになって秋とされていました。前句の秋の月をうけての「さやか」であり、俳句では「さやか」は秋の季語として定着していますので、ここはめんどうなことはいわず、秋。

 まつりごとにもとんぼらしきが
? 「まつりごと」は神事の場合は秋・神祇。政治の場合は雑。「とんぼ」については、蜻蛉とかいてトンバウと読ませれば生類で夏(『産衣』)。いずれの組合わせでも秋の句にはなりません。ご一考ください。
    
 上も笑へる虫のつらくせ
秋 虫類 やんごとなきお方もつい笑ってしまう虫の頭部のおかしな造形、という意味でしょうか。ひっかかるのは「笑へる」。古文の場合、「笑ふ」は四段活用。4段活用動詞につく自発・可能・受身・尊敬の助動詞「る」は動詞の未然形に接続。その連体形は「るる」となります。したがって古文では「笑はるる」となって虫を修飾します。「笑える」は現代日本語でいわゆる可能動詞とされているもので、その連体形も終止形と同じ「笑える」。それを歴史的仮名遣いで表記すれば「笑へる」となります。ご一考ください。

夜目にもしるきもみぢ葉を手に
秋 木類 夜分 人体


by 連歌楽歳 (2017-10-03 19:46) 

梢風  

楽歳様、御吟味有難うございます。

・まつりごとにもとんぼらしきが

については、「とんぼらしきが」は連歌の格調外れていました。現今のまつりごと事情に引き摺られてしまったようです。「蜻蛉(とんぼう)」が夏と季別されているというのはたしかにそうでしょうか。「夏の蜻蛉」はいますが。ここは「まつりごとには稲の穂をつみ」と再考します。

・上も笑へる虫のつらくせ

この「る」は存続・完了「り」の連体形でいいと思います。敬意が足りないかも知れませんが、発語者の立ち位置次第では「上」を客観表現出来るかも知れませんね。

よろしくお願いします。
by 梢風   (2017-10-03 21:50) 

連歌楽歳

梢風さま。さっそくのご返事、ありがとうございました。

「とんぼう」は毛吹草の俳諧季語では秋。一方、連歌の部に記載なし。『産衣』には秋(『連歌法式要綱』143ページ)。俳諧の季語と連歌の季語の季が異なる場合は、連歌の季優先。連歌に季語としてない場合は、俳諧の季語を使用してきました。

「笑へる」が完了の「り」の連体形とは、考え付きませんでした。失礼しました。

 まつりごとには稲の穂をつみ  梢風
秋 稲穂は草類? 神祇
by 連歌楽歳 (2017-10-03 23:02) 

梢風

楽歳様、「とんぼうハ夏也」のこと、たしかに『産衣』に記載がありました。「かげろふ」の項にほんの一言紛れていて、すっかりスルーしてました。有難うございました。

江戸期の歳時記に「とんぼう」を夏の季にするものはなく、この語のあついかいにいつどこでどのようなネジレが加わったのか、興味を覚えました。

「俳諧の季語と連歌の季語の季が異なる場合は、連歌の季優先」、承知しました。

by 梢風 (2017-10-04 06:21) 

朝姫

楽歳様、皆様

遊香様、美しい日本の秋にお帰りなさいませ。
今夜は中秋の名月ですね。
昨夜の月も綺麗でした。
今夜も晴れそうで何よりです。

さて梢風様の付、どれも面白く拝見しました。
蜻蛉をめぐるお話も大変興味深く拝読しましたが、「虫のつらくせ」に特に惹かれました。
こちらを頂こうと暫く思案していましたが、進行表によると虫は一句物、初折裏の10句目に既出のため泣く泣く諦めました。

改めて

 まつりごとには稲の穂をつみ  梢風

を頂きました。


 八雲たつ出雲の山のもみぢばに   朝姫
 小牡鹿の声聞く里の直会に
 笛の音と呼び交う如く鹿の声

楽歳様、どうぞ宜しくお願い致します。

by 朝姫 (2017-10-04 11:04) 

