電脳千句第7 賦何水百韻 二折表 2016.10.24~
憂きことの重なるあした霜白く 花
心づよきは老いの方人(かたうど) 梯
此の山を越えば信濃のつかまの湯 舎
み寺のいらか若葉がくれに 草
連れ立ちてつつましげなる蝸牛 香
たはむれせんと生れ出づる世 風
たらちねの母の刺し子の麻の葉も 姫
片時去らず想ふよすがに 月
鮎落ちて京(みやこ)に近き皿の上 衣
訪ふ里の鶉鳴く宿 歳
琵琶の音に誘はれ仰ぐのちの月 梯
揺らす人なき柴の戸の揺れ 花
うつし世にかなはぬ恋と知りながら 草
なみだの川に架かる継ぎ橋 舎
<進行表はこちら>
2017-01-26 00:50
コメント(54)
1折裏のコメント欄から引っ越し
*
宗匠さま
お待たせいたしました。徹夜明けの重く、働かない頭を、お散歩と入浴で少しだけリフレッシュいたしました。宇和島の友人から送られてきた大きな柚子を浮かべたお風呂は気持ちよく……正直なところ、ちょっと眠くなっており、いつにもまして拙い句になります。どうぞお許しくださいませ。
羽衣さまの句 どれも素敵でとても迷いましたが、
つがはぬ鴛鴦をしのぶ独り寝
をいただかせてくださいませ。冬の恋を感じて見たくなっております。
拙次です。どうぞよろしくご指導くださいますよう、お願いいたします。
朝凍の宿に残せしわが小袖
雪じもの道行きつるる人もなく
憂きことの重なるあした霜白く
きぬぎぬの袖に淡雪降りそめて
P.S.写真の鳥はコウノトリでしょうか.
by 路花 (2017-01-30 17:13)
朝凍の宿に残せしわが小袖 路花
冬 凍て 時分(朝) 朝凍・朝風のような朝の字は懐紙をかえて4句物 居所(宿は只1、旅に1、の2句物) 衣類 わが(吾)で人倫
雪じもの道行きつるる人もなく
冬 雪は降物 人倫 「道行きつるる」は、「道行くの連用形+完了・継続の助動詞のつの連体形」にさらに「る」がついていて、おそらく「道行つる」ではないかと思われます。そうであれば、
①雪じもの道を行きつる人もなく (単なる往来、または旅)
②雪じもの道行きしつる人もなく (近松以降は相愛の男女の逃避行で、恋の句)
と変更する案もありますが、ご再考いただけるのであればそれまで預かります。
憂きことの重なるあした霜白く
冬 降物(霜) 時分(あした)
きぬぎぬの袖に淡雪降りそめて
冬 恋 降物(淡雪)きぬぎぬ 夜分 衣類(袖)
路花さま、ご多忙中、徹夜明けの付句をありがとうございました。なお、今回のあしらい写真の鳥はリスボンのカモメ。都鳥の親類です。入江のように川幅の広いリスボンのテージョ川に面し、三方を歴史的な建物に囲まれたコメルシオ広場の海岸で撮影しました。
by 連歌楽歳 (2017-01-30 20:12)
by 連歌楽歳 (2017-01-30 20:20)
<1折裏のコメント欄から引っ越し>
宗匠さま
ありがとうございます。「雪じもの」の句は、「道を連れ立って行く―行き連れる」を言ったつもりでしたが、内容としては、「道行き」の恋を詠みたかったものです。お考えいただいた②にしていただいてよろしいでしょうか。
リスボンの鴎でしたか。偶然にも、先日、友人がリスボンに行ったのだが、期待していたファドが聞けなかったとのメールがあり、ファド好きの私は大喜びで、アマリア・ロドリゲスや、日本のファディスタ(であり友人でもある)高柳卓也のCDをお貸ししました。
余計なおしゃべりを申し訳ございません。
どうぞよろしくお願いいたします。
by 路花 (2017-01-31 13:43)
連歌楽歳
それでは、
雪じもの道行きしつる人もなく
とさせていただきます。
ファドはライブではなくファド博物館の録音でいろいろ聞きました。
by 連歌楽歳 (2017-01-31 14:06)
by 連歌楽歳 (2017-01-31 14:11)
by 連歌楽歳 (2017-01-31 14:14)
●2折表1治定・2付け
夢梯さまから郵送でいただいた治定、付句を転載します。
*
路花様の
憂きことの重なるあした霜白く
を頂き
付
自然の妙に触るゝよろこび
心づよきは老いの方人
老いのゆくへをへうへうと生き
老いをはらひてのぼる冬山
宗祇の越えし冬の山々
冬三句は少しくどいかとも思いましたが、何しろ寒いもので冬の句ばかり浮かびます。あしからず。
*
自然の妙に触るゝよろこび
雑 自然(しぜん・じねん)は字音なので残念ながらボツです。
心づよきは老いの方人(かたうど)
雑 老は2句物(只1、鳥木など1) 人倫
老いのゆくへをへうへうと生き
雑 老は2句物(只1、鳥木など1)
老いをはらひてのぼる冬山
冬 老は2句物(只1、鳥木など1) 山類
宗祇の越えし冬の山々
冬 人名・人倫 山類
by 連歌楽歳 (2017-02-03 18:54)
皆さま、こんにちは。
1日から数日、山国におりましたため、たいへんお待たせしてしまいました。
夢梯さまの
心づよきは老いの方人(かたうど)
を頂戴しました。
高齢化社会などと呼ばれる今の世ですが、みなが高齢、みんなでわたればこわくない。元気にすごしたいものです。
此の山を越えば信濃のつかまの湯 蘭舎
ほかに知るひとなき里のかきつばた
まなかひに聳え立ちたる甲斐のやま
早川の水の浮き橋毀たるる
鄙なれど唯おほどかに住みなして
楽歳宗匠、千草さま、なにとぞよろしくお捌き、ご一直くださいませ。 蘭舎拝
by 蘭舎 (2017-02-09 12:20)
●2折表3付け
此の山を越えば信濃のつかまの湯 蘭舎
雑 山類 信濃・つかまは地名 つかまの湯は温泉で、温泉は水辺
ほかに知るひとなき里のかきつばた
夏 杜若は草類・1句物・水辺用 人倫 里は居所
まなかひに聳え立ちたる甲斐のやま
雑 まなかひは人体 甲斐は地名 山類
早川の水の浮き橋毀たるる
雑 早川が普通名詞か固有名詞かは不明 水辺体 水は水辺用 浮き橋は水辺用 5句前に水茎の「水」の字。同字5句去り。「早川の水の浮橋」を「早川にわたす(かけし)浮き橋」としては如何?
鄙なれど唯おほどかに住みなして
雑 鄙は地儀
by お名前(必須) (2017-02-09 18:00)
楽歳さま
早川の水 お直しありがとうございます。
「早川」は普通名詞ととってください。
気が付けば、拙次、水辺ばかり並べてしまいましたね。
宜しくお願いいたします。 蘭舎拝
by 蘭舎 (2017-02-10 00:50)
楽歳様
蘭舎様
お帰りなさいませ。
ゆったりとすてきな運びになっていて、どの句をいただきたくて、
思案しておりますが、質問をお許しいただけるなら
此の山を越えば
を今少しご説明願わしく、宗匠様、よろしくお願い申し上げます。
by 千草 (2017-02-10 20:19)
千草さま
おはようございます。宗匠さまのご説明へのおたずねですが・・、
「此の山を越えば」の拙句についてのおたずねは、
分類上のことか、文法上のことか、地名・国名などの詞のことか、句意や表現全体のことか、どのあたりのことでしょうか?
具体的なことがらがございましたら、お教えください。
県歌「信濃の国」に登場する「つかまのゆ」を詠みましたが、
「そのはら」同様、つかみどころのないものを詠んでおり、すみません。
わたくしも、ふと気になりましてのおたずねです。
蘭舎
by 蘭舎 (2017-02-11 07:52)
蘭舎様
質問が漠然としていて失礼申し上げました。
「越えば」について
「越ゆれば」のことを考えたのでした。
角川の古語辞典を見ると
助詞「ば」は活用語の①未然形、(越え)
②已然形(越ゆれ)のどちらにも付くのですが
どうも、両者の意味の違いがよく分からなかったので
わからないことは、なんでも宗匠様とイージーな態度で
反省しております。
つかまの湯の美称には、ほれぼれとし
今すぐにでも訪れてみたいような。
是非、こちらに付けをいたしたく存じます。
お騒がせしてお許しください。
、
by 千草 (2017-02-11 10:42)
「越ゆ」の活用形のことですが、結論から言えば未然形「越えば」、已然形「越ゆれば」のどちらを使っても意味をなします。
① 海行かば水漬く屍山行かば草生す屍 (家持)
② 淡海の海夕波千鳥汝が鳴けば情もしのに古思ほゆ (人麻呂)
「此の山を越えば信濃のつかまの湯」。丸子町から国道254号を走って、鹿教湯でちょっとお湯につかり、三才山トンネルを抜ければ松本市です。美ヶ原の山裾に浅間温泉、美ヶ原温泉があり、このあたりが「つかまの湯」だったといわれています。美ヶ原に連なる峠を初めて越えるのであれば未然形、通いなれた道であれば已然形が気分にあいます。
by 連歌楽歳 (2017-02-11 11:50)
千草さま 楽歳さま
「越ゆ」ヤ行下二段活用は、耳に馴染まないことが多くて、ふと不安になりますが、
①「越えば」(未然形)は、
このやまを越えれば、信濃の名どころの「つかまの湯」がございますよ。
②「越ゆれば」(已然形)は、
このやまを越えましたので、ここは、もう、信濃の「つかまの湯」ですよ。
となりますでしょうか。
作者は①として詠みましたが、いかがでしょうか?