連歌楽歳

 八雲たつ出雲の山のもみぢばに   朝姫
秋 紅葉は3句物(只1、梅桜などに1、草の紅葉1) 「八雲たつ」は出雲にかかる枕詞ですが、数字と聳物は勘定に入れておきましょう。出雲は歌枕・名所、国郡。山類 木類

 小牡鹿の声聞く里の直会に
秋 鹿は3句物(只1、鹿子1、すがる1)で獣類 里は居所 直会は神祇・飲食

 笛の音と呼び交う如く鹿の声
秋 鹿は3句物(只1、鹿子1、すがる1) 徒然草第9段は愛欲を論じて「されば、女の髪すぢをよれる綱には、大象もよくつながれ、女のはける足駄にて作れる笛には、秋の鹿、必ずよるとぞ言ひ伝へ侍る」。3句前が恋の句なので、鹿笛と鹿の鳴き声の秋のデュエットにはニアミス感があります。よろしければ代わりの句を。それとも「八雲」「直会」の2句だてで行きましょうか?

      *

朝姫さま、「虫」1句物のご指摘、ありがとうございました。うっかり見落としてしていました。

by 連歌楽歳 (2017-10-04 13:08) 

朝姫

楽歳様

早速にご指摘ありがとうございました。
「鹿の声」は取り下げまして代わりに以下の句でお願い致します。

 散る紅葉追うて流るる瀬の音に

お手数お掛けしますが宜しくお願い致します。

by 朝姫 (2017-10-04 22:33) 

連歌楽歳

  散る紅葉追う(ひ)て流るる瀬の音に 朝姫

「紅葉」に関しては、連歌(俳諧も)不可解な約束事が積み上げられてきました。連歌についていえば、『無言抄』によると「紅葉の散る」は冬。「もみじかつちる」は秋。「川の紅葉」は秋。「もみぢながるる」は冬。『産衣』はというと、「紅葉つもる」「紅葉踏む」「水に流るる」「川の紅葉」を秋、としています。

百人一首の「嵐吹く三室の山のもみぢ葉は竜田の川の錦なりけり」(能因法師)は『後拾遺和歌集』では秋の部に収められています。「散る紅葉追ひて流るる瀬の音に」と似た風景ですね。

以上のようなわけで、いただいた「散る紅葉追うて流るる瀬の音に」を冬の句から秋の句にするには「散る紅葉」をなんとかする必要があります。

 散る紅葉浮かべ色濃き瀬の音に

と小細工をほどこして、「川の紅葉」「流るる紅葉」、それに「落葉の色――色という字にひかれて秋なり」(『無言抄』)と説明ができます。

いかがでしょうか。

by 連歌楽歳 (2017-10-05 00:25) 

朝姫

楽歳様

何度もお手を煩わせてしまい申し訳ありません。
十七季でも「紅葉かつ散る」と「紅葉散る」は季が違いましたね。
慌てて出すといけません。。。
でも「もみぢながるる」が冬、「紅葉つもる」「紅葉踏む」「水に流るる」「川の紅葉」は秋とは。
ますます混乱しそうです。
拙句を何とか秋にしていただき本当にありがとうございました。

如月様

長いことお待たせして申し訳ありませんでした。
どうぞ宜しくお願い致します。

by 朝姫 (2017-10-05 20:12) 

連歌楽歳

では、如月さま。どうぞ。

by 連歌楽歳 (2017-10-05 21:07) 

如月

宗匠さま、皆さま、

遅くなりまして、恐縮に存じます。
前の週末、奈良に行っておりましたからでしょうか、朝姫さまの次のお句、頂戴いたしたく存じます。

小牡鹿の声聞く里の直会に

拙次

・笙いづこより寧楽(なら)の杜へと

・色なき風のわたる平城山

・灯影揺らせる池の秋風

・市子さやかに舞のひとさし

※市子は、神巫(いちこ)あるいは巫女(いちこ)と書いても結構です。
神祇が三句も続いてよろしいのかどうか?全くわかりませんが、『十七季』には神祇は1~3句、と出ていましたので、思い切って出してみました。

・もみぢ浮かべる陶坏(すえつき)の酒(ささ)

※紅葉が秋になるか冬になるかには、じつに複雑精妙な感覚が働いているのですね。
その論に惹かれて、直会の杯に紅葉を浮かべてみたくなりました。
ただし、稲穂と植物同士の打越になって、障るかもしれないと思っております。
その場合には作り直しをいたします。