山の多い信濃で「此の山」がどこなのかあやしく、また、
「信濃」がくどいので、野暮ではありますが・・・。
どうぞ、よしなに。 蘭舎拝
by 蘭舎 (2017-02-11 12:42)
追伸
あっと、②の意味は、
この山を越えますので(越えて行くことにしていますので)・・・とする方が適切かもしれませんが、舌足らずな句となって、ちょっとぴんときません。
まぼろしの湯に、手足を伸ばし、頭をほぐしたいです。
蘭舎拝
by 蘭舎 (2017-02-11 13:42)
大野晋他『岩波古語辞典』が接続助詞「ば」で承ける未然形と已然形の意味の違いについて簡潔な解説をしているので、紹介します。
①「ば」が未然形を承けて成立する条件句は、仮定の条件を示す――「命あらば逢ふこともあらむ」(万葉集)
②「ば」が已然形を承けて成立する条件句は既定条件を示し、(a)「すでに……だから」という確定条件を示す場合――「春なればうべも咲きたる梅の花(万葉集)」と、そこから転じて(b)「……ので」と恒常の条件を示す場合――「飛び立ちかねつ鳥にしあらねば」(万葉集)と、さらに(c)「いつも……すると」あるいは単に「……すると」の意を表す場合――「鳴く蝉の声をし聞けば都し思ほゆ」(万葉集)――の場合がある。この最後の用法(c)は、仮定の条件を示すのと大差がなく、時代が下るにしたがって、已然形と「ば」の組み合わせが仮定条件を表わす語法となり、未然形と「ば」による仮定条件表現は少なくなっていった。
<古典連歌での使用例>
風吹かば峰のもみぢのいかならむ 天正年間百韻
初雪降れば人も通はず 河越千句第4
*
明日草津のお湯に浸かりに行きます。日・月と不在です。雪で閉じ込められることがなければ火曜日に帰ってきます。
by 連歌楽歳 (2017-02-11 14:44)
お二方様、
ご教授ありがとうございました。
「いまだ」と「すでに」なんですね。
あらためまして
此の山を越えば信濃のつかまの湯 蘭舎
いただきます。
此の山はもちろん本当の山河の山でございますが
現代に住みなれておりますと、ふとカタカナで書く「ヤマ」と申す山もうかびますが、もちろん連歌の雅ひとすじでまいらねば。
付け
み寺のいらか若葉がくれに 千草
形代流すみ社の川
ましらのやからこころよさげに
声に標の指す方を読み
つかのまながら心放ちて
よろしくお捌きくださいませ。
by 千草 (2017-02-11 14:53)
千草さま。さっそくの付け句をありがとうございました。
み寺のいらか若葉がくれに 千草
夏 若葉は木類 釈教(寺) いらか(甍)は通常「居所体」ですが本体の寺(非居所)に合わせてこの「いらか」は非居所。
形代流すみ社の川
夏 形代は『毛吹草』に夏。 神祇 川は水辺体
ましらのやからこころよさげに
雑 ましらは2句物(ましら1、猿)獣類 前句との関連で「温泉猿」となり冬の風景ですが、だからといって冬と認定するのは踏み込み過ぎ。
声に標の指す方を読み
雑
つかのまながら心放ちて
雑 つかまの湯の「つかま」は現代の松本市の地名では「筑摩」という漢字になります。一方、日本書紀に出てくるつかまの湯は「束間」と表記。洒落にするには距離が接近し過ぎのうらみがあります。
*
草津温泉に出かけるのは、つれあいの年度末試験の採点が終了、一ヤマこ越えたからです。ああ、温泉に入りたいというので、草津の雪見風呂へ。
by 連歌楽歳 (2017-02-11 16:31)
楽歳様
雪見の草津、よろしいですねえ。
ご指摘の拙句
つかのまながら心放ちては
心の文字も、打越にあり早速取り下げまして
栂の梢を渡る白雲 千草
をお出しいたします。
豪華なダイニングテーブルの中央には立派な帆船のオーナメントが
飾られて、ポルトガルのお写真でしょうか。
前のエジプト風の一見マグネットかなという画像も面白く拝見しました。
by 千草 (2017-02-11 17:42)
では、入れ替えをいたします。
栂の梢を渡る白雲 千草
雑 木類 聳物
by 連歌楽歳 (2017-02-11 18:56)
写真は草津のゴンドラでしょうか?!
スキーの後の温泉、たまりませんね~♪ 筋肉痛に欠かせません(笑)。
さて、千草様の
み寺のいらか若葉がくれに いただきまして
付け
手ならひや祭り太鼓のはずむ音 遊香
連れ立ちてつつましげなる青蛙
さやさやと夏の衣の裾さばき
鄙の歌とどけて風の涼しけり
楽歳さま、お手直しよろしくお願いいたします。
by 遊香 (2017-02-14 23:23)
手ならひや祭り太鼓のはずむ音 遊香
夏 祭『連歌新式』『連歌合璧集』では「神祭(カミマツル、カミマツリ)」。元禄のころの『産衣』に「只祭と許も夏也。かもの祭を本とする故也。其外、名をさす祭ハ其季ニ随ふべし」 神祇
連れ立ちてつつましげなる青蛙
夏 蛙(かはづ)は連歌の時代から春の季語。青蛙は連歌の時代には歌材にはならず、俳諧の時代に夏の句材になった。俳諧に敬意を表して、夏。蛙は水辺用で、2折表第3句のつかまの湯と水辺の打越。預かり。
さやさやと夏の衣の裾さばき
夏 衣類
鄙の歌とどけて風の涼しけり
夏 涼しは2句物、夏の外またあるべし 鄙は地儀 風は吹物
*
遊香さま。
写真は草津国際スキー場のロープウェーから。ご明察。
千草さま。
その前の写真は、ポルトガルの王様の夏の離宮のダイニングルームでした。ご明察。
by 連歌楽歳 (2017-02-15 12:07)
楽歳さま
蛙が水辺とのこと、失礼いたしました。
そういえばわが家の近くにも「かえる池」があります(笑)。
「連れ立ちて…」の句は取り下げ、と思いますが、
「青蛙」でなく「かたつむり」「草ほたる」でしたら成立しますでしょうか?
「ほたる」も「あっちの水は~♪」と歌がありますから水辺かと思いつつ(笑)、ご面倒を顧みず、お訊ねする次第です。
写真はやはり草津でしたか!
先日、裏磐梯の猫魔スキー場に行ったら設備が古いまま、
フードの付いてない吹きさらしのリフトばかりで、
寛げる草津のゴンドラが懐かしいことでした。
by 遊香 (2017-02-15 17:42)
「草ほたる」は手持ちの辞書に出ていませんでした。手持ちの歳時記で草ほたるを取り上げているのは『二十七季』だけでした。古典連歌に草ほたるの使用例は見当たりませんでした。ちなみに蛍は1句もの、非水辺。
伝統的な「蝸牛」で参りましょう。若葉のシーズンはかたつぶりのシーズンです。
連れ立ちてつつましげなる蝸牛 遊香
夏 虫類
by 連歌楽歳 (2017-02-15 20:14)
楽歳さま
ご教示、お捌き、ありがとうございました!
そろそろ啓蟄、小さな生き物の観察を楽しみたいと思います。
by 遊香 (2017-02-15 21:38)
訂正
さきに『二十七季』と書いたのは、
『十七季』の誤りでした。
by 連歌楽歳 (2017-02-15 21:47)
連れ立ちてつつましげなる蝸牛 遊香
付
たはむれせんと生れ出づる世に 梢風
絵筆執る日のしげくなる頃 〃
雨にしたしき町の彩り 〃
楽歳様、よろしくお捌きお願い致します。
by 梢風 (2017-02-17 00:06)
たはむれせんと生れ出づる世に 梢風
雑 世は5句物(只1、浮世、世の中の間1、恋の世1、前世1、後世1)。「生まれ出づる世に」の8音を「生まれ来る世に」としては如何?
絵筆執る日のしげくなる頃
雑 日は光物でなく日次の日
雨にしたしき町の彩り
雑 雨は降物 町は地儀
by 連歌楽歳 (2017-02-17 11:35)
楽歳様、皆様
先日の季語研ではありがとうございました。
お先に失礼して自由律の三連に参加できず残念なことでした。
さてお時間たっぷりいただいてしまいました。
梢風様の
たはむれせんと生れ出づる(来る)世に
をいただきまして
付
集めたる見立ての器並べをり 朝姫
訪ぬればまほらの邨の夜のしじま
たらちねの母の刺し子の麻の葉に
幸あれと母の御胸に抱かれて
梢風様の「生れ出づる世に」「生れ来る世に」はどちらに致しましょうか?
「出づる」の語感が捨て難いのですが8音も気になるような。。。「生れ出づる世」でとめてしまうのはおかしいでしょうか。
楽歳様と梢風様にご判断していただけたら幸いです。
また拙句につきましてもお手直しどうぞよろしくお願い致します。
まだまだたわむれる程の余裕がないのが悲しいところです。。。
by 朝姫 (2017-02-20 23:24)
●2折表6治定
「たはむれせんと生れ出づる世」ではいかがですか?と、朝姫さまから提案を頂きました。打越の句が「み寺のいらか若葉がくれに」と助詞「に」で終わっていることもあり、この修正をありがたくいただきます。梢風さま、いかがでしょうか?
付
集めたる見立ての器並べをり 朝姫
雑
訪ぬればまほらの邨の夜のしじま
雑 旅 邨は地儀(居所のニュアンスもあり) 夜分
たらちねの母の刺し子の麻の葉に
雑 人倫 衣類 麻の葉は刺し子の模様。麻の葉が植物の場合、夏。また、神祇。「思ふことみなつきねとて麻のはをきりにきりても祓へつるかな」(和泉式部)。
幸あれと母の御胸に抱かれて
雑 人倫 人体
by 連歌楽歳 (2017-02-21 11:41)
楽歳様
ご教示ありがとうございます。
「麻の葉が神祇??」と初めて知って色々調べました。
和泉式部の歌は茅の輪くぐりの時に唱える歌の一つなんですね。
実は生まれてこのかた茅の輪くぐりの経験がなく、ここ数年機会を窺っているところで、ますますくぐる気満々になってきました!
ところで大打越が助詞「に」で終わっているとのことですので、問題の「麻の葉」句は下記の通りに直します。
たらちねの母の刺し子の麻の葉を
楽歳様、如月様、どうぞよろしくお願い致します。
by 朝姫 (2017-02-21 23:10)
朝姫様
「麻の葉を」の件了解しました。
『連歌新式』は「つつ・けり・らん・して」の類は打越を嫌う、としていますが、連歌作品集をぱらぱらめくった大雑把な感触では、中3句を隔てれば使ってよさそうです。
by 連歌楽歳 (2017-02-21 23:53)
遅ればせながら、
拙句「たはむれせんと生れ出づる世に」の結句は「あれいづるよに」で七音です。「あれいづ」は普通の複合語です。前後付け易いよういかようにもご一直結構です。
by 梢風 (2017-02-26 22:15)
『梁塵秘抄』の「遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん」が頭に浮かんだものですから、失礼しました。
「に」の字留めが打越になりますので、このまま「うまれ」でお許し願います。
電子辞書の『精選版日本国語大辞典』によると、「生(あ)る」は神霊の出現、あるいは神霊の意志の顕現を意味することが多く、『うまれる』とは異なる意であろう。類語『うまる』は元来『出生』を意味する」とあり、気になるところです。
俳諧連歌であればこの違いが面白みを生み出すのでしょうが、連歌のばあいはどうなのか、そのあたりのニュアンスの差は専門家に尋ねないとつかめません。
by 連歌楽歳 (2017-02-26 23:12)
楽歳様、「生まれ出る世に」「生まれ来る世に」、どちらでも結構です。
「あれいづ」は微妙な言葉ですね。『日本国語大事典』(小学館)には「神霊などが現れ出る」とあり、『摂津風土記』の中の「昔、息長足比売天皇(おきながらたらしひめのみこと)のみ世、住吉の大神現出(あれいで)まして、天の下を巡り行でまして」と出ています。
よいたしかめになりました。有難うございます。
by 梢風 (2017-02-27 06:00)
宗匠さま、皆さま、
たいへん遅くなりまして、恐縮に存じます。
朝姫さまの麻の葉のお句を頂戴いたします。懐かしさを味わわせていただきました。
たらちねの母の刺子の麻の葉を 姫
拙次
信太の杜に詣るしるべと
九字まいらせて形代とせむ
鏡の匣の護りとやせむ
片時去らず想ふよすがに
形見の雲となりてなほ恋ふ
途(みち)やすけくと祈る社に
麻の葉模様は邪気を払うとかで、産着にもよく使われますが、宗匠さま、朝姫さまのご教示で、麻の葉そのものが神祇の語であり、和泉式部の和歌は茅の輪くぐりの際のうたであること、お教えいただきました。ありがとうございます。