宗匠さま、
ご指導をよろしくお願い申し上げます。
by 如月 (2017-10-08 11:54) 

連歌楽歳

 笙いづこより寧楽(なら)の杜へと    如月
雑 寧楽は「奈良」の万葉仮名表記の1つ、奈良は国郡・名所・歌枕。笙は「笙の笛」の「しょう=しやう」で字音(呉音)。「笙」は漢字辞典によれば「笛」のことなので、「笙」の漢字に「ふえ」のルビをつけてお茶を濁すことにいたします。「杜」は木の生い茂った森であり、神様が降りてくるところなので、神祇・木類 打越の稲穂とは障らないような感じがいたします。

 色なき風のわたる平城山
秋 色なき風は俳諧の秋の季語。連歌での使用例を見ると「色なき風のすさまじき暮」「色なき風も身にはしみけり」「槙の葉の色なき風も身にしみて」「色なき風もただ秋の空」など、数少ない使用例すべてに別個に秋の詞が添えられているので、連歌の時代「色なき風」が秋の季語だったと即、断定は難しいところがあります。角川の『図説俳句大歳時記』の秋の部で「色なき風」にあたると、「吹き来れば身にもしみける秋風を色なきものと思へけるかな」(紀友則)を引合いに出して、秋に白色を配したのは中国の考え方で、日本の歌人は秋の風に色ある風の情緒を感じていた、と興味深い解説が添えられています。いろいろあるようですが、秋にしておきましょう。風は吹物。平城山(ならやま)は平城山丘陵付近の地名です。山類とするほどの風景ではありませんが、古墳などがあり山類としても差し支えないでしょう。

 灯影揺らせる池の秋風
秋 秋風は吹物 池は水辺体 秋風は発句に既出(秋風1、秋の風1)。ご再考を。

 市子さやかに舞のひとさし
秋 市子(いちこ)は神祇・人倫 ひとさしのひとは数字 「さやか」単独では連歌では雑となることが多かったようです。俳諧では秋なので、秋。

 もみぢ浮かべる陶坏(すゑつき)の酒(ささ)
秋 紅葉は木類 酒は飲食 かわらけ風の大きな杯なら紅葉の葉が浮かぶでしょう。「林間 酒を暖めて紅葉を燒く」の風情です。
 さて、もみぢが打越の稲の穂と木類・草類で障るかどうかという問題ですが、黒白をつけがたいところがあります。打越の稲穂は祭のために摘み取られる稲穂で、これを円錐形に積み上げて神霊に捧げる。イネは田に生えていれば草類、米は穀類・食物。刈り取られる稲穂はその中間点にあります。右せんか、左せんか。楽歳はしらぬふり。


by 連歌楽歳 (2017-10-08 17:17) 

連歌楽歳

訂正
紀友則の歌
吹き来れば身にもしみける秋風を色なきものと思へけるかな

は、「思ひけるかな」の誤りでした。
by 連歌楽歳 (2017-10-08 18:22) 

如月

宗匠さま

お返事遅くなりまして、申し訳ございません。
ご指導、有難うございました。

まず、楽歳さまの発句

秋風や雲うち払い山尖る

の秋風を詠んでしまいましたこと、お詫び申し上げます。
うっかりといたしました。

代わりに
川波さやか灯影揺らしつ

とさせていただきます。
(実は、灯と大打越の月が障るのではないか、とも気づきました。その場合は句をお捨ておきください。作り直しは止めます。)

笙に「ふえ」とルビを振ってのお助け、有難うございました。
また、稲の穂と紅葉の打越は、「鎌○ぬ」ということでございましょうか?
そうとらせていただけましたら、幸いです。

宗匠さま、ご一直など、さらにご指導よろしくお願い申し上げます。

羽衣さま、おそくなりましたが、治定をよろしくお願い申し上げます。
by 如月 (2017-10-09 12:19) 