朝姫さま、茅の輪くぐりにぜひ挑戦なさってくださいませ。私は昨年、旅先の嵯峨の野宮神社で、くぐってきました。今年は地元の王子神社で式部のお歌を唱えながら潜りたいと、今から楽しみです。
なお「麻の葉を」と、「に」が「を」に替りまして、初心者としては格段に難しくなったように感じました。
「を」ですと目的格になりますから、多義的な状況語として解すことが困難に思われまして、付句が前句と一続きの句になってしまったようで、それが気掛かりでございます。
宗匠さま、羽衣さま、ご指導・お捌き、よろしくお願い申し上げます。
by 如月 (2017-02-27 13:06)
オーラの漂う句を6句も、ありがとうございました。
信太の杜に詣るしるべと
雑 信太の杜は神祇・名所。
九字まいらせて形代とせむ
雑 神祇(「九字」は中国の道教に始まり、日本の修験道・陰陽道・密教、はては忍法に至ったおまじないとのこと。密教関連で使われれば釈教となって、4句前の「み寺」に障る(釈教と釈教は5句隔てる)。しかし句中に「形代」――神祇とその周辺の言葉――があるので、ここの「九字」は修験道・陰陽道がらみの神祇と考えることができる)
鏡の匣の護りとやせむ
雑
片時去らず想ふよすがに
雑 「想ふ」が使われているが、前句とのつながりにおいて、恋の句にあらず
形見の雲となりてなほ恋ふ
雑 形見の雲は火葬の煙、雲・煙は聳物 無常・述懐 恋の句に非ず。参考「その何事も今ははかなや――恋しさの形見の雲もきゆる日に」(永原千句第六)
途(みち)やすけくと祈る社に
雑 社は神祇 旅の出立のようでもあるが、前句との関連では特に旅とする理由はない
*
辞書には、「を」は文末にあって体言・連体形をうけて詠嘆を表す間投助詞とあり、「八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣作る その八重垣を」を例示しています。連歌の千句集を斜め読みしましたが、「を」が直接体言を承ける「麻の葉を」のような使用例は見た限りではありませんでした。「花みては鶯迄も鳴ものを 救済」(紫野千句第六)のような「もの(名詞)+を(間投助詞)」一体化させた詠嘆の終助詞としての使い方が散見できました。
*
「茅の輪」ですが、私もくぐり抜けたことがありません。「室の八島」がある栃木市の大神神社へ行ったことがあります。鳥居の下に茅の輪がありました。ムムッと、ただならぬ妖気を感じて、茅の輪を避けて鳥居をくぐり抜けました。
by 連歌楽歳 (2017-02-27 16:52)
宗匠さま、
ご指導、コメント、有り難うございました。
「を」は詠嘆と捉えるのが、やはり適切なのですか。
下五に強調が感じられるとしても、切れのない一章仕立ての句構造と、下五の名詞+を という形からして、文法的には対象(目的語)を示す助詞と、私は考えたのでした。
付句が前句に凭れすぎていますでしょうか。
作り直しが良い場合は、ご遠慮なく指示してくださいませ。
羽衣さま、作り直し、ご一直、いかようにもお捌きください。
よろしくお願い申し上げます。
トップの写真、見事な雛飾りですね。細かなお道具類が揃っているのが立派です。
以前、三井記念美術館で「お姫さまたちの雛飾り」展を、また雅叙園の百段階段でも雛人形コレクションを見たことを、思い出しました。
by 如月 (2017-02-28 01:09)
如月さま
ここの「を」が格助詞なのか接続助詞なのか間投助詞なのか、議論は尽きないでしょうね。
「たらちねの母の刺し子の麻の葉を」を、独立したセンテンスととるか、後半が省略されたセンテンスの一部ととるかで、「を」の役割が変わります。
①<格助詞の場合>文中に麻の葉を対象に動作が向かう述部がありませんので、省略されたと考えるしかありません。たらちねの母の刺し子の麻の葉を――失へり(いまも愛で)。
②<接続助詞>接続助詞は一般に用言・助動詞に付きますので、ここの「を」は接続助詞ではありません。
③<間投助詞>間投助詞「を」が文末に来る用例はざっと眺めたところ連歌集には見当たらず、「ものを」という終助詞の使用例ならあったということはすでに書きました。
①のばあい、「たらちねの母の刺し子の麻の葉を――それがどうした?」と句が中途半端になります。
③の場合、「あしひきの山より出づる月待つと人には言ひて妹待つ我を」(広辞苑の「を」の項にこんな可愛らしい万葉の歌が用例に引かれていました。広辞苑によると、「を」は「種々の語を受け、その語を確かに肯定し、承認する意味を示す。おもに奈良・平安時代に行われ、これが発展して目的格を示す用法が確立」と説明がありました。下って室町のころになると、「ものを」が主流になったと想像できます。
カット写真の雛壇は東洋文庫のギャラリーに展示されています。東洋文庫を創設した三菱財閥の3代目が孫娘のために京都の人形師に発注したものと説明書きにありました。
by 連歌楽歳 (2017-02-28 22:32)
宗匠さま 皆さま
まあなんと 早や弥生三月 ! (旧暦新暦まぜこぜのいい
加減な 言い方ですみません~)
はやく暖かくなってほしいとは念じますが この ゛時‘ の流れの
速さ にはビビりまくっております。
扨 此度 難しい場面に通り掛かりましたようでございますが
当方には とてもお捌き申し上げる立場も 能力もございません。
が 朝姫さま御句 ~麻の葉に~ が大打越とのことですが
宗匠さまも仰せのように ~に でもよろしいのでは?