連歌楽歳

 川波さやか灯影揺らしつ   如月
秋 さやかが俳諧秋の季語 川波で水辺体・用 

        *

如月さま。灯影が大打越の月とさわるかどうか、との疑問ですが、結論から言えば、さわらないと考えるほうがが素直です。

連歌の句材の伝統的な分類基準を示した『連珠合璧集』によれば、月は虹・日・星・七夕・稲妻とともに「光物」、灯影は火・衛士のたく火・埋火・ほだたく・かがり火・灯とともに「火類」です。月も灯も「発光体」ではありますが、連歌にはそのような用語分類がありません。

たとえば、「宝徳4年千句 第7」のウ5から7にかけて、

 二月や雪と月とののこる夜に      超心
 梅が香ふかき窓ぞこもれる       賢盛
 ともし火をくるるやどりのしるべにて  竜忠

あるいは、「紫野千句 第2」の二オ4から6にかけて

 日は入り月のいづるをぞまつ      全誉
 西に吹初秋風のすきの松        救済
 蛍ののこす市のともし火        相阿

蕉風俳諧では、「冬の日 しぐれの巻」一裏8-10の

 燈籠ふたつになさけくらぶる      杜國
 つゆ萩のすまふ力を撰ばれず      芭蕉
 蕎麦さへ青し滋賀楽の坊        野水
 朝月夜双六うちの旅ねして       杜國

また、「冬の日 霜月の巻」一表2-5では、

 冬の朝日のあはれなりけり       芭蕉
 樫檜山家の体を木の葉降        重五
 ひきずるうしの塩こぼれつつ      杜國
 音もなき具足に月のうすうすと     羽笠

打越や大打越に、月と発光体(ともし火・蛍・燈籠)を配しています。朝日と月は光物同士で、連歌では3句隔てる約束でしたが、芭蕉の時代の俳諧では2句になっていたのでしょう。

稲穂と紅葉の関係は各人の感性によるところが多いと思います。治定される付句作者におまかせするのが妥当と思います。

by 連歌楽歳 (2017-10-09 19:48) 

羽衣

宗匠さま 皆さま

此度は 光物 と 火類 の関係 有り難く学ばせて頂きました。
が、今宵は 更待月 とか、そろそろ火も恋しくなって参りました。

扨、名残の表 十二句目  平城山 頂きます。
  
    色なき風のわたる平城山   如月さま

       付け

   みささぎをもとほる魂の幾ひさし
   ことだまを返す木霊(谺)となりゆけり(なる夕べ)
   いにしへを知るは樟(くすのき)ばかりなり(る)
   歌ひ継ぐうたのまことは語られず
   言の葉を調べにのせてかなし(哀し)かり 

まつりごと 直会 声などございますので お導きの程
よろしくお願い致します。(恋にならぬよう留意致したつもりですが
やはり 恋はまだはやいでしょうか?何句去りでOKでしょうか)


by 羽衣 (2017-10-09 23:59) 

如月

宗匠さま
懇切なるご指導、感謝申し上げます。

月は「光物」、灯影は「火類」。
故に打越や大打越の障りはないとのこと、多数の例示によるご説明で、かなり理解できたように思います。有難うございました。
それにしても細やかな差異づけがされているのですね。

他方、稲穂と紅葉の打越問題は、各人の感性に拠るところが多いとのことで、治定をされる方に任せるとのご指示。
「感性任せ」というところがあるのは意外でしたし、実に面白い点です。連歌の奧深さのようなものを感じます。

有難うございました。また折に触れて、様々なご教示をいただけますよう願っております。

羽衣さま、治定をよろしくお願いいたします。
by 如月 (2017-10-10 00:16) 

如月

羽衣さま

メールが前後したようです。
治定、有難うございました。
by 如月 (2017-10-10 00:28) 

連歌楽歳

   みささぎをもとほる魂の幾ひさし
雑 伝えられる崇徳院の怨霊のようなものが御陵の周りをぐるぐる回っているのでしょうか。それとも崇拝者が欠かさず参拝に来ているのでしょうか。いずれにせよ緊迫感があります。

   ことだまを返す木霊(谺)となりゆけり(なる夕べ)
雑 前句を受けて詩人はこのような情趣あふれる感慨を持たれるのでしょう。俗物の楽歳の耳には、総選挙が始まった10日、窓の外の選挙カーの声ばかりが聞こえます。ことだま(言霊)と対にして「木霊」、ぴしっと言い切る「なりゆけり」が好みです。

   いにしへを知るは樟(くすのき)ばかりなり(る)
雑 いにしへ(古)は1句物、述懐。 木類 「る」よりも「り」のほうが心地よく聞こえます。

   歌ひ継ぐうたのまことは語られず
雑 「うたのまこと」は賀茂真淵の「歌の真言」や鬼貫の「俳諧のまこと」のようなものでしょうか。「文台引き下ろせばすなはち反古なり」の嘆きですかね?