又は ~麻の葉も~と なさっていたたきますと如月゛さま御句
にもご都合よろしいのでは?(飽く迄も疑問符ではございますが)
などと勝手に案じ居る次第でございます。
何卒 御導きの程 宜しくお願い申し上げます。
(麻の葉 は雑とのことで 刺し子の模様として承りました。)
たらちねの母の刺し子の麻の葉を(も、の、に)
片時去らず想ふよすがに(と、ぞ)
付け
戦ひ(たたかひ)の明け暮れありて法の舟
いくさ止み平らかな世の来るならむ
はつ汐が(の)洗ふ磯辺のあはれなる(り)
かぶきたる案山子つつける烏来て(鴉どち)
露の身をいつきの宮にたてまつる
出直します~ので~ 取り急ぎ 失礼申し上げます。
by 羽衣 (2017-03-01 01:14)
宗匠さま 朝姫さま 如月さま 皆さま
只今 送信致してしまいましたが
お名前を 大変失礼致しておりました。
また 宗匠さまからのご教示もございまして
未だ確と拝見致して居りませんが 失礼の段
お詫び申し上げます。
取り急ぎお名前のみ加えさせて頂きます。
たらちねの母の刺し子の麻の葉を 朝姫さま
片時去らず想ふよすがに 如月さま
by 羽衣 (2017-03-01 01:32)
宗匠さま、
重ねてのご丁寧なるご教示、まことに有り難うございます。噛んで含めるようなご説明に、霧が晴れてゆくような感を覚えました。
その昔「……その八重垣を」を習って以来の腑に落ちない思いが今も私の中に残っていたのでしょうか、それが今回も出てきてしまったようです。
宗匠さまが引用してくださった「その語を確かに肯定し、承認する」という広辞苑の記述には、たしかに納得します。
それに加えて、「なにかしらの応答をもとめる強い促し」もあるのではないかと、今回気づいた次第です。
その促しに応えるようなかたちで、私は付句をつけたように感じます。
ですので、「これが発展して目的格を示す用法が確立」という考えを、今は私なりに理解すること出来ました。
肯定・承認・強調・詠嘆の「…を」に対して何らかの応答をしたときに、「…を」は目的格の(ような)働きを持つに至る、という風に考えてみた次第です。
今は自分なりにそう考えて(こじつけて?)おくことにいたします。
有り難うございました。
羽衣さま、
治定と貴重なるご提案、有り難うございました。
片時去らず想ふよすがに
の末尾の「に」を、「と」あるいは「ぞ」にしては、というご意見には、有り難いことと賛同いたします。
宗匠さまのご承認がありましたら、そのようにさせていただきたいと、思います。どちらでも構いません。
宗匠さま、いかがでしょうか。
よろしくお願い申し上げます。
お雛様は、東洋文庫所蔵の岩崎家のおひいさまのお持ちものだったのですか。
将軍家か大名家のお姫さまがお輿入れのお供にされたものかしら?などと、想像を巡らせておりました。
駒込の六義園の近くにある東洋文庫は、いつも人がいなくて、時間をゆったりと過ごすときには良い場所ですね。併設のカフェ=レストランも素敵な雰囲気です。
by 如月 (2017-03-01 11:44)
◎戦ひ(たたかひ)の明け暮れありて法の舟 羽衣
雑 釈教(法の舟とは仏教のことで、舟は水辺のようでもあり、ようではなし) 明け暮れは時分のようであるが、毎日毎日という意味を考えると、時分のようでなし。前句の「片時去らず」と重複を良とするか悪とするか、議論のあるところ。とはいうものの、2折表4に「み寺」があり、中4句なのでギリギリで障ります(釈教と釈教は5句)。
◎いくさ止み平らかな世の来るならむ
雑 2折6「たはむれせんと生まれ出づる世」に『世』は既出。
はつ汐が(の)洗ふ磯辺のあはれなる(り)
秋 汐・磯は水辺 「はつ汐の洗ふ磯辺のあはれなる」が心地よいです。
かぶきたる案山子つつける烏来て(鴉どち)
秋 烏は鳥類 「どち」が文末には重すぎる響きあり、聞きなれた「て」止が無難な感じ。案山子や添水は『無言抄』のころから連歌秋の詞 「案山子」の「子」が打越句の「刺し子」と障るのでひらがな「かかし(かがし)」に変更しましょう。
◎露の身をいつきの宮にたてまつる
秋 神祇 露は降物 身は一人称・私(斎皇女)のことで、人倫 斎宮は神祇(伊勢神宮、賀茂神社関連) 人倫は打越句の「たらちねの母」と障る(連歌では人倫打越はX)
◎句の修正をお待ちしています。
*
なお、「たらちねの母の刺子の麻の葉を 朝姫」についてご意見ありがとうございました。証歌もあるので、このままでまいります。
by 連歌楽歳 (2017-03-01 12:51)
宗匠さま
お捌き 並びにお導き賜り誠に有り難うございました。
み寺(釈教) 世(大打越)など 見落とし多々失礼申し上げました。
いつきの宮 は住居(神殿)の意 でしたが人倫でもあるということ
よくある例でございまして 集中力不足にて大変
申し訳ございません。
至らぬながら少しばかり再考致してみましたが
何卒よしなにご一直 お導き頂きますようお願い申し上げます。
片時去らず想ふよすがに 如月さま
付け
いくさ神まくら辺に立つ夢の告げ
はつ汐の洗ふ(はつ汐がしぶく)磯辺のあはれなる
かぶき(傾き)たるかかし突つける烏(鴉)来て
はつ嵐みやこ大路を吹き(掃き)きよめ
おち延ぶる身は落ち鮎のごとさびて(寂びて) (人倫?)
落ち延びて落ち鮎ねぶる髭の面 (人倫?俳諧?)
鮎落ちて京(みやこ)に近き皿の上
by 羽衣 (2017-03-01 15:39)
●2折表8・9仕切り直し
<2折表8治定>
片時去らず想ふよすがに 如月
<2折表9付け> いくさ神まくら辺に立つ夢の告げ
雑 いくさ神は軍神で八幡神、神祇 まくら辺・夢で夜分
はつ汐の洗ふ(はつ汐がしぶく)磯辺のあはれなる
秋 汐・磯辺は水辺体
かぶき(傾き)たるかかし突つける烏(鴉)来て
秋 かかし 鳥類 突くは4段活用で連体形は「つつく」。「つつける」は「つつく」の命令形+完了・存続の助動詞「り」の連体形「る」が組み合わさった形。元来「つつきあり」の形だったものが「つつけり」と音韻変化した、云々と『岩波古語辞典』に解説がありました。
はつ嵐みやこ大路を吹き(掃き)きよめ
秋 嵐は吹物(2句物) みやこ(都)は国郡
おち延ぶる身は落ち鮎のごとさびて(寂びて) (人倫?)
秋 魚類(落ち鮎は秋) 人倫(「身」は①人・獣の肉体②吾が身・自分③人称代名詞として一人称=私=身共。御身は2人称) 人倫打越です X
落ち延びて落ち鮎ねぶる髭の面 (人倫?俳諧?)
秋 魚類 髭の面は文字面から人体であると主張することが可能――「落ちぶれて鰯をねぶる厚化粧」。「ねぶる」という語勢から、鮎が調理前の生であるような感じになる。また「ねぶる」は連歌では気取って「眠る」が本命。まあ、俳諧でしょうね
鮎落ちて京(みやこ)に近き皿の上
秋 落ち鮎で魚類 みやこは国郡 人生の哀歓を鮎に託した句とお見受けしました。
by 連歌楽歳 (2017-03-02 00:07)
宗匠さま
仕切り直し! お付き合い頂きまして恐縮至極に存じます。
ご丁寧なお捌きとご教示に いつもながら感謝感謝です。
苦し紛れに つつける と致しましたが確とリサーチ賜りまして
恐れ入ります。安堵致しました。
誠に有り難うございました。
今宵は少々春雨めくしっとりとした雨夜となりました。
皆さまには 三寒四温 何卒お身体ご自愛遊ばされますよう~
有り難うございました。
by 羽衣 (2017-03-02 03:02)
●2折表9治定
鮎落ちて京(みやこ)に近き皿の上
●2折表10付け
訪(とぶら)ふ里の鶉鳴く宿
琵琶の音ゆらぐひとときの秋
雁がね寒き此のごろの空
<余談>
片時去らず想ふよすがに 如月
鮎落ちて京(みやこ)に近き皿の上 羽衣
如月さまの「片時去らず想ふよすがに」の「よすが」はその前句とのつながりで「縁・因」でしょう。ところで「冬のさみしき時雨の夜すがはあられ酒をともとす」という17世紀の文例が『精選版日本国語大辞典』に引かれていて、「夜すが」は「夜すがら」の変化した語と説明がありました。「夜もすがら」ですね。少々アクロバティックですが、「よすが」をよもすがらとあえて読み替えて、「鮎落ちて京に近き皿の上 羽衣」とつければ、これもまた味わいのある付け合いになります。時ながれて若鮎が落ち鮎になって皿の上。「俎上の魚」を超えて、皿上の魚となれば(このあたり俳諧調ですが)、すでに成仏。
*
訪(とぶら)ふ里の鶉鳴く宿
秋 (鶉鳴く) 鳥類 山類 里は居所体 ここの宿は旅のやど
琵琶の音揺らぐひとときの秋
秋 ひとときの一は数字
雁がね寒き此のごろの空
秋(雁がね寒き) 鳥類(雁は2句物、春1、秋1) 空は天象
by 連歌楽歳 (2017-03-02 19:27)
訂正
訪(とぶら)ふ里の鶉鳴く宿
秋 (鶉鳴く) 鳥類 山類 里は居所体 ここの宿は旅のやど
「山類」を削除します。
by 連歌楽歳 (2017-03-02 22:37)
●2折表11付け
琵琶の音の途切るゝあはい萩の声 夢梯
琵琶の音に誘はれ仰ぐのちの月
仮寝する野に上りくる望の月
平曲のひヾき絶えだえ月の影
風つらくひれ伏す萩の艶にして(なるも)
琵琶を横取りしてしまってごめんなさい。鶉鳴く宿に琵琶の音を聴きたくなりました。
以上、夢梯さまから郵送の付けでした。
*
琵琶の音の途切るゝあはい荻の声 夢梯
秋 荻の声(荻は草類、荻の声には風の含意あり)
琵琶の音に誘はれ仰ぐのちの月
秋 月 光物 夜分
仮寝する野に上りくる望の月
秋 月 光物 夜分(仮寝も) 地儀
平曲のひヾき絶えだえ月の影
秋 月 光物 夜分 平曲(へいきょく)は字音(琵琶も音読みだが、「琵」も「琶」もともに訓読みで「びわ」。古典連歌に「琵琶」の使用例はあるが、「平曲(へいきょく)」は無し。平曲の1つ「敦盛最後」から「敦盛」を借りて、
敦盛の琵琶も絶えだえ月の影
風つらくひれ伏す萩の艶にして(なるも)
秋 萩は連歌では草類 風は吹物 艶は「つや」
by 連歌楽歳 (2017-03-08 22:21)
宗匠さま 皆さま
付句が遅くなりましたことお詫びいたします。お雛様を片付けられないまま三月も半ば、今日は、また冬に戻ったような冷えてこみになっております。お風邪などお引きになっていらっしゃいませんか。
夢梯さまの
琵琶の音に誘われ仰ぐ後の月
をいただきます。「琵琶の音の途切るる…」の句が「萩の声」になっておりますが、「荻の声」ですね。
付句
去年(こぞ)も今年もひとり住みにて
揺らす人なき柴の扉の揺れ
はつかな酒に酔ひのまわりて
老いてまだ待つこの宵だけは
相変わらずの拙い句ばかりですが、どうぞご指導いただきたくお願いいたします。