   言の葉を調べにのせてかなし(哀し)かり
雑 「哀し」と漢字の方を。 

    *
如月さま。「猿蓑・市中は」の表第4句「灰うちたたくうるめ一枚」のうるめは、干物で季語にはならないと注釈書で説明されています。干物のうるめは水辺にもあたらないでしょう。半面、芥川龍之介の俳句「木がらしや目刺にのこる海のいろ」の場合、この目刺に水辺を感じる方もいらっしゃるでしょう。

by 連歌楽歳 (2017-10-10 14:02) 

連歌楽歳

いま進行表に書き込んでいて気が付きました。第7句に凩、第12句に色なき風で吹物5句の式目にふれます。ですが、いまさら変更するのも億劫ですので、このままで。
by 連歌楽歳 (2017-10-10 14:21) 

如月

宗匠さま

どうしましょう!
凩がありましたのに、また風を詠んでしまいましたこと、先ずお詫び申し上げます。
凩には気付いていましたが、四句去っているから大丈夫だろうと、自分勝手に考えてしまいました。
連句で三句去りの事項は、連歌では五句去りと、自動的に思ったほうがいいですね。
ほんとうに申し訳ございません。


また、どんなに細やかな差異化と分類であっても、それだけで語り尽くせるほど連歌の式目は単純ではないということ、二つの例句によるご解説で、具体的に分かってきたように思います。

其処で働くのが、詠み手の感性というより読み手(付句の詠み手)の感性である、というところが、連歌(や連句)の面白さというか真骨頂ですね。

「間テクスト性」ということが文学論では指摘されますが、連歌や連句のこういう現象にその原理が働いていること、感じ取れて興味深いです。
by 如月 (2017-10-10 17:45) 

連歌楽歳

4折表13に、

いにしへを知るは樟(くすのき)ばかりなり  羽衣

をいただきます。作者の羽衣さまは、草と木は3句へだてるべきものだが、稲穂とクスノキではその必要はないとのお考えなのでしょう。古典にも例があって、

 谷深み松吹風の長閑にて  賢秀
 峰の霞にかへる雁がね    勝元
 故郷を月は隔る影もなし   専順
 まはらになれる秋の草垣   心敬
          (熊野千句第3)

 なかき日にけふは宮木を引きくらし  忍誓
 もえぬる原にかへやおく駒      梁心
 若草はいまたふる葉にうつもれて   宗砌
(宝徳4年千句第5)

どんな事情だったか知るよしもありませんが、心敬、宗砌といった大御所がやったことで、心強い支えになります。

4折表14付け

 寄りくる人もやがて散りゆく     楽歳
 旅ゆく人のさまざまな道
 位(くらゐ)捨つれば人も問ひ来ず
 一声法螺の館(たて)は崩れて

        *
 寄りくる人もやがて散りゆく
雑 人倫

 旅ゆく人のさまざまな道
雑 旅 人倫 道は地儀

位(くらゐ)捨つれば人も問ひ来ず
雑 人倫 

  一声法螺の館(たて)は崩れて
雑 法螺は字音だが連歌で使用可(山田孝雄『連歌概説』) 館は居所のうち


by 連歌楽歳 (2017-10-10 21:48) 

連歌楽歳

●4折表13治定
 いにしへを知るは樟(くすのき)ばかりなり  羽衣

をいただきます。作者の羽衣さまは、草と木は3句へだてるべきものだが、稲穂とクスノキではその必要はないとのお考えなのでしょう。古典にも例があって、

 谷深み松吹風の長閑にて  賢秀
 峰の霞にかへる雁がね    勝元
 故郷を月は隔る影もなし   専順
 まはらになれる秋の草垣   心敬
          (熊野千句第3)

 なかき日にけふは宮木を引きくらし  忍誓
 もえぬる原にかへやおく駒      梁心
 若草はいまたふる葉にうつもれて   宗砌
(宝徳4年千句第5)

どんな事情だったか知るよしもありませんが、心敬、宗砌といった大御所がやったことです。

●4折表14付け
  寄りくる人もやがて散りゆく     楽歳
 旅ゆく人のさまざまな道
位(くらゐ)捨つれば人も問ひ来ず
  一声法螺の館(たて)は崩れて


 寄りくる人もやがて散りゆく
雑 人倫

 旅ゆく人のさまざまな道
雑 旅 人倫 道は地儀

位(くらゐ)捨つれば人も問ひ来ず
雑 人倫 

  一声法螺の館(たて)は崩れて
雑 法螺は字音だが連歌で使用可(山田孝雄『連歌概説』) 館は居所のうち



by 連歌楽歳 (2017-10-10 21:59) 

羽衣

宗匠さま 
拙 いにしへ句 御治定頂きまして 誠に有り難うございました。
もとより 宗匠さまの 御舵取りにお任せ申しておりますので
何卒よしなにお導き頂けましたら幸甚に存じます。

如月さま 
御 平城山 句 「色なき風のわたる」 で時空を超えたスケール感
と浪漫性、 さらに歌のもつダブルイメージでおもむき深く 
大変結構に存じました。
若い頃は 全く馴染めぬ歌(歌詞 及びメロディー)のひとつ
でしたが何故か まだ口遊めるのが不思議です。
宗匠さまも 億劫 といふ病?(時に結構毛だらけ?) で
いらっしゃるご様子、水はさらさらと流れるのがよろしいようで~
皆さまにも屹度ご納得頂ける事と存じます。
寒暖の差の激しい折柄 皆さま ご自愛頂きますよう~
 
 
by 羽衣 (2017-10-11 00:03) 

如月

羽衣さま、
色なき風の拙句につきまして、過分のお言葉をいただきまして、まことに有難うございます。
羽衣さまの感性が選んでくださいましたこと、嬉しく存じます。


宗匠さま、
木と草が大打越や打越に置かれている例、あるのですね。
心敬、宗砌という大物さんたちがなさっていらっしゃるのは、仰るように「心強い支え」と感じられるのは確かです。

しかし一方で、これは大物たちだから許されることであって、私のような初学者が、「だから、風と風の四句去りは問題ないでしょ」と事も無げに言うのは図々し過ぎる、というようにも、つい思われてしまいます(私は気が小さいのでしょう)。

ただ、宗匠さまも「鎌○ぬ」とのご意向、治定くださった羽衣さまも「よろしい」との評価をくださっていますので、すべては御意のままにお任せいたしたく存じます。
改めまして、ありがとうございました。


皆さま、
明日夜から、雨催いの天気がつづき、寒くなるようです。寒露の時候を迎え、秋もいよいよ深まってゆくのでしょう。
風邪など召しませぬよう、呉々もご自愛下さいませ。
by 如月 (2017-10-11 23:57) 

連歌楽歳

吹物は5句隔てるのが普通であるが、時には・・・・・という例

  いかにさくらを風のとふらん      宗長
  またさむき雪にも春の色みえて    宗般
  のむやなさけののゑひのほとなさ   肖柏
  たはふれはおもへはさむる夜るの夢  泰●
  月すむ水にさるの一こゑ         宗友
  大井川山は嵐の秋ふけて        宗祇
       (葉守千句第2)

宗祇も中4句で風を吹かせています。「名人なおこれを過つ。いわんや初学者においてをや」と考えると気が楽になります。宗祇には許されて如月には許されぬことなどどこにもありません。近代立憲主義が政治原理になっている今日、連歌においても権力者―過去の大宗匠―の恣意的な権力行使は排除されます。はは、なんだか選挙演説みたいになっちゃって……。

by 連歌楽歳 (2017-10-12 01:20) 

如月

宗匠さま(皆さま)

宗祇さまも、四句去っただけて風を吹かせていらしたとは!