by 路花 (2017-03-14 12:54)
去年(こぞ)も今年もひとり住みにて 路花
春 「去年今年」は『毛吹草』の連歌四季の詞・初春に収録。ひとりは数字
揺らす人なき柴の扉の揺れ
雑 人倫 居所体 「柴の戸・柴の扉・柴の枢・柴の庵」似たようなものですが、「柴の扉」を「しばのと」と読む例が手持ちの辞書にはありませんでした。わかりやすく「柴の戸」でいかがでしょうか? 柴の戸は非植物・非述懐
はつかな酒に酔ひのまわりて
雑 酒は飲食物 「はつか」は「わづか」の誤用が定着、と辞書。「まわりて」は「まはりて」
老いてまだ待つこの宵だけは
雑 老いは二句物(只1、鳥木など1)述懐 宵は非時分(理由不明)
*
「萩」と「荻」の間違いのご指摘、ありがとうございました。夢梯さまの原稿を転記したさい誤記しました。後で気づいて直しましたが、コピー&ペーストの部分に直し忘れの個所が残ってしまいました。
by 連歌楽歳 (2017-03-14 18:51)
揺らす人なき柴の戸の揺れ 路花さま
ややしばらく考え込んでおりまして、遅くなりました。
路花さまの柴の戸を頂戴いたします。
付け
前つ世の縁も深き君とゐて 千草
うつし世にかなはぬ恋と知りながら
ことばにも聲にも見せじ忍ぶ恋
誘はるる水のおみなのうたてかり
よろしくお捌きくださいませ。
by お名前(必須) (2017-03-18 20:12)
前つ世の縁も深き君とゐて 千草
雑 恋 人倫 世は5句物(只1、浮世・世の中1、恋の世1、前世1、後世1、)
うつし世にかなはぬ恋と知りながら
雑 恋 「うつし世」は「現世」で、おそらく浮世・世の中のことでしょう。
ことばにも聲にも見せじ忍ぶ恋
雑 恋
誘はるる水のおみなのうたてかり
??? この句の御解説をおねがします ???
by 連歌楽歳 (2017-03-19 00:01)
誘わるる水のおみなのうたてかり
お悩ませもうしまして、恐れ入ります。
おおかたは水妖のようなものを言いとめたきことと
思われますが、なかなかのことに
これはお返しいただきまして
空耳もただ消え消えと秘する恋
白綾の袖翻す昔にて
あらたに。
by 千草 (2017-03-19 17:34)
空耳もただ消え消えと秘する恋
雑 恋
白綾の袖翻す昔にて
雑 述懐 衣類 述懐(昔は1句物)
by 連歌楽歳 (2017-03-19 19:31)
宗匠さま、みなさま
お彼岸の三連休は、うきうきの春でしたが、きょうは、また冷たい雨、冬にもどってしまいましたね。
千草さまの恋句につづけと思案しております。
古歌を眺めてみると、恋句は技巧の鬩ぎ合いのようでもあります。
おぼつかない、鳴きなれない鶯ではありますが、庭の小枝に春を
うたってみましょう。
どうぞ、よろしく、ご吟味、ご一直くださいませ。
千草さまの
うつし世にかなはぬ恋と知りながら
をいただき、案じてみました。
人目をしのぶ摺り衣にて 蘭舎
色うつろへどかはらじとのみ
涙に染まる袖を吹く風
まつほの浦に藻塩焼きつつ
なみだの川に架かる継ぎ橋
瀬のあだ波に袖を濡らしつ
by 蘭舎 (2017-03-21 11:05)
人目をしのぶ摺り衣にて 蘭舎
雑 恋 「陸奥のしのぶもぢすり誰ゆゑに乱れむと思ふ我ならなくに」(河原左大臣『古今集』)人目はこの場合世間の噂に近く、非人倫・非人体。 衣類
色うつろへどかはらじとのみ
雑 恋 「花の色は移り人目をしにけりないたづらにわが身よにふるながめせしまに」(小野小町『古今集』)
涙に染まる袖を吹く風
雑 恋(袖の涙) 「人めをもつつまぬものと思ひせば袖の涙のかからましやは」(実方朝臣『拾遺集』)衣類 風は吹物
まつほの浦に藻塩焼きつつ
雑 「こぬ人をまつほのうらの夕なぎにやくやもしほの身も焦れつつ」(定家『新勅撰和歌集』) 松帆の浦は歌枕・名所・水辺
なみだの川に架かる継ぎ橋
雑 恋 「こよひこそなみだの川にいりちどりなきてかへるときみはしらずや」(『大和物語』) 涙の川は非水辺と『連歌新式』に。このコンテクストでは「継ぎ橋」も同様。
瀬のあだ波に袖を濡らしつ
雑 恋 「そこひなき淵やはさわぐ山河のあさき瀬にこそあだ浪はたて」(素性法師『古今集』) 額面通り水辺体・用 衣類としておきます。
<補足>
白綾の袖翻す昔にて
雑 述懐 衣類 述懐(昔は1句物)
恋の句でもありました。「あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る」(額田王)の近親三角関係の歌の、本歌取りというか面影というか。「袖翻す」は「袖振る」(恋の始まり)? それとも「袖にする」(恋の終わり)? いずれにせよ恋の余韻が響きます。
また、
誘はるる水のおみなのうたてかり
「水のおみな」を「水妖」と、千草さまからご説明を頂きました。そういうことでしたか。
「おみな」は古語辞典によると、「媼」で「翁」の対。 「水のおみな」は、三途の川の奪衣婆の感じでしょうか。
「水のをみな」だと、古語辞典には、をみな=美女とあることから、ローレライやギリシア神話のセイレン、泰西昔話のオンディーヌ、本邦では竜宮城の乙姫などを連想させます。
2折裏へ移ります。
by 連歌楽歳 (2017-03-21 14:42)