如月にもそれは許されますとの、力強くも頼もしいお言葉!
有り難いことでございます。文藝民主主義宣言のようにも響きます。

つまりは、けっこう式目違反は行われているのですよ、ということですね!

宗匠さまの博引旁証によって、式目違反辞典を編まれたら、面白いのではないでしょうか?
興味深いことと、読者に喜ばれることでしょう。
(もしかしたら、式目成立の時期確定に役立つ資料にもなるかもしれません。)

問題は、副産物として、堂々と違反をする確信犯が続出するかもしれない、ということですね。
(安倍がやっている「お友達優遇」を自分がして何が悪い、と勘違い者が言い出すような具合に・・と譬えるのは、極端すぎるでしょうか?)

そこのところを、どう考えたらよろしいのか・・。
それは、連歌・連句の式目のみならず、或いは定型詩一般の規則のみならず、あらゆる「秩序」に係わる問題に連なってゆくのでしょう、きっと。


すみません、いろいろと刺激を受けて思考が止まらなくなりました。
つまらぬお喋りにお付き合いさせてしまいまして、恐縮に存じます。

宗匠さま、
初学者だから許されない、というふうに(権威主義的に)発想するのはやめるようにいたします。
ご指摘とご指導、有難うございました。
by 如月 (2017-10-13 12:18) 

連歌楽歳

如月さま

そのあたりのことは、二条良基が『連歌秘抄』に次のように書いています。

「真実よき句になりぬれば、少々嫌物あれど点はあふ也。但、人の意向にあるべし。愚意には、真実秀逸にてあらば、少々の嫌物に目をかくべからず、合点すべき也。知りながらせよとにはあらず。誤りたる時の事也。それもあまりに露顕したらんば、然るべからず。只詞などの指合也。加様の事はただ人の所存にあるべき歟」


by 連歌楽歳 (2017-10-13 13:22) 

楽歳

さきに「連歌秘抄」と書きましたが、「連理秘抄」のあやまりでした。訂正します
by 楽歳 (2017-10-13 20:38) 

如月

宗匠さま

さらなる貴重なご教示、感謝申し上げます。

さすが二条良基さま、「確信犯はダメ!」と、ハッキリと釘をさしていらっしゃったのですね。
それに、良い句であることが第一の条件のようですから、ハードルは高いということですね。

『連理秘抄』は、連歌に関して私としては初めて読んだ書ですので、懐かしいです。
残念ながら、全編しっかり読んだわけではありませんし、読んでもすぐに忘れてしまうのが、凡愚の悲しさでございます。
ご指導、有難うございました。
by 如月 (2017-10-14 01:09) 

連歌楽歳

夢梯さまから、以下の治定と付句をいただきました。
(楽歳代筆)


●4折表14治定
 位捨つれば人も問ひ来ず   楽歳

●4折裏1付
 取り出す書(ふみ)を枕にうたゝねす    夢梯
 閑かなる時の長さに開く眉
 鶏鳴くも身は軽ろがろの寝ざめにて
 野に出でていざ言問はむ雲に水
 身を責むるものなきことの嬉しさよ
 冠も袍も要らざる嬉しさよ

    *
 取り出す書(ふみ)を枕にうたゝねす    夢梯
雑 夜分(枕・うたたね)

 閑かなる時の長さに開く眉
雑 眉は人体

 鶏鳴くも身は軽ろがろの寝ざめにて
雑 鶏は鳥類 時分(朝)

 野に出でていざ言問はむ雲に水
雑 地儀(野) 聳物 水辺用

 身を責むるものなきことの嬉しさよ
雑 人倫(身を責むるの身を人体とすると物理的拷問になるので、この場合は人倫と解するのが穏当)

 冠も袍も要らざる嬉しさよ
雑 冠・袍は衣類(衣類と衣類は7句去り) 袍(ほう)は字音になるので「袍」の代わりに「衣」、衣では衣冠束帯の感じが伝わりにくいので「裃」あたりがよろしいかも。

 冠や裃要らぬ嬉しさよ

夢梯さまに無断で変更いたしました。


by 連歌楽歳 (2017-10-16 00:03) 

